2002年の始まり
人生に歯車ってのはあるもんだと思う。
ちょっとしたズレがその後の関係を離していってしまう……、そんな歯車が。
それは空間であるかもしれない。
時間であるかもしれない。
そして感情なのかもしれない。
そんなわけで一人で初詣に行くのだった。
既に時間は零時を回っていた。
冬服を着込み、マフラーをし、手袋をし、ニット帽をかぶる。
この冬初めてここまで防寒をしたと思う。
歩き出す。
目的地は裏の山を越えたところにある神社だ。
坂を登る。
辺りには誰もいない。
住宅地を歩いていくと、犬が新年を祝って鳴いていた。
遠くでは、救急車が新年を祝って鳴いていた。
山を登る。
階段があるのでつらくはない。
街灯が間隔を空けて立っていた。
光を目指して進む。
息が白いのが分かった。
光に照らされると、今度は目の前が闇に閉ざされる。
闇を目指して進んだ。
……人生の真理に気付いた気がした。
山を登りきり振り返ると、鬱蒼としていた森の樹が切り倒されて夜景が広がっていた。
樹が無くなってみると、すぐ近くに住宅の森が広がっていた。
薙ぎ倒された樹の向こうに、色とりどりの明かりが灯った夜景が見える。
……世界の未来が見えた気がした。
山を越えると公園に出た。
広々とした公園にはやはり誰もいない。
近くの家のイルミネーションが鮮やかだった。
音が消えた。
光だけが煌めいていた。
世界にただ一人だけいた。
音が消えた。
音は時間の流れを意識させる。
時が止まった不思議な感覚に囚われる。
だから一人で歩くのは好きだ。
しばらく進むと、ようやく動いている人間に会った。
神社には多くの人が集まって、新年の誕生を祝っていた。
……僕は一人、2001年の墓参りをした。