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色彩の理由
「この部屋、黒い家具が多いね。」
彼女の言葉を聞き、僕は黒いソファに座って、二本目の煙草に火を点けた。
少し部屋を見回した後、答える。
黒、が好きなんだ。
いつも夜になると世界を染める、黒。
夜ってのは、静かだろ?
僕はきっとそれを思い出して、心が落ち着くのさ。
「あと、青いのも。」
青い枕を抱えて、彼女は眠そうだった。
・・・そのまま、こてんと倒れる。
僕はゆっくりと煙草をふかし、続けた。
そう、それから青も。
空と海。
これ以上ない、自然の色だろう?
僕は自然を想像すると、リラックスできるんだ。
「ふ~ん。でも緑だって、自然って感じがするし、落ち着くよ。」
横になった彼女は、外の桜を見てそう言った後、両目を閉じた。
あと一分もしたら、静かな寝息が聞こえてくるだろう。
僕は煙草を消し、音楽をかける。
そして、「そうだね。」と言って、軽く笑った。