【vol.1】2.小さなつむじ風は突然に
5/22 小さなつむじ風は突然に
いつもそれは突然に。
「ごめん、いつも私の都合に合わせるのって、すごく自分勝手だよね。」
それっきり、手紙は来なくなった。
ようやく僕も、この一方的なルールを楽しみ始めた所だったのに。
違うんだ。別に僕は、僕を想って欲しかったんじゃない。
少し弱めのつむじ風は、いつの間にか現れて、瞬きをする間に去っていった。
僕は簡単に舞い上げられて、すぐに真っ逆さまに落とされてしまう。
その風が来る前と後では、何も変わっていないように思えた。
でも僕は、何だか大事なものが風にさらわれたような気がして、辺りを探す。
必死で探したけど、結局どこにも何も見つからない。
きっとそれを見つけていたら、僕は涙なんて流したのかも。
彼女に別れの手紙を出そう。
このままじゃ、あまりに僕の気持ちは中途半端だから。
『多分これが最後の手紙になると思う。
僕はただ、時々あなたの話が聴けるだけで良かったのに。
あなたにとって、僕は簡単に連絡を絶つ事ができる。
その程度の存在だったことが、少し悲しかったよ。
きっともう会わないだろうけど、ずっと幸せでいてね。
あなたに会えて良かったよ。……さよなら。』
この小さな心の痛みは、恋なんて呼べるものではなかったけど。
僕の忘れていた感情を思い出させてくれた。
まだ僕にもこんなに強くて熱い感情があって。
切なさと思い出を少しだけ残して。
ほんの少し、記憶に残って。
そしていつか、僕の心の一部になっていく。