『だーれだ』1-4
俺はしゃがみ込み、美代ちゃんを抱きしめた。
「みーつけた」と、俺は呟いた。
「おい!夏紀!!」
和喜は青ざめた顔で、俺を呼ぶ。
地面からは、何本もの白い手が出てきて、俺を引きずり込もうとしていた。
「俺…美代ちゃん、独りにさせちゃったから…」
…ごめん。もう、独りにさせたくないから。
「何か知らないけど、ダメだって!!」
和喜は、俺の腕を掴んで引っ張る。
「うっわあ」
手は、邪魔する和喜も引きずり込もうした。
「夏紀くん!和喜くん!」
沙織ちゃんが和喜が掴んでいる反対の腕を掴んできた。
何で?何でこんな事するんだ?
「もうっ!!」
膝が笑っているくせに、沙織ちゃんの友達も俺を引っ張った。
「ヤダよ…離してよ」
子供みたいに、反抗した。
「ダメだって!俺、お前いなくなんの嫌だぞ!!」
「私だって!!」
「わ、私も!!」
何言っちゃってんの?そんな事言ったらさぁ…。
「なっちゃん、泣いてるの?」
今まで黙ってた美代ちゃんが口を開いた。
「美代ちゃん…ごめん…ごめん…」
俺は、肩を震わせていた。
「なっちゃんは、泣き虫だね」
美代ちゃんは、俺の頭を撫でた。
「名前…当てられたから」
実は、この心霊スポットというのは、女の子が現れて、「だーれだ」と名前を尋ねると言ったもの。
答えられなければ、あの世に連れてかれてしまう。
俺は、答えられた。だから、美代ちゃんは俺を連れていかなかった。
いや、そうじゃないのかも…
終