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短編集  作者: 安楽樹
【どこにでもある恋の話】
23/42

【vol.1】4.別れられない僕の別れ

6/3 別れられない僕の別れ


恋に捕まった僕は、結局彼女と別れられない。

彼女から彼氏の不満を聞かされる度に、微かな期待をしてしまう。

もうすぐ遠くへ行く僕に向かって、「いつ帰って来るの?」と聞かれる度に、微かに期待をしてしまう。

だから僕も、冗談交じりに「彼氏がいなければ、一緒に来てよって言ったんだけどなぁ。」と言った。

だけど彼女は、冗談としてしか受け取ってくれない。


そしてとうとう、僕の旅立ちの日。


彼女は、泣いてしまうから会いたくない、と言った。

僕は、「最後のわがままだから。」そう言って彼女に会ってもらう。

そして、片付いた部屋の片隅から出てきた、シンプルなオルゴールを彼女にあげた。

『time will tell.』


それから、ふと思い出した気持ちを伝えた。


「手紙をくれたよね。

会って間もない頃のこと。

僕が貸した傘を返してくれた時。

なかなか会えなかったせいで、傘と一緒に手紙があった。その手紙に、お礼と一緒に書かれていた何気ないメッセージ。

それが、僕にはすごく嬉しかったんだよ?」


前と同じようにずっと見送ってくれる彼女を背に、僕は大きい荷物を背負って歩き出した。

次に彼女に会うのはいつになるか分からないけど、この分じゃ、そう遠くないかもな。

見慣れたはずの街の景色も、何だか初めて見るように、掛け替えの無い物のように思えた。

……明日の自分は、とても想像できなかった。


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