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短編集  作者: 安楽樹
【短編集】
16/42

七夕

遠距離恋愛の二人。

年に一度の七夕の日。

随分と久し振りに二人は会う約束をした。


「久し振りに、会えるね。」

「うん、ようやく。」

「遅れたりしないでよ?」

「はは、気をつけるよ。それよりも、当日は七夕だろ?」


短冊に願いを書いておけという彼。

彼女は彼に早く会うことができますように、と書く。


「あ・え・ま・す・よ・う・に、と。」

「これで大丈夫よね。なんたって、織姫と彦星の年に一度の逢瀬の日なんだから。」

「笹はないけど、・・・まぁ仕方ないか。」


七夕当日。

空は生憎の大雨。


ザーッ・・・

『・・・新幹線は、現在全面運行を見合わせており・・・』

「うそっ!何で今日に限ってなの!?」


新幹線が動かないと、彼はこちらに来れない。

彼女はがっかりしながら彼に電話をかけるが、何度かけても彼は出なかった。

一応約束の時間に駅で待ってみるが、やはり彼は来ない。

それでも、ずぶ濡れで待ちつづける彼女。


「何で電話にも出ないの?・・・もう最低・・・。」

「・・・ぐすっ・・・。」

「織姫と彦星も、雨だからきっと会えないんだね・・・。」

『RRRRRR・・・』


彼女が、どうでもいいやと言う気分になってきた所へ、電話がかかってきた。

表示されるのは、彼の名前。

(今更かかってきても、もう遅いよ・・・。)

そう思いながらも、彼女は電話に出た。


「・・・もしもし、竹彦?」

「お前今どこにいるんだ?」

「え、駅だけど・・・。今日・・・駄目だったね・・・。」

「何言ってんだ早く戻ってこいよ。家に入れないだろ?」

「・・・え?」


それだけ言うと電話は切れてしまった。

彼女は半信半疑ながらも走って家に戻る。

そして、もう真っ暗な自宅の前に目を凝らすと、ドアの前には、彼女と同じくずぶ濡れの彼がいた。


「何で!?どうやって来たの!?」

「・・・何だよ、来たらいけなかったか?」

「そうじゃなくて!何で!?」

「はは、うそうそ。実はお前を驚かそうと思ってさ。昨日のうちに着いて、今日はコレ取りに行ってたんだ。


・・・そう言って彼が指差した先には、背の高さほどの笹があった。


「せっかく七夕だったからさ。」

「・・・・・・。電話ぐらい出てよね?」

「あ~、多分圏外だったから。電波届かなかったんだと思う。」

「全く、何やってるのよ・・・。心配するでしょ、・・・バカ。」


夜には雨も上がり、綺麗な星空が広がった。

二人は並んで空を見上げている。


「今日晴れてなかったからさ、七夕の二人と同じように、会えなくなっちゃったかと思った。」

「・・・ふ~ん。」

「何その気のない返事~。すごく悲しかったんだからねっ。」

「・・・だってさぁ、知らないの?・・・織姫と彦星は、地面から見られるのが恥ずかしいから、雲に隠れて会うんだよ?」


へぇ~。

・・・そうなんだ、知らなかった。

私はそう言うと、カーテンを閉める。

「あれ、せっかく星が綺麗なのに。」

彼が言う。

確かにそうだけどさ。

だってね。

私たちも、空から二人に見られたら恥ずかしいでしょ?



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