転校生
「さて、そろそろ行くか」
「うん、そうだね!」
早めに起きてゆっくり朝ご飯を食べ用意が済んだので学校へとむかう。
「じゃあ、行ってきます」
不思議なものだ、俺達2人しか住んでいないのに二人揃って必ず 行ってきます これだけは言っている。
別に決めている訳では無いのだが、ありがたみから来ることなのだろうか?こんな些細なことだがふと考えてみると面白いものだな。
◇◆◇◆◇◆
「おはよう」
学校の教室に付いた二人をクラスのみんは温かく迎えてくれる。そこに一人のクラスメイトはいつもの如くやって来る。
「おはよーおふたりさーん!相変わらず仲がいいねぇ、このこのぉ!」
牛尾 美紀、基本的に明るく...というよりはテンションが高く男女隔てなく話すクラスメイトでとてもフレンドリーな女子。高校入学した時も俺達の初めて話しかけてきたのは美紀だった。
「ち、違うよぉ。枢君とは幼馴染みなの、もー朝から美紀ちゃんってばぁ」
顔を赤くさせて照れながらそんな事を言うのも美紀のせい...いや、お陰で見ている気がする。
「おっ、相変わらずだな美紀。さすがテンションフルスロットル」
「あったり前よ。不肖美紀、いつでもどこでも楽しんでますから!!」
「頼むから空気は読んでくれよ」
「大丈夫だって、このテンションで乗り切ってみせるわ!」
あっ、ダメだこれ。
ーーーバンッ!!
「おはよーさんっ!!」
背中を平手で叩きながら来たのはクラスメイトの赤星 圭吾。よく二人で遊びに行ったりする仲で恐らくクラスで1番仲のいい男子。イケメンの部類でモテるのだが何でも許嫁がいるとか何とか...
ホントかどうかは謎で、読めないところが多い
「お前も相変わらずだな、圭吾」
「あぁ、一分一秒でもお前に会いたくてな!」
「気持ち悪いって、ホモかっての」
「はっはっはーさてさてどっちかなぁ」
笑いながらも冗談?を言う圭吾...ほんとに読めない。出来れば嘘であって欲しい、てか許嫁いるならうそだよね?...よね?
「さて、冗談はさておきとして」
あっ、冗談か良かった。
「転校生の話聞いたか?」
「転校生?初耳なんだけど」
「まぁ、何でも親の都合で唐突に決まってらしく昨日の間に手続きを終わらせて今日から編入だとさ。」
今は7月、まぁ、なんとも言えない時期に入ってきたもんだなぁ。にしても気になるのがひとつ。
「なぁ圭吾、手続きってそんな簡単に終わるものなのか?少なくとももう少しかかるとは思うんだが」
「あぁ、ほんとに不思議なんだよな。ただ周りを見てみろよ」
ー女子か、ヒャッハーー!
ー神様、女の子でありますように!!
ー俺は男がいいな、ウホッ♂
「みんなあの通り、血走ってそんなことどうでもいいみたいだ。ほんと相変わらず平和だ」
まて、何か変なの居たぞ、身の危険を感じる何かが!
ゴーン、ゴーン
屋上の鐘が鳴り響く。この学校特有の鐘の音だ。
ーガラガラ。
「ほら席につけ、ホームルーム始めるぞ」
そう言いつつ入ってきたのは桜井 雛先生である。長い髪に男勝りの口調(単に口が悪いだけかも知らないが)で、何より目立つのは左手の煙草。いつも煙草をふかしていて教育者としてどうなのかとよく思うが...
「だってよぉ雛ちゃん、転校生くんだろ?そりゃテンション上がるって」
「んぁ?もう耳に入ってんのか、まぁ気持ちは分からなくもないがな」
このフランクさである。雛ちゃんと呼ばれても受け入れ教育者として常識外れたとこや何だかんだで自分のクラスのことを心配する雛ちゃんは人気が高い。
「でも、そうとなりゃ話が早い。ほら、入ってこい!」
そう言われ教室の入口から入ってくる一人の少女。
その瞬間、あんだけうるさかったクラスは静まり返った。
「はじめまして、白坂 有栖と申します。どうかよろしくお願い致します」
白のロングヘアーに左の前髪に二つのヘアピン。スラリとした足に、なにより綺麗な子だった。
ーウォォォォォ!
男子も女子も一瞬でうるさくなった。多分静かなのは俺と蒼と圭吾ぐらいか。美紀は...うん、男子以上に騒いでるな。
「おい黙れ。コイツの席を決めっから静かにしてろ。」
「雛ちゃん、俺の横、俺の横がいい」
一人の男子が...いや、女子も自分の隣に座ってもらおうと必死みたいだ。
「お前ら、隣空いてねぇだろうが!!」
ごもっともである。
「よし宮瀬、お前の横にする」
「先生、まだ来てないけど加藤いるんすけど...」
「よし白坂、今日からあそこがお前の席だ」
えぇぇぇぇぇ...
話の流れから俺の隣に白坂が座ることとなった。
何だろう、周りの男子の目がすごく痛い...
「これからよろしくお願い致しますね、宮瀬さん」
「あ、あぁよろしくな。」
こうして転校生の白坂が隣に座ることとなり、周囲からは獲物を見るような目で見られるようになってしまった。そんな中、真後ろの席でずっと俺の背中をつねっていた。...痛いです。 そして圭吾は笑っていた。
「ったく、人事だと思いやがって。
それと蒼さん?痛いです」
蒼は無言でずっとつねっていた。
...俺、なにかしたっけ。