『紅い酒』1-2
「すみませーん!!」
できる限りの力を振り絞って叫んだ。
返事はなく、辺りは不気味なくらいしーんと静まりかえっていた。
「入っちゃおっと」
こんな時、ずうずうしい自分の性格が助けてくれる。
中に入ると、変な臭いが鼻をついた。
「臭っ」
ホコリ臭さと生ごみが合わさったような臭い。
サイアク。
だけど、今はそんな事気にしたってしょうがない。
赤い絨毯をずんずか進む。
臭いになんとか慣れてきた頃、思ったより広いんだなあって辺りを見回していた。
ゴーン、ゴーン
「うひゃあっ!!」
静寂だった中に、突然鳴るものだからビックリしちゃったわよ!
側には、私の身長よりある振り子時計が、6時を告げていた。
もう、夕食の時間だ。お腹空いたなぁ。
お腹を摩っていると、自分の持っているカゴに気付いた。その中には、キノコ。生のままってのは気が引けるけど、この際仕方ない。
「いただきまーす」
「待て!」
口を大きく開けて、キノコをほうり込もうとした時、邪魔が入った。
何よって睨むと、そこにはさっき森の中で会った男。
「いひゃぁあっ!!」
「お前、面白過ぎ」
叫ばずにはいられないって。…ん?面白いってどういう意味よ。
「それ、毒キノコだぞ」
「だから?」
毒キノコが何?今から私は食べようと…
「死にたいんなら別に構わないけど」
何で死ぬのよ。だってこれは……毒…キノコ?
「いひゃぁあっ!!」
私は慌てて、毒キノコを投げ捨てた。
「やっぱし面白いな」
男は顔に似合わず、ニカァって笑った。