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25 モル=サルヴェイ
私が幼少の頃に初めて見た時からずっと、どこか洗煉された威容を見せて来ていた第四火薬庫が、晴天の下で不細工な化粧を施されつつある。赤い煉瓦を茶色い組木が疎らに蔽い、その上で、ここからだと全く小さく見える土木系の職人が蠢き、その化粧を深く、広くしていくのだ。間もなく、魔導系の職人も働き出すのだろうか。地面へ積み上げられた、魔導障壁の触媒材料となるざらついた青白い鉱物が、朝の日差しを浴びて発火しそうに見えるほど輝いている。
私は一応杖を握りつつ、しかし正直気を緩めていた。長閑だ。何処からか囀りすら聞こえる。こうして過ごしていると、コルチェフの言い出したこと、馬鹿げていたのではないかと思わざるを得ない。やはり、誰も知らなかったのではないか、この、第四火薬庫の改修作業のことなど、
――――!
突然の轟音に殴られ、身が揺らいだ。意識を痺れさせられ、まともに動くことが出来ない。苦労して音源と思しき方へ振り向くと、黒い煙が冲して爽やかな朝空を二分している。
私が喚く前に、工事上何かの役を仰せつかっていたらしい魔術師が飛んで来た。その血相はひたすら蒼白い。
「騎士様、何事でしょうか、」
「知らぬ、あれは何だ、どこから昇っている、」
「分かりません、あまりに突然なことで。」
それもそうだ。なんだ、何かの爆発か、
「騎士様、向かわれては、」
「いや、私はここを離れられん。誰か他の者が向かっていることに期待するしか、」
本日の遊撃を担っているのは、確か、結晶と貪食と屠殺と鏡花。うむ、あの方角の辺りに居る筈なのは、確か、
そこで考えは中止させられた。二度、そして三度目の爆発音が私の耳を劈いたのである。




