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獅子の頂を制する者達(3)

 この日、ヴァーミリオン・ベンズはいつもどおりの眠たげな目をして仕事をこなしていた。と言っても、レオカンパニーの保有する演習場の前に座っているだけなのだが。


「統括、中で仕事しなくて良いんですか?」

「ここ、受付ですけど?」

「ああ? 良いんだよ。細かい指示や作業はアジェ坊の仕事だ」

「アジェ坊って……アジェスタ補佐官のことですよね? あの人をそんな風に呼ぶのも、仕事押し付けられるのも統括だけですよ」


 呆れたような部下の視線に、ヘッと鼻で笑ってやる。

 最近ではその実力と有能さから、レオカンパニーはもとより、他エリアからも目をつけられ始めた男、アジェスタ。

 副社長であるジョシュアの護衛であり補佐官も勤めている。銃の使い手で、その戦闘能力はレオエリア警備軍統括であるヴァーミリオンも認めるものだ。

 何せ、この世界では最強武器と言われているレクイエム・ウェポンを、ただの銃でいなすのだから。


 彼の実力はずっと昔から知っている。アジェスタと会った、十三年も前のあの日から。今では、かつてに比べて予想以上に強くなりすぎたと言っても良い、レオエリアきっての猛者だ。


 だがヴァーミリオンにとっては、どれだけ強かろうがやはり〈アジェ坊〉なのだ。それは、アジェスタとの思い出が殺伐としたものではないから。

 今ではクールを通り越して、無感動、無表情なアジェスタ。しかし、小さかった頃は無表情でもまだ感情の起伏が多少見られた。

 騒がしい街並みに向けられた好奇心と驚愕の色。極一般的に売られているお菓子や玩具に触れた時の戸惑いと喜びの色。


 ともすれば見逃してしまいそうな、小さな反応を見てきたヴァーミリオンにとっては、アジェスタはやはりどこまで行っても〈アジェ坊〉という子供の部分が消えない。

 かと言って馬鹿にしているわけでもない。今では良い同僚であり、背中を任せられる数少ない信頼者でもあるのだから。


「あの! レオカンパニーの警備軍採用試験会場はこちらでしょうか!?」

「あ?」


 頬杖を付きながら思い出にふけっていたヴァーミリオンは、上から降ってきた威勢の良い声に顔を上げた。

 まだ十代であろう若者が、緊張した面持ちで見下ろしてきている。


「おお、受験生か。その通り、ここであってるぜ。名前と受験票出して中入んな」

「は、はい! ところであなたは高名なヴァーミリオン・ベンズ殿では?」

「高名かどうかは知らんが、そりゃ俺の名前だ」


 いつもと変わらず無気力に応えると、若者はキラキラと目を輝かせた。その様子に、ヴァーミリオンは小さく息をつく。


「やっぱり! 俺、いや、自分は貴方に憧れてここに来ました! よろしくお願いします」

「はいはい。光栄なこった。さっさと入って準備しな。頑張れよ若人」

「はい!!」


 適当にあしらっているヴァーミリオンに気づきもせず、青年は意気揚々と会場に入っていく。その背中は闘志に燃えていた。


「あのタイプが十八人目、と。お前らどう思う?」

「素直なのが良いところですよね。擦れてない分、さっきの奴よりはマシかと」

「でも注意力なさそうですよ。統括の態度に気づきませんでしたし。二次までが限界かな」


 後ろで受付をしているスーツ姿の青年。片方は警備軍でヴァーミリオンの部下、もう一人はレオカンパニー営業部の社員だ。

 しかし、そのどちらもの目に、先程の青年を品定めする戦闘者の色がある。


「社員受験なら合格だったろうになぁ」


 警備軍の青年が苦笑して若者の背中を見送っている。

 ここに来る受験生をもう数百人とヴァーミリオンは見ていた。そのおよそ半数が横柄な態度で、自分が一番だと勘違いしている奴。一割が先程の未来に熱血している奴。残りが、おそらく警備軍として採用される者だと検討をつけている。


「あ、ちょっと。社員を馬鹿にしないでください? 動けてても、営業成績上げないとダメなんですからね」


 営業部の社員が、少しムッとしたように眉を寄せた。

 レオカンパニーは、三年前から一般社員の採用試験にいくつかとんでもないものを混ぜている。

 筆記試験、面接、プレゼンテーション、ディスカッション、射撃試験、そしてサバイバル試験だ。後ろの二つが、三年前から加わった世にも奇妙な試験。

 射撃は十発中二発が的に当たることが必須。サバイバル試験は、三日間チームを組み、とある離島で生活することが内容だ。


 こんな突拍子もない試験を発案したのが、当時副社長に就任したばかりのジョシュア・シゼルディ。現在の警備軍最高責任者だ。

 曰く『レオカンパニーの守りや、才能ある者の身の安全を確保するため』らしく、その後、社員の射撃訓練や護身術教室は定例化している。

 今では警備軍でなくとも、レオカンパニーの社員のおよそ八割が銃を扱える状況だ。


 上流階級者の娯楽、当初はそう蔑まれていた。しかし、時を負うごとにこの突飛な考えが計算のもと行われていたのだと分かってくる。

 社員達は緊急時に銃の保持を許可され、ある種の緊張と選民意識が生まれてくる。


 会社に何かあった時は動かなければ、自分の身は自分で守らなければという緊張感。

 銃も扱え、仕事もできるという矜持。そして、その矜持から生まれる〈特殊なことをする会社に勤めている〉という選民意識だ。


 そんな中、ある日レオカンパニーは傘下の内部企業に襲われた。車が数台突っ込んできて、人質を取る。そして相手は要求を述べる。そういった流れの会社の危機。

 だがこの時、警備軍が到着する前におおよそ片はついていた。

 社員達が、自身で人質の救出と避難をやってのけたのだ。

 そんなことを経験して生まれるのは、会社全体における連帯感。


 もちろん、そういった中で驕り高ぶっていく者はあの副社長が笑って蹴落としていくのだけれど。


(誰か気づいてんのかね~。あの他企業の襲撃を煽ったのがうちの副社長だって)


 そう。全てはジョシュアという男の掌で動かされた、陳腐な芝居。

 結局、会社は今彼の目論見どおりに業績をあげ、各社員の能力値を大幅にスキルアップさせた。

 そしてその影で、この試験を発案したジョシュアの名が上がっている。


「坊ちゃんもそろそろ本格始動か……」


 〈アジェ坊〉と同じく、小さい頃からジョシュアを知っているヴァーミリオンは彼を〈坊ちゃん〉と呼ぶ。

 シゼルディ家には幾人もの息子がいるが、ヴァーミリオンが目をかけていたのはジョシュアだった。その彼が、ようやく長い昼寝から目を覚まそうとしている。

 自然と、唇がつりあがった。この時を待っていたのだ。


「なあ。おい、何かもの凄い土煙が上がってるぞ」

「つうか、こっちに向かってきてるよな?」


 後ろからいぶかしむような声が聞こえ、ヴァーミリオンは目を向けた。地平線の向こうから、小さな土煙がこちらへ向かってきている。


「何だありゃ? バッファローの大群か?」

「そんなわけないでしょう! えっと、スコープスコープ……」


 部下が律儀にツッコミを入れてから、高感度スコープを取り上げる。一度覗いたかと思うと、目を擦りなおして再度覗き込む部下。目が霞んでいるのか、何回も覗いては擦り、覗いては擦りを繰り返している。


「おい、どうした?」

「……バイクが」

「バイク?」


 ヴァーミリオンが目を向け直すと、土煙から小さくエンジン音のようなものが聞こえてきていた。それで納得がいく。


「ああ、バイクか。受験生の一人じゃねぇの?」

「はぁ……その受験生の姿が見当たらないんですが」

「あ?」


 何を言っているんだこいつは、と眉間に皺を寄せる。

 バイクが走ってきていて、向かっているのはここだ。ならばそのバイクを運転しているのは間違いなくここに目的のある人物と言うことになる。それなのに、見当たらないとはどういうことか。


「馬鹿かお前。バイクに乗って……」

「ないんですが」

「…………………」

「…………………」


 部下の生真面目な報告に、ヴァーミリオンと営業部の男は沈黙した。そして、もう一度目をこらして土煙を見る。

 いつの間にか、すぐ近くにまで迫ってきていた土煙。もう、バイクの形もハッキリと分かる。だが――


「いねぇなぁ……」


 そのハンドルを握っているべき、上に乗っているべき人影がない。だがバイクは走り続けている。

 数秒後、後ろの二人が叫び声を上げた。


「ちょ! マズイですよ! アレ真っ直ぐこっちに向かってますって!!」

「制限時速軽くオーバーしてませんか!? アレ絶対改良型ですって!」


 バイクの時速は規定を何倍もオーバーしており、改良された戦闘型だと推測できる。そこから想像できるのは、アレがどこかのエリアの武器だと言うこと。

 おそらく、大量のガソリンを積んでおり、この会場ごと吹き飛ばす気なのだ。


「ちっ」


 ヴァーミリオンは小さく舌打ちすると、腰に下げていた武器を抜いた。

 ガンブレードと呼ばれる、銃剣一体型の武器。

 レクイエム・ウェポン〈ケセド〉


「お前ら下がってろ。ケセド、被害を最小限に食い止める。引火しないよう狙いは……」

『少々待て、ヴァン』


 構えたガンブレードに重なるようにして、青い獅子の姿が現れる。雄々しいその姿は、どこか威厳と老齢さを感じさせる声でヴァーミリオンの言葉を遮った。


「あのなぁ、この中には坊ちゃんも来てるんだ。いくら護衛がアジェ坊でも、爆発に巻き込まれたら……」

『アレから人の気配がする』

「何だって?」


 ケセドの声にもう一度バイクを見るが、やはりヴァーミリオンには見えない。


「おい、ケセド」

『悪意は感じん。撃つな』

「いやいやいやいやっ!」


 きっぱり断言され、ガンブレードにロックがかかる。ヴァーミリオンが何かしたわけではない。聖獣であるケセド自身がロックをかけたのだ。

 その間にも、バイクはどんどんと迫ってくる。

 百メートル。八十、六十、五十……


「っ、俺が死んだら、お前ぜってぇ呪いに帰ってくるからな!!」

『戯け。やれるものならやってみぃ』


 三十、二十、十、五メートル――

 後ろにいた部下達は、叫び声を上げながら蹲る。

 緊張と恐怖の中、ヴァーミリオンの目がバイクを捕らえた。黒い、戦闘用に改造されたバイク。その黒の中に、ちらりと灰色が見える。

 そう思ったのも束の間、耳障りな急ブレーキの音と大量の土煙が辺りを覆いつくした。


「げっほっ、ごほっ! 何だぁ!?」

「げほっ……止まった」


 舞い上がる土煙を払い、咳き込む。辺り一帯の状況を把握しようとするヴァーミリオンの耳は、部下二人とは違う声を聞き取った。

 同じように咳き込みながら、どこかホッとしたように発された一言。


(おいおい、止まりそうになかったのかよ……)


 悪意がなくても大事故になるところだった、とケセドを睨む。しかし、彼は既に実体をなくしており、沈黙を守っていた。


「おい! そこのっ、危ないだろうが!」

「あ、すみません」


 ようやく晴れてきた土煙の向こうで、体を目いっぱい使ってバイクを立たせる姿を認めた。バイクに比べてかなりの小柄。あの大きさでは、運転はできても止まる時に足をつけない気がする。

 人影は、バイクを止めると土煙を払って姿を現した。その外見に、目を丸くする。


「ここ、レオカンパニーの警備軍採用試験会場、であってますか?」

「あ、ああ……」


 謝った時と同じ淡々とした口調。ヴァーミリオンの前に現れた人物は、銀に近い灰色の髪とアイスブルーの目と相まって、更に冷たい印象を与えてくる。

 小さな、おそらく身長で言えば百五十前後といったところだろう。整った容姿は、美形というよりは無機質な人形を髣髴とさせる。この小ささでは、大型バイクに乗っていても姿が見えづらいだろう。


「あ~……あのな。確かにここは会場だが…………お嬢ちゃんが来るとこじゃないと思うぞ~、おじさんは」

「…………ちっ、クソが」

「ん? 何か言ったか?」

「いえ、ですが自分はここに試験を受けに来いということだったんで来たんです」


 目をそらして何か言ったように聞こえたが、気を取り直したようにもう一度ヴァーミリオンを見てしっかりと告げてきた。

 灰色の髪と大きな目。白く華奢な体つきと良い、完全なる美少女だ。これで、服装がジーンズにパーカーではなく、ワンピースなら誰もが振り返っているはずである。


「それきっと手違いだわ。ここはお嬢ちゃんみたいな可愛い子が来る場所じゃねぇし」


 ピクリと、美少女の頬が引きつった。


「一応確認はするわ。んで、おじさんから上に言っとくよ。名前は?」

「…………レイ・アマトキです」

「レイちゃんか。可愛くて良い名前だな」


 今度はこめかみが引きつった。名前が嫌いなのだろうか。


「あの、自分は……」

「おい、たぶん何かの手違いで受験が受理されてる。アジェ坊呼んで来い」

「もう連絡済です。今こちらに向かってます!」


 部下の仕事は早く、既に携帯を持って連絡をしていたらしい。すぐにアジェスタが来るだろう。


「今、責任者が来るからな。ところでお嬢ちゃん、一人で来……」


 笑顔で振り返り、瞬間、辺りの空気が変わった。何を見るよりも早く、ヴァーミリオンは右へ飛ぶ。

 パシュッという微かな音と共に、一発の銃弾が空気を切り裂いていった。


「…………可愛い顔は、暗殺者としての仮面かな? お嬢ちゃん」


 サイレンサー付きの銃。それを、一部の隙もない構えで持つ美少女。アイスブルーの目には、底知れない怒りが見て取れた。

 他エリアの刺客。そう判断をつけてケセドを解放しようとしたその時――


「何をしている。ヴァン」


 静かな、目の前の美少女より遥かに抑揚のない声が背後から届いた。


「見てわかんねぇか、アジェ坊。他エリアの刺客らしき美少女と戦うとこだ」


 自分の後ろにいるのは、長身の男だった。一応ジョシュアからの命令なのか、ブランド物のスーツを着こなし、それでいて戦う者の鋭さをなくしていない姿。

 レオエリア強者の一人、アジェスタ。

 試験の責任者として中で細々とした作業をしていた彼は、ヴァーミリオンの視線の先を見て、少しだけ目をすがめた。


「そうか。俺には受験生を虐めている哀れな中年男にしか見えないが」

「誰が中年だ! ナイスミドルと言え! だいたいこいつが受験せ……受験生?」


 アジェスタの台詞を、鸚鵡返しのように呟いて振り返る。こちらを見ていた灰色の目が、例の美少女へと移った。


「レイ・アマトキだな。受付を済ませて会場に入れ。お前にも一応、筆記、基本戦闘能力試験を受けてもらう。その後、奏者適性検査を受け、翌日、配属試験をする」

「分かりました」


 淡々とした声と声のやり取り。それを呆然と聞いていたヴァーミリオンは、いつになく焦りの混じった声でアジェスタに近づいた。


「おいおい、アジェ坊! この嬢ちゃんがほんとに試験受けんのか? 受験生? これはレオエリア警備軍の採用試験だぞ!?」


 女性の隊員がいないわけではない。扱う武器によっては華奢な者もいる。だが、それでもおそらくまだ十二歳ぐらいのこんな少女が受けに来たことはないはずだ。

 先程の射撃能力から見て、実力はある。まだ本気も出していないだろう。しかし、どう考えても。この少女の容姿と警備軍が結びつかない。


 アジェスタは詰め寄るヴァーミリオンを見下ろした。昔とは違い今では彼の方が身長は上なのだ。

 彼はこちらを睨むレイを見、もう一度ヴァーミリオンを見下ろし、そしてどこか納得が言ったかのような口調で一言こう告げた。


「ヴァン、性別が逆だ」

「は?」


 それだけ言い置いて、アジェスタはさっさと会場内へ戻っていく。その後ろを、あの小柄な美少女――らしき人物がついて上がっていった。

 唖然としたまま見送るヴァーミリオンと部下二名。入り口に辿り着いたレイは、何を思ったかこちらを振り返り、三白眼で睨んでくる。


「自己紹介が遅れて申し訳ありません。オフィウクス島、私兵暗殺者養成学校ラス・アルハゲから来ました。レイ・アマトキ、十五歳。お・と・こ・です。どうぞよろしく」


 馬鹿丁寧な口調でしっかりと腰を折りつつ、しかし声音と表情はこれでもかというぐらい冷たかった。

 灰色の髪を翻して去って行く姿は、先程までの華奢な印象から大きく変わる。

 足音と気配を極力抑えた暗殺者のもの。しかも、意識してやっているのではなく、体に染み付いてしまっているようだ。


「男……あの顔で男…………」

「いや、っていうかさ。あの身長で十五って……」


 部下は、双方共に今見た映像が信じられないらしい。先程の〈バイク単独暴走事件〉よりインパクトは強かったようだ。

 ヴァーミリオンは、そんな部下を尻目に頬を掻く。


「あれが、坊ちゃんとアジェ坊が目をつけた奴か……」


 話には聞いていたのだ。ラス・アルハゲから一人、片腕となる人物を雇う、と。

 ジョシュアの片腕と言えばアジェスタだ。だから、ヴァーミリオンも自然とアジェスタのような人間を想像していた。

 まさか、あんな少女に見間違うような子供を候補にしているとは思いもよらない。


「動きは素早いな。銃の腕も……アジェ坊と比べるのは可哀想だがまあまあ」


 品定めをするかのように、ヴァーミリオンはレイと対峙した時の印象を述べていった。

 あの容姿だけでは分からない、レイという戦闘者の輪郭ができていく。


「筋力がまだ足りないな。力も弱そうだが、その分を補う技はあると見た。おそらくは、普通に戦ってもレオエリアじゃ上位に入る。が……」


 一瞬だけ見せた戦闘者としての目。そして、気にしていることを言われた時に見せた冷たくも分かりやすい顔。

 ヴァーミリオンはその両方を思い浮かべ、笑った。


「まだガキだな」


 冷静に対処しきれないのも、ヴァーミリオンを強者と知っても戦ってみようと思った無謀さも、まだまだ、レイが子供である証拠。


「さぁて、あの嬢ちゃんを手に入れて、うちの坊ちゃん達はどんな所業を見せてくれんのかね」


 それは、期待している以上のものでなければならない。そうでなければ、ヴァーミリオンが目をかけた意味がない。期待以上の結果が出なければ、この先あの若き獅子についていく楽しみがない。


「統括! そろそろ中で試験始まりますよ」

「あいよ」


 軽く手を挙げて答えながら、ヴァーミリオンはゆっくりと歩き出した。

 自分もまた、舞台に上がる準備をするために。


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