五日目
「とーまととまと♪とーまととまと♪」
今日も御機嫌ですね。何かいいことでもあったのか?
「ミードドミドド♪ミードドミドド♪」
…ああ、何故この男がこんな歌を歌っているかと言うと。
「とーまとやすい♪ミードドミドド♪」
買い物袋にトマトが入っているからだろう。
――――
「トマト買いすぎたかな?」
そりゃ…ワンパック3個入りを三パック買うのはなぁ。
「ま、いっか。とーまととまと♪きょーうはとまと♪」
凡庸性の高い歌だこと。でも、流石に1人でトマト三パックは多いだろ。
「まずは…生だな」
生?サラダか?いや、この横着者は…。
「いただきます。(はぐり)」
そのままマルカジリだー!
「おおう、汁が…。てか、トマト甘っ!砂糖かじったみたい…は言い過ぎだけど、くだものよりは甘いんじゃないか?これ?」
ちなみに「果物」と「野菜」のはっきりとした定義は決まってはいない。強いて言うなら、「果物」は木になっているものを指すらしいが。
「そう言えばこの前ネットで…」
ん、棚から…砂糖を取り出し、トマトに掛けた!?うまいのか、それ!?
「…意外といける?」
マジでか!?
「でも、トマト自体も甘いからケンカしちゃうな…。もっと酸味の強いやつならより合っただろうな」
果物に砂糖掛けたようなものか?そう言う意味なら確かに合うだろうが。
「ま、一番はマヨネーズだよね」
そう言いながら冷蔵庫からマヨネーズを取り出し始めた。この男はアレだな。マヨラーだな。
――――
「さて、料理しますか」
今、空耳が聞こえた。
「いでよ!三種の食材の一つ!たまご!」
たまご一つに大仰だな!それよりも本気で料理するの!?
さっきトマト(生)食べてたよね!?
横着者の称号を返還するつもりか!?
「トマトを四つに切って、フライパンに油を引きます」
しかも、解説し始めるだと!?風邪か!?病気か!?病院行け!?
「…何か知らんがイラッときた。料理ぐらいで大げさなってツッコミたい」
うっ、すまん。
「ま、いっか」
そう言いつつトマトを炒めて塩コショウをふり、
「たまご投入」
直接たまごをフライパンに入れた。別の皿に溶いてから入れようよ。
男はトマトとたまごを炒めて続け、
「トマトとたまご炒めの完成」
皿に盛り付けた。名前は安直だが。
「主食はパンの耳で」
まだ余ってるのかパンの耳。
「いただきます」
それにしても…トマトとたまご、ねぇ。合うの、それって?
「トマトは炒めたからか酸味がなくなってより甘くなり、たまごと上手く絡みあう!いや、たまごがトマトを優しく包み込む!しかも、炒め物なのにスルッと入ってしまうこのサッパリ感!何だこれ!うまっ!」
いきなり語りだすなよ!いや、いいんだけどさ…。あと、それって自画自賛じゃない?
「ハ〇テは凄いな。流石執事。トマトとたまごが合うことをいち早く教えてくれた俺の恩人。マジ、サイコー」
ああ、19巻に載ってたね、そんなネタ。お嬢様が朝早くに起きてしまった話だね。
「ハッ!もうなくなってしまった…。うう、ごちそうさまでした」
美味しかったようで何よりで。
「また、いつかつくるとしますか」
気に入ったのね、その炒め物。
でも、まだトマト二パック余ってるよ?