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39 モル=サルヴェイ
有り難く、石で舗装された地面へすっかり座り込んで休息を取っていた。退屈殺しに、モイズリーが闇の球を操る様を眺めている。屠殺本人も無聊に困るらしく、適当に動きへ変化が加わって目を楽しませてくれるのだ。蠟燭の周囲を漂う蛾の様にふらふら舞ったかと思えば、報復に燃える蜂の様に鋭く翔け、またその次には、杖先があまりにめぐるましくしかも周期的に動かされるがために、惑い、月の如くその場で静止したりする。実に、手慣れた所作だった。
そうぼんやりと、その優雅を眺めていたのだが、俄に様子がおかしくなった。モイズリーが、その優雅さをいきなり無くし、慌ただしく杖を振るい始めたのである。
「おい、大丈夫か、」
「ええ、多分。いえ、何だか、妙なのよね。この子、何だか何処かへ行きたがっているみたい。」
嫌な予感が、坐位によって曲がった背筋へ走る。
立ち上がりながら、私が、
「何処だ、何処へ行こうとしている? 何処に熱源が有る?」
「ええっと、 ……上?」
私は、駈け出し、モイズリーを追い越し、背の高い火薬庫の蔭から脱して振り返った。そして、戦慄することになる。
「おい、モイズリー! 見ろ!」
これに従って翻り、上空を見上げたモイズリーは、一瞬で表情を引き締め、火搔き棒のような杖の先端をこちらへ突きつけ、
「卿!」
これだけで万事承知した。その杖の切っ先へ残り少ない魔力を当て、冷却を始める。




