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SCENE01
あれは高校時代のことだった。
「あら菜月、とうとう身長止まったのね」
母の何気ない一言に殺気をも感じて。
「誰のせいだと」
冷たくあしらうと、母は必ず哀しげな顔をする。
「それじゃ、いってらっしゃい」
「うん」
母は気づいていないだろうけど、彼女の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
知ってる。
こうなったのは母のせいではない。母は正しい選択をしたのだ。抗ってはいけない国家権
力に従ったのだから、仕方ないのだ。
解っているのに、つい当たってしまう。人とは不思議なものだと他人事のように考えていた。