5/8
SCENE04 1
次の日、私はいつもより早く起きて学校へ行く支度をした。
玄関でいつものように待ってくれていた裕に謝って、一緒に学校へ行った。裕は驚いたような顔をしていたけど、それでも嬉しそうに笑ってくれた。
私は普通じゃないけど、現時点ではまだ普通じゃないとは判断できない。見かけはまだみんなと一緒だから。まだ高校生だから。
それからの毎日はとても楽しくて、あんなにつらかった時期が嘘のようだった。
裕が私を学校へ戻してくれたおかげで、私は何とか卒業までこぎつけた。裕がいなかったら、私は高校を中退していたかもしれない。
人を分かれるのを避けるために人と関わることを避けた。私は死ねないから、誰よりも別れを経験することが多いはずだから。“死”と言う別れがつらいから、分かれないために関わらない。そんな考え方をしていた私を救ってくれたのも裕だった。
母を困らせ、先生たちを困らせ、しまいには朝比奈のポーカーフェイスまでゆがませた私をここまで立ち直らせてくれたのは裕のおかげだった。
私は、裕がいなければここまで来ることはできなかったのだ。