『紅い酒』1-4
「客は、静かに席で待ってな。これ、礼儀」
男の眼光が光ってて、本能的に従わないとやばいって思った。で…
「しょ、食卓は何処でございましょうか?」と、態度をコロッと変えた。
長生きするためには、自分より強い者には逆らうな。
これ、鉄則よ。
「すぐそこの3つ目のドアだ」
「はい!お待ちしておりますでございます」
背筋を伸ばして、敬礼した。
「お前、面白過ぎだって」
何度それ言やぁ気がすむのよ。こっちは随分と真面目なんですけど。
男は急に足を止め、くるりと振り返った。
「部屋から出るなよ」
一言告げ、何処かへ行ってしまった。
私は男の後ろ姿を見送った後、男が言った3目のドアの部屋に入った。
「うわっ!すごっ!!」
長い長いテーブル。
こんなのあいつ一人でどうすんのよ。宝の持ち腐れてこういうやつ?それとも、金持ちの贅沢ってやつかな?どちらにしろ、淋しい奴には変わりないけどね。
椅子に腰かけて、辺りを見回した。
壁には、鹿やら熊やらの首だけの剥製が飾られている。
私って、こういう趣味わかんないのよね。こんなもの飾ってどうすんのかしら。
しばらく、テーブルの上に置かれた何本もの燭台のロウソクの炎を見つめていた。
なかなか男はやって来なかった。
何やってんのよ?!いつまで客人またせる気!?
私は痺れを切らし、男が言った事を忘れ、部屋から出た。そして、男を捜しに行った。
長い長い長い廊下。
この世の果てまであるんじゃないの!?
お腹の空いた私は、憤怒中。
「ん?」