二日目
ショーケースに並ぶサンドイッチ達。
「……」
黙考。
「……」
黙考。
「……」
そのネタは前回やったが?
「メンチカツ」
ようやく決まったらしい。
「あとこれも」
と少し大きめな袋も差し出す。
「合わせて300円です」
――――
ホクホク顔で帰る男。ヤロウのホクホク顔など見てもつまらないのだが。
「焼きそばパン〜♪焼きそばパン〜♪」
男のテンションはマックスと言ってもいい。そのままのテンションでアパートに入って階段を登り、
「ただいま!」
誰もいないのに帰宅の言葉をかけた。男は靴を脱ぎ、店で買ったサンドイッチの入っている紙袋と大きめな袋を台所に置き、カバンを角へ投げ捨て、
「窓、開門!」ガララ
窓を全開にする。
少なくとも窓は開門ではないと思われるが。
そして、扇風機の前へと立ち、
「スイッチオン」
足で扇風機のスイッチを入れる。
行儀悪い!
「〜♪〜♪」
上機嫌な男は台所にもどり、大きめな袋を開ける。その中身はぎっしりと詰まったパンの耳である。
「焼きそばパンを〜♪いただきま〜す♪」
昨日、結局そのまま、ラップを掛けてそのままの状態で放置された焼きそばを、温めるようなこともせずに箸をつけ始めた。
ここで「焼きそばパン」と言うものを思い浮かべてほしい。おそらくは、細長いコッペパンの真ん中に切れ目があり、その切れ目の中に焼きそばが詰められ、はしっこに紅しょうがが彩りよく備えられてるものが思い浮かばれるだろう。
だが、この男の「焼きそばパン」は違うらしい。
「焼きそばー(あむあむむぐん)パンの耳ー(んむんむんむ)」
…それは「焼きそばをおかずにパンの耳を食ってるだけでは?」などとツッコンではいけない。なぜなら、
「へっへー♪パンにマヨネーズを乗っけてー♪焼きそばと一緒に食べーる♪うむ、うまし!」
とか、
「焼きそばのスパイシーな香り、麺特有の食感、そして、パンの甘さ。それらを包み込むマヨネーズの包容力!」
と、男は喜んでいるのだから。そっとしておいてあげよう。
――――
「今日は〜プラスして〜♪」
と、紙袋から「メンチカツサンド」を取り出した。二切れ250円なり。ちなみパンの耳はずっしり入って50円。
「いただきまーす」
一口、がぶり。
「メンチカツうまっ。味が濃くてパンによく馴染むー!」
サンドイッチにするためか、このメンチカツは冷えてても上手い。噛めば噛むほど旨みが口の中を駆け巡っていく。しかも、食感は落ち着きのある、しっかりとした肉!を感じられるし、衣も時間が経っているのに「サクッ」っという小気味よい。それでもってメンチカツ特有の柔らかさをもつにくいヤロウ――もとい、揚げ物なのである。
しかし、サンドイッチに挟まれているのはメンチカツだけではない。
「キャベツも千切りだからメンチカツとの相性がサイコー。」
これがただ、キャベツを敷いてるだけなら意味がない。千切りという細かな食感が、メンチカツとのしっかりと食感とシンクロするのだ。
…って、こいつ、ぺろりと一切れ食べ尽くしたな。かと思えば。
「も、もう一切れ…。うん、うまっ!」
よく入る腹だこと。
「揚げ物に千切りキャベツ付けた人って天才だよなー」
付けたのは銀座のとある洋食店です。
銀座の方へ向かって土下座なさい。
数十秒後。
「ごちそうさまでした。さてシャワーシャワー」
ヤロウのシャワーシーンなんか滅べってば。
「お腹痛い…」
原因は食べすぎ&一日放置して傷んだ焼きそばですね。