『紅い酒』1-3
顔に似合わず?この表現は訂正ね。だって、暗がりで顔がよく見えないんだもの。
「何しにここに?」
「キッ、キノコ採りに来たら、道に迷って。それで…」
変に緊張していた。
「で、ここまで来て、勝手に上がり込んだワケか」
こくこくと頷く。
男は無言で、私の目の前にやって来た。
な、何?何なの?
またこれがちょうどよく、雷鳴がとどろいて、ピシャッと屋敷の中が光る。で、ついでによく見えなかった男の顔も映し出される。
鋭い目付きがオオカミみたいで、威圧感をおぼえさせる。でも、鼻筋は通ってるし、顔は整っていてまあまあ。
そんな事をぽけ〜っと考えていると、男はぬっと手を伸ばしてきた。
ビクッと体を揺らして、思わず目をつむった。
男は私の頭をぽんぽんと二回軽く叩くと、
「飯食ってくか?」と、尋ねてきた。
な、何、意外に優しいじゃないの。でも…
「子供扱いしないでよ!」
男の手を振り払い、頬を膨らませた。
「いくつなんだよ」
「こう見えて、21!」
「あっははは…お前、21なんだ」
男はムカつく程大ウケしている。
一辺、首絞めたろかゴラァッ!!
「16かそれ以下かと思ったぜ」
処刑決定!!
私が指の関節をボキボキと鳴らしていると、男は思い出したように、
「飯食ってくんなら、作んなきゃな」と言って、その場から離れた。
「逃げるんかい!待てやっ!!」
男の後を追い掛けると、大きな掌が、私の顔面をわしづかみにした。