第二章:元悪役令嬢の叔母襲来
アリシアとシアンの幸せな日常生活の前に現れる謎の来客者。
いったい誰なのか!?
広大な敷地内の唯一、外界とつながる門にたどり着き、
様子を伺う二人。
「ねえ、あれって……」
「小さいときに一度だけ会った叔母さんじゃない?」
意外な人物の来客に嬉しさと、
驚きを隠せないアリシア。
「そうですね……」
「もう二十年前ですから……」
「老けていていまいちわかりませんが……」
興味が無さそうに言うシアン。
「もうシアン!」
「失礼よ!」
頬を膨らませて怒るアリシア。
「申し訳ありません……」
「ベアトリス叔母さん!」
昨日の出来事が嘘だったかのように、
明るく振る舞うアリシア。
「今、門を開けるわ!」
無防備に開け放ってしまうアリシア。
「アリシア様……」
「危険ですよ……」
シアンは呆れ果てた顔をする。
「久しぶりね」
「アリシア」
「本当に大きくなったわね」
ベアトリスは年を取っても、
令嬢としての品格を保っていた。
優雅に敷地内に入ってくる。
「あなた生きていたんですか?」
「帝国へ追放されたと聞きましたが……」
興味が無さそうに聞くシアン。
「ええ、この通り健在よ」
「相変わらずの無愛想ぶりね」
「シアン」
ベアトリスは皮肉る。
「はぁ」
「もはやどうでもいいです……」
「いったい何の用できたのですか?」
早く帰れババア……
アリシア様とのイチャラブ生活の邪魔だ……
シアンは内心機嫌が悪くなっている。
「実は何日か泊めてくださらない?」
ベアトリスは悪気がなさそうな顔で言う。
「は?」
「消しますよ?」
堪忍袋の緒が切れてしまうシアン。
国をも消し飛ばせる必殺技の準備をするが……
「シアン!ダメよ!」
アリシアはシアンを、
抱きしめて強引に止める。
「ちっ……」
「運の良いババアめ……」
心の声が漏れているシアン。
「王国に少し用事があってね」
「でも追放された身で……」
「首都に行くには怖いから……」
少しだけ怯える素振りをするベアトリス。
「いいわよ!」
「ベアトリス叔母さん!」
「好きなだけ泊まって行ってね」
「久しぶりに再会できたんだし!」
嬉しそうにベアトリスに、
抱きつくアリシア。
「ありがとう」
「アリシアは優しいわね」
「兄さんに似たのかしら」
複雑な気持ちで、
抱きしめ返すベアトリス。
「とりあえず屋敷に入って!」
「ベアトリス叔母さん!」
「アリシア様……」
ベアトリスから離れたアリシアは、
屋敷の扉を開けてしまう。
「いいの!」
「悪い人じゃないし……」
「長旅で疲れているでしょ?」
「お茶でも飲む?」
「ええ、助かるわ」
「ばあさん送り返してやろうか?」
怒り狂い転移魔法を、
準備し始めるシアン。
「シアン?」
「はい……」
「毒入り紅茶をご用意いたします」
「もう意地悪なんだから」
「そんなじゃモテないわよ」
「モテなくて構いません」
「アリシア様がいれば……」
「そういうことばっかり言うんだから……」
「二人はいつもこんな感じなの?」
「そうよ!」
「部屋は書斎以外は好きに使ってちょうだい」
「もう二人しかいないから……」
「そうだったのね……」
「ベアトリス様は馬小屋でよろしいですか?」
「あ、それとも屋根裏部屋?」
シアンはわざとらしく聞く。
「シアン……」
「ちゃんとおもてなしが……」
「できたらキスしてあげるわ」
ご褒美で上手く釣るアリシア。
「かしこまりました」
「さあ、ベアトリス様」
「来客用の客室はこちらです」
「ええ……」
「ありがとう」
「叔母さんが殺されないように」
「私も着いていくわ!」
「助かるわ」
寿命が縮まったわ……
アリシアがいなかったら、
どうなっていたのか……
想像したくない。
「お部屋はこちらになります」
「ダブルベッドだけど大丈夫よね?」
「構わないわ」
「こんな綺麗な部屋で、」
「寝るのは久しぶりよ」
「良かった」
「じゃあお茶にしましょう!」
「女子会よ!」
「私もう五十近いから……」
年齢を気にして落ち込むベアトリス。
「じゃあ帰れババア」
シアンは冷たく言い放つ。
「シアン……」
「お願いよ!」
「美味しい紅茶を入れてきてくれる?」
アリシアはシアンの左耳に、
急接近する。
「今晩一緒に寝ていいわよ?」
ベアトリスに聞こえないように、
小声でささやく……
「かしこまりました……」
紅茶を入れに部屋を出て行くシアン。
少しだけその顔は満足そうだ。
「やっと落ち着いて話せるわね」
「ベアトリス叔母さん」
「そうね……」
「ねえ……」
「シアンとは恋人なの?」
微笑みながら聞いてくるベアトリス。
「え!?」
「ち、違うわよ!」
「ただの主と執事の関係です!」
大慌てで否定するアリシア。
「そんなことより!」
「叔母さん!」
「どうして家にきたのか、」
「二十年間何してたのか気になるわ!」
「あまり明るい話ではないけど……」
「いいかしら?」
ベアトリスは微妙な顔をして告げる。
「平気よ」
「話してくれる?」
アリシアは知りたくて仕方が無い。
「わかったわ」
そうしてベアトリスは悪役令嬢としての過去を話し始める……
彼女にいったい何があったのか……
次回はベアトリスの過去が描かれます。
楽しみに待っていてください。
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