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1月 誰がために


「私、一度もそんな話も約束してないし、つもりもなかったんだけど」


 取り付く島もないというのはこういうことだろう。さっきの期待感に満ちた表情は消え去って、声は淡々としているが、トーンは拒絶の意志に満ちている。


「いやいや、騎士と、精霊術士の首席同士、当然だろ」


 つばを飛ばす勢いで力説する横山。

 候補生の伝統としてよほどのことがない限り、首席同士でユニットが成立するというのは聞いたことがある。俺には縁がないと思っていたのでそんな話は聞き流していたのだが。

 自信家の横山は三澤さんが拒否するとか夢にも思ってなかったんだろうな。よほどのことがあってしまったわけだが。


「そんなの関係ありません。私にだって選ぶ権利あるわよ。ユニットは双方の合意があって初めて成立するのよ」


「俺に恥かかせるのかよ」


「横山君が恥をかこうが、かくまいが、私には関係ありません」


「関係あるよ。俺のパートナーは三澤なんだから」


 すげー自信だな。

 感心してたらマリノが「あの自信の一割でも見習いなさい」と耳打ちしてきた。

 根がヘタレの俺にはとても真似できない。どこからあの自己肯定感が生まれてくるんだろう。


「改めてはっきり言っておきますが、私は横山君とユニットを組むつもりはありません」


 ここまで言われて、横山はまだ食い下がるんだろうか。

 他人ごとなので面白半分に聞きながしてクラッカーに手を出していたら、目の釣り上がった横山とばっちり目が合ってしまった。


「そうか、またこいつか。このブービー野郎に誑かされてるんだな」


 ハルカさんのこと狼女とか言ってたけど、手当たり次第に噛みつくこいつのほうがよっぽど狂犬っぽいじゃないか。


「知らねーよ。しょんべん小僧」


 横山の顔が一瞬で真っ赤になった。

 あの一件はコイツにとっては記憶から抹消したい黒歴史だろう。周りは何のことだみたいな表情になっている。


「こいつぶちのめして、三澤の目を醒まさせてやるよ。ブービー野郎。いつもいつも、おお・・・女の陰でこそこそしやがって。ぶちのめしてやる!」


 一瞬横山があたりを見渡したのに誰か気づいただろうか。おそらくハルカさんの所在を確認していたのだろう。さすがに懲りたと見える。


「どうぞ御勝手に」


「ちょ、三澤さん!?」


 え?ちょっとまって。

 そこは「内藤君は関係ないでしょ、巻き込まないで」じゃないの?三澤さん?


「よーし、三澤をかけて勝負だ!ブービー野郎。俺と決闘しろ!!」


「決闘!?」


「決闘だってよ!」


「決闘だ!決闘だ!」


 とたんにロビー全体がざわめき始める。

 横山があれだけヒートアップして大声を出していたのだから当然か。周りはみんな聞き耳立てていたのだろう。


「ミズホ、がんばれー」


 マリノは満面の笑みを浮かべている。

 今時決闘ってどうなの?


「はいはい、静かに、静かに!!」


 騒ぎ声がおさまらないロビーを笛を吹いて憲兵が駆けつけてくる。

 ドラフト前のお見合い会ではトラブルが起きやすいから憲兵が常駐しているとは聞いていたが、まさか自分がお世話になるとは思わなかった

 やれやれ、これで収まるか。


「精霊術士候補生横山と同じく内藤の両名が三澤騎士候補生とのユニット権をかけて決闘します。承認をお願いします」


 憲兵にそう話しているのはいつの間に来ていた豚教官だ。


「二人とも精霊術士候補生か。よろしい。承認する」


 え!?

 憲兵って争いごとを止めてくれるんじゃないの?


「あれ、ミズホしらないの?ドラフトの時はどうしてもパートナーを巡ってもめることがあるから、当事者の同意と憲兵の承認があれば決闘が成立するんだよ?」


 そんな話知らねーよ。しかもいつの間にか同意したことになってるし。

 そういえば、ドラフトの資料はD判定の候補生の扱いに関する部分ばっかり読んで他は関係ないと思って流してたっけ。

 今更、無しにしてくださいとも言えないほどに周りも盛り上がっている。

 ドラフトでの決闘は風物詩でもあり、兵士たちの娯楽でもあるらしい。


「女を巡って戦う二人の男!かっこいいねぇ」


「マリノ、勘弁してくれ。三澤さん、負けてもしらないよ?」


 はっきり言って気乗りがしない。どうして俺がという気分だ。


「大丈夫、絶対内藤君が勝つから」


 三澤さんのその自信はどこから来るんだ?そして、やるのは俺なんだから。わざわざ俺の手を握って信じてるとか、火に油を注がないでくれ。


「っざけんな、ボコボコにしてやる!!」


 横山の奴、完全にキレてやがる。




 そのまま、俺たちは観客と化した候補生や正規兵たちとともに訓練場に場所を移す。

 立ち合いは憲兵がしてくれるらしい。


「三分で勝負がつけば赤有利!」


 にらみ合う俺と横山をよそに珍しい精霊柄同士の決闘に盛り上がる観客の間ではいつの間にか賭けまで始まっている。

 騎士同士の決闘は防具を付けた上で木刀や葉を潰した剣でやるから安全が確保できるが、精霊術は本気でやれば大けがをしてしまい、威力を手加減したら勝負がつかない。精霊術士の決闘は勝敗がつけにくいのであまり行われないそうだ。賭けているものが大きいので、さすがに訓練時のように水球をぶつけ合って勝敗を付けるようなことはしない。危険だからと訓練の時のようなカカシ撃ちだったら俺の負けは確定だ


「ミズホ。オッズは一対九で、横山が圧倒的に有利だってさ」


 何やら嬉しそうに札を握りしめているマリノが教えてくれる。

 そりゃダントツの首席様と万年ブービーだ。賭けが成立しているだけでもたいしたもんだ。

 

「ルールは殺傷能力のある精霊術を使わないこと。降参を宣言もしくは、戦闘不能と判断された場合は負けとする。本決闘においては対戦相手の死亡以外は全て免責となる。勝者は三澤候補生をユニットパートナーとする権利を得るものとする! 横山候補生、内藤候補生、前へ!」


 憲兵が高らかに宣言すると周りの興奮が一層高まり、俺と横山の名前を叫んでいる。

 横山は自信満々に右手を突き上げてぐるぐる回しながら、「ブービー野郎を跪かせるぜ!」とか観客をあおっている。あいにく俺は気の利いたパフォーマンスができる性格ではないので、俺を応援する声は少ない。

 臨時闘技場と化したグラウンドでご丁寧に皮鎧に楯まで装備した横山と五〇メートルほどの距離を置いて向かい合う。しかも皮鎧は皮鎧でも俺たちが普段支給されている候補生用のものではなく、どこから調達したのかは知らないが数段作りがいい正規軍用のものだ。楯と併用で防御すれば、俺の微火力の精霊術では貫通できないと考えてのことだろう。確かにあの皮鎧だと真正面からダメージを与えられるかどうかは微妙だ。俺は防具を取りに行く暇もなかったので制服のままだ。


「はじめ!」


 憲兵の合図とともに横山が精霊術の詠唱に入る。


「はっ!」


 横山の詠唱が終わる前に気合とともに立て続けに二つの握りこぶし大の岩弾をはなつ。やはり詠唱速度は俺の方が圧倒的に上だ。


「ぐぁっ!!」


 二つとも大きく弧を描き、狙いたがわず鎧に覆われた横山の左右の膝の側面に命中した。いかな鎧でも関節部の横面は薄いし、1キロ近くある石が高速で両ひざの外側から同時に当たればただではすまない。

 俺の意図通り、岩弾がぶつかった横山の両膝は内側へ向かってありえない角度に曲がり、横山はうめき声を上げながらその場にくずれこむ。とうぜん、横山の詠唱も中断してしまう。


「まだまだ!」


 膝を砕いただけなのでまだ意識はあるだろうし、降参もしてくれないだろう。しないよね?しないでくれ。するな。

 横山は詠唱速度こそ並みよりは早いが、移動目標が苦手なのは仮ペアを組む三澤さんから聞いて知っていた。合同演習でもまったく役に立たないという、ほぼ愚痴だったが。

 一方で一発の火力は高く、落ち着いて狙えば命中率は高いので、豚教官が好きなカカシうちではそれが全くハンディにならず、評定で高得点が取れるのだ。

 再び岩弾を二つ立て続けに、さらにもう一つを一瞬遅れて放つ。

 最初の二つはへたり込んで腕をついている両肘めがけて別々の方向から叩きつける。先ほどと同じように腕の鎧の一番薄い部分を狙って肘を砕くのが狙いだ。

 激痛に顔をゆがめた横山は楯を構える間もなく、両肘を狙った岩弾が関節を逆向きにし、ほぼ同時にヘルメット越しではあるがこめかみにも岩弾がたたきつけられる。その衝撃で横山は白目をむいてその場に崩れ落ちた。


「勝者、内藤候補生!」


 横山に駆け寄った憲兵が俺の勝利を宣言すると、辺りは観客の拍手と歓声に包まれる。中には花火っぽい精霊術を打ち上げたり、罵声とともに賭け札を投げ捨てている奴もいる。


 騒ぎを聞いて駆けつけてきたらしきハルカさんや、マリノ、岸本、古賀さん、そして今回のトラブルの元凶の三澤さんが俺の周りに集まってくる。みんな嬉しそうで、戦った甲斐もあったというものだ。


「横山ざまぁだね」


「あれやられると騎士でも躱す以外に手がないな」


「コントロールがいいと単発火力なんて関係なくなるのね」


「内藤君、ありがとう。助かったわ」


 横山の周りでは豚教官や取り巻き連中が集まり、治療担当の精霊術士も慌てて治療を開始している。

 悪いが両ひざ、両肘の関節が砕けているはずなので、精霊術の治療でも簡単には完治しないはずだ。

 俺だって横山の態度はいい加減腹に据えかねていたのだ。我ながら性格が悪いなと思うがせいせいしたという気分はある。


「うむ、文句のつけようがないほど見事な勝ち方だった。婚約者として私も誇らしい」


「「「はぁ!?」」」


 あ。何をドヤ顔でばらしてるんですか。


「ハルカさん。みんなも、それはオフレコで!後でちゃんと話すから!話がややこしくなる!」


 本人も慌てて口元を押さえてるけど、もう遅い。まぁ、このメンバーなら他に聞かれてなければ問題はないか。


「そ、そう、そう。ミズホこれ見てよ!」


 マリノが嬉しそうに見せてくれたのは賭け札らしき紙切れだった。


「すっごい儲かったよ!」


 聞けばハルカさんを含めてみんな俺に賭けていてかなりの配当になるらしい。みんな嬉しそうな訳だ。

 どうも俺が勝ったのを素直に喜んでくれていただけではなさそうだな。ちょっと複雑な気分だ。


「ボク達、換金してくるね。ハルカさんとシエラちゃんのもやっとくよ」


 ハルカさんに三澤さんまで賭けてたのか。三澤さん、自分自身が賭けの対象だったって自覚あるのか?中学時代の三澤さんのイメージがどんどん崩れていくな。

 岸本と古賀さんもそのままマリノについて行き、ハルカさんと三澤さんだけが残される。このあたりマリノは気配り上手だ。


「三澤さん。俺、もうハルカさんとマリノとユニット組んでるんで、悪いけど・・・」


 決闘の勝敗がユニットを組む権利とか言われても困ってしまう。三澤さんが嫌いとか言うわけではないが、さすがに優先順位を間違えるわけにはいかない。さっき、ハルカさんが婚約者だと自分でしゃべったのはたぶん三澤さんに対する無意識の牽制な気がする。過去のトラウマのことがあってどうも自己肯定感が低いようだから、不安に感じているのだろう。いつもよりハルカさんの立ち位置がこころもち近い。


「さっきも話したでしょ。私は横山君とユニットを組みたくなかっただけだって。私の中では内藤君と浅野教官は既定路線だったし。宮本さんのことは予想外だったけど、割り込むつもりはないから安心してよ。それに決闘は横山君が勝手に盛り上がっただけなんだから。巻き込んだのは悪かったとは思ってるけど」


「ならいいけど、ごめん」


 少し不安だったが、三澤さんも察してくれたのかあっさり言質がとれた。ただでさえ主体性のない流れになっているので、これ以上状況に流されるのは避けたい。


「それより誰か紹介してよ。できれば女の人」


 横山で男にトラウマでもできたかな?


「俺にそんな知り合いいるわけないだろ。大村少佐にでも聞いた方がいいよ」


「よ!お見事だったね。稼がせてもらったよ。ありがとう!」


 三澤さんのお願いに途方に暮れていると、突然肩を叩かれた。振り向くと4人連れの正規兵のグループがニコニコしながら立っていた。どこで会っているような気がする。誰だっけ?


「あれだけコントロールできるなら、すぐにでも現場で通用するわね」


「ん?覚えてない?俺たち御津で一緒だったんだけど?俺、吉本中尉」


 突然のことにきょとんとしていると、リーダー格っぽい人が自分の顔を指さして言った。


「あ、ああ!す、すいません。思い出しました。第二中隊の皆さんですね。失礼しました」


 そうだ。思い出した。あの時は期間も短く、ドタバタしてあまりゆっくり挨拶する暇もなかったのだ。しかも俺は人の顔を覚えるのが大変苦手と来ている。


「そ、そ。あの時は大変だったしな。いいよ。いいよ。ついでに言うと『元』第二中隊だけどな。今回の再編で第一大隊へ異動になって中隊もばらけちまった」


「その節は大変ご迷惑をおかけしました」


 いきなり横でハルカさんが腰が直角になるまで深々を頭を下げた。

 今度は第二中隊の面々がきょとんとしている。たぶん、雰囲気が変わったから気づいていないのだろう。


「えーっと、こちら教官の浅野少尉です」


 なんか俺が紹介するのも変な話だ。


「あ、ああ。あの!あの時とまるで雰囲気が違うからわからなかったよ。申し訳ない」


 吉本中尉が頭をかいてる。お互い様ということで。


「いいよ。あの時はみんな必死だったんだ。命令違反は褒められたもんじゃないが、結果として誰も死なずにすんだ」


「私なんて半分、三途の川渡りかけてたけどね。貴女のおかげで渡らずに済んだの。お礼を言うくらいよ」


「御津では命を儲けて、今日はお金が儲かった。二人とも俺にとっては福の神だよ」


 第二中隊の人たちの言葉に強張っていた教官がだんだん落ち着いていったのでほっとした。

 今日の決闘では学年首席VS学年最下位という肩書だけで判断して横山にオッズが偏る中、第二中隊の人たちは俺に賭けてくれたらしい。中には給料一か月分突っ込んでいた人もいてホクホク顔だ。


「ギャンブラーですね」


「ギャンブルなもんか。御津で二人とも見てるんだ、ほとんどイカサマだよ。できれば毎月やってくれ」


 周りから笑いが起きる。


「少尉もあまり昔のことは引きずらないこった。自分で思ってるほど周りは気にしちゃいないよ。また一緒になったらよろしくな」


 そう言い残してご機嫌で吉本中尉たちは去っていった。


「くっそぉー、俺は絶対認めねーからな!」


 叫び声が聞こえたのでそっちに目をやると、両手がぶらぶらのまま半身を起こした横山が俺の方を睨んでいた。死なないとは思っていたが、死なれると後味が悪いので一安心だ。

 治療をしている精霊術士も困った顔をしている。


「きったねー手使いやがって!」


 三澤さんとハルカさんと三人顔を見合わせる。

 なんかいろいろ大声で悪態をついているが、周囲からも失笑が沸いていた。

 あれで卑怯とか言われてもな。

 詠唱終わるまで待てとか、さらに当たるまで動くなと言われて言う通りにするバカはいないだろう。

 だんだん聞くに堪えなくなってきた。

 観客の中には他人ごとだと思ってはやし立ててるやつもいる。


「なんかこっち来るよ?」


 横山の周りの人だかりを抜けて困った顔をした憲兵さんがこっちに向かってきていた。


「内藤候補生。中西、細野両候補生がそれぞれ決闘を希望しているが、どうする?私個人の考えとしては受ける義理はないとは思うが」


 言外に立場上伝えなければいけないので理解して欲しいという気持ちが露骨に伝わってくる。


「いやですよ。面倒くさい」


 あの二人も横山と一緒で、型や固定目標相手の成績はいいが、実戦形式の訓練はあまりやってないはずだ。ハルカさんにひたすらしごかれたので、悪いが負ける気はしない。それに二人を煽っているのが横に立っている豚教官だというのが見え見えだ。自分ひとり安全な場所から人を嗾けているのがさらに面白くない。


「いいじゃないか。面白そうだからやってみればいい」


 どいつもこいつも他人ごとだと思いやがって、と振り返るとそこには軍用コートを羽織った師団長が立っていた。


「浅野師団長!?」


 慌てて揃って敬礼するが、師団長がいらんと制してくる。


「どうせなら、二人まとめて、いや秋山も合わせて三対一くらいのほうが盛り上がるんじゃないか?」


 一人ずつならなんとかなるだろうが、三対一だとさすがに自信がないので遠慮させていただきたい。

 浅野師団長の後ろでは杖を突いている大村さんと近藤大隊長が渋い顔をしている。義足の大村さんは最近動き回る機会が増えたので、嫌々ではあるが杖を常用するようになった。歩きやすくはあっても杖なんて年寄り臭いと思っているようだ。


「大佐、そんな無茶な!それならせめて私も」


「浅野少尉が参戦したら勝負が見えててつまらないじゃないか」


 ハルカさんの抗議も一蹴されてしまう。

 俺じゃなく、ハルカさんなら三対一でも楽勝しそうだ。


「どうだ?自信がないか?」


 あるわけがない、と言いたいところだが。

 師団長の挑発的な態度にそのまま答えるわけにもいかない。

 酔狂で言っているわけではなく、師団長には何等かの思惑があるのは見え見えだ。


「これって、試されてるんですか?」


 娘の配偶者としてふさわしいかどうか?


「さてな」


 理由として含まれてそうだ。

 ハルカさんは心配そうに俺を見つめていた。

 どうも俺は不本意ながら茨の道に足を踏み入れてしまったようだ。

 溜息が出てしまう。


「・・・やりますよ」


 これも女で身を亡ぼすというんだろうか。

 俺ってこんなキャラじゃないんだけどなぁ。天を仰いで泣きたくなってくる。

 周りからは相当に情けない顔に見えているはずだ。


「男だね。ではハンディをやろう。今回に限り、対戦相手の死亡も免責にしてやる」


「え?・・・」


 師団長は俺を殺したいのか?

 それってハンディをくれたのか?

 負わされたの間違いじゃないのか?


「ママ!」


「ちょっと大佐?」


「そんな無茶な!」


 ハルカさん、大村さんに大隊長が抗議の声を上げ、周りのみんなは目をむいている。


「黙ってろ!」


 師団長の一喝に三人とも黙り込んでしまう。上には上がいるけど、この人に逆らえる人いるんだろうか。


「もっともあいつらにその条件を受ける度胸があるかどうかわからないがね。どうする?」


 黙ってうなずく。

 良く考えると相手の生死を問わないのであれば、手加減なしの攻撃をいきなり急所に打ち込むことも可能だ。横山の時は一応オーバーダメージにならないように気にしていたが、死亡が免責になるなら遠慮がいらなくなる。三対一でそんな気遣いをする余裕なんてあるわけもない。そう解釈すれば確かにハンディをもらったことになる。

 人の好さそうな憲兵が、本当にいいのかと俺と師団長の顔を見比べる。それぞれがうなずいたのを見て横山たちの方へ走っていった。


「ミズホ・・・」


 心配そうなハルカさんが縋り付いてくる。


「大丈夫。何とかなるよ」


 たぶん。と心の中で続ける。


「それよりもハルカさん。ぶ、秋山教官の手の内ってわかる?」


 中西と細野はなんとなくわかるが、豚教官が精霊術を使っているところをほとんど見たことないのだ。記憶をたどっても訓練の最初の頃に手本などで見た程度で得意不得意まではわからない。

 能ある鷹、いや豚は肉を隠しているのか?人に見せられないほど弱いのか?でも一応評定オールAってことは実力自体は相応にあるはず。


「私も秋山教官が現場にいたころは知らないが、正統派の精霊術士だったはずだ。性格はアレだが、実力は普通にあると思った方がいい」


 マジかぁ。

 騎士の細野と、精霊術士の豚教官と中西。

 常識的に考えれば腐っても年長者、経験の長い豚教官のほうが俺よりも有利だ。

 でもハルカさんも豚教官の性格に問題があるとは思ってるんだ。人を悪く言うことがほとんどないから気にしていないのかと思ってた。

 しかし、大佐も無理難題を吹っ掛けてくる。


「秋山大尉、細野候補生、中西候補生ともに条件を了承されました」


 受けちゃったかぁ。三対一ならどうにでもなると思われてるんだろうなぁ。


「ご苦労。では三〇分後に開始でいいな」


 憲兵の報告を受けた浅野大佐が鷹揚にうなずき、あたりを見渡して宣言する。

 死刑宣告に聞こえてきたぞ。




 さっきの決闘の時以上に周囲は盛り上がり、賭けのオッズを読み上げる声が聞こえてきている。

 決闘開始までの時間があったのでグラウンドの隅のベンチで俺は休んでいた。今度は俺も真面目に皮鎧を取ってきた。


「今回も一対九くらいだってさ。ボクさっきの儲け全部ミズホにつぎ込んだんだから頼んだよ」


 また賭け札を握りしめているマリノが教えてくれる。

 賭けるだけのやつは気軽でいいよなと嫌味のひとつも言いたくなってくるが、表情で心配してくれていることくらいはわかるのでぐっとこらえる。泣きたくなってきた。

 どういう風に戦えばいいのか、さっきからずっと考えているが今回は豚教官がジョーカーすぎて展開が読めない。

 訓練では精神論だけ。手本以外で精霊術を行使するところを見たことがない。

 御津で狂狼に襲われたときも青くなって震えていただけだった。

 まるで実力がないのか、実力があっても気が弱くて発揮できないのか。

 三人もいるから攻勢に出てくるのか、横山みたいになるのを避けて守勢に回るのか。

 思考が無限ループにはまって考えがまとまらない。

 今回は命がけだし、舐めてかかって返り討ちにあうのはごめんだ。

 横山相手の時のような余裕はない。


「内藤候補生。そろそろ時間です」


 さっきの憲兵が呼びに来てくれたようだ。


「はい。ありがとうございます」


「ミズホ・・・」


 ハルカさんはずっと一言も発せずに俯いて横に座っていた。

 そっか、ハルカさんのペア候補になってすぐに死んだ二人とシチュエーションが似てるのか。

 やけに滅入っていると思ったら、俺が三人目になる可能性を気にしてるわけだ。

 もしかして大佐は三人目になったらそれまでだけど、克服できればハルカさんのトラウマ克服につながるとでも思ってるのか?ひどい荒療治だな。


「大丈夫だって。じゃあハルカさん、行ってきます」


 ハッタリなのは自分が一番分かっているが、できるだけ笑顔で手を振って憲兵についていく。

 自分のためにもハルカさんのためにもここは何とか勝たないといけない。ただ、いくら考えても豚教官をどう攻略すればいいのか見当がつかないのだ。三対一だから少しの計算間違いが命取りになりかねない。


「・・・豚教官、どんな戦い方するんだろ」


「秋山のこと?あいつは口では偉そうなこといってるけど、超ビビリだよ。訓練では普通にできてたけど、実戦ではまるでダメだったね」


 いっけね。うっかり考え事を口にしてた。


「憲兵さん、秋山教官御存じなんですか?」


「あいつが任官したときに同じ部隊だったんだ。俺は立場上大っぴらには言えないけど、頑張れよ」


「はい、ありがとうございます」


 なんとなくだが攻略の糸口が見えてきた。何とかなりそうだ。

 これでダメなら完全に俺の実力不足だ。




 大佐をはじめとした師団のお偉方が並ぶ中、憲兵さんが決闘開始の口上を行う。

 今度はさっきよりも間合いが開いて双方の距離は約七〇メートル。周囲の観客もっさきよりも距離を置いて流れ弾があっても大丈夫なように安全優先になっている。

 正面には豚教官たち三人が身構えている。

 豚教官は不似合いな全身鎧。フルプレートアーマーと呼ばれるストレングス型の騎士が身に着けるやつのはずだ。豚教官の筋力では歩くのも一苦労だろうに、いったいどれだけ臆病なんだ。

 今度の鎧は関節部もしっかりガードしてあるので横山に使った岩弾も効果は期待できない。ご丁寧に顔もフルフェイスで視界と引き換えに目の部分も隙間が少ないから、急所を狙うようなことはできない。

 俺には無理でも、平均的な威力の精霊術が放てる精霊術士なら力任せに攻略できるだろう。一番手っ取り早いのは雷撃なら感電して一発だ。俺だとどうだろう。ピリッとするくらいか?

 一方で細野と中西は普段から使っている俺と同じ革鎧だ。

 正面に騎士の細野を頂点としてその後ろに精霊術士の二人が二等辺三角形の底辺のような配置という比較的オーソドックスなフォーメーション。豚教官はあの鎧では固定砲台だろう。後ろの二人が距離を置いているのは普通ならひとまとめにやられるのを防ぐためだろうが、俺はそんな大規模な精霊術は使えない。狙いを定めにくくさせるためか?


「はじめ!!」


 掛け声と同時に細野がこちらに向かってダッシュをかけてきた。残りの二人はそのままの位置で詠唱を始めている。

 細野はアビリティ型のスピードファイターなので、瞬時に雄叫びをあげながら俺との間合いを詰めてくる。それでもハルカさんよりはかなり遅い。

 突っ込んでくる騎士への対処法。これはハルカさん相手に訓練でもさんざんやらされた。豚教官の着ているようなフルプレートの騎士に突っ込まれてきたら打つ手がないが、候補生用の鎧なら怖くはない。


「っ!っ!」


 細野の真正面やや右寄りに岩弾を飛ばし、回避しそうな左下向には一瞬遅れてカマイタチを放つ。


「そんなの当たるか、ぐはっぁ・・・」


 予想通り細野が左にステップして躱した直後、防具のない太ももをカマイタチが大きく切り裂き、そのままの勢いで頭からもんどりうって転倒する。俺たち候補生の皮鎧は動きやすさ優先の構造のため、二の腕と太もも部分は無防備だ。カマイタチはよほど注意していないと認識して回避するのは困難な上、一対一の状況で精霊術が立て続けに飛んでくるなんて経験もないから予想もつかないはず。

 細野が分かりやすい岩弾に釣られてくれて助かった。あの傷と出血ならもう戦闘不能だろう。

 ここまで五秒もかかっていない。

 その直後横山との決闘を教訓にしているのか、豚教官が狙いが甘くとも素早く火の玉の精霊術を放ってくる。思ったより詠唱が早いな。さすがオールAは伊達じゃないか。

 あたればただでは済まないが、距離もあるし、精度も甘いので十分余裕を持ってかわせる。流れ弾の先にいるのは観客も騎士と精霊術士だから慣れたもので、事前に対応する精霊術を張ったり、かわしたりしていた。

 機動力のある物理の細野はつぶしたので、あとは的にならないよう動き回る。距離を置いたまま、不規則に動いて二人の狙いを絞らせない。

 中西も手数優先なのかこっちはカマイタチを撃って来ている。

 二方向から飛んでくるので、避けるのに忙しくて気が抜けず、こっちの狙いがなかなか定められない。目視の難しいカマイタチは受ける側になるとイヤなもんだとつくづく思う。

 二人とも狙いが粗いのが幸いだ。

 豚教官の術はさすが年の功といった感じでいやらしいことに速さ、威力を強弱かけてくる。しかし、身を護るための全身鎧があだになって、精霊術そのものが弱化してしまっている。鉄を多用した防具は精霊との感応性を悪化させるので、金属製の鎧を身に着ける精霊術士は滅多にいない。

 俺程度は弱化した術でも十分ということか?

 実際こうして対人戦をやってみるとハルカさんの教えのありがたさが身に染みる。詠唱と無詠唱の違いの大きさがここまでとは思わなかった。相手の動きや詠唱から意図が読め、対処ができるのだ。

 これならなんとかなるか。

 なんて思ってたら、躱したつもりだった火の玉が俺をかすめていく。


「あちち」


 見ると左腕の防具が焼け焦げ、その下の皮膚が軽い火傷になっていた。我慢できないようなケガではない。やはり精霊術士としての腕は性格ほど馬鹿にはできない。


「まだまだ!」


 自分に言い聞かせて、フェイントを交えながらじわじわと豚教官を挟んで中西と一直線になるような位置取りへ持っていく。ほとんど移動ができない豚教官が間に入れば楯になるはず。


「!はっ!」


 豚教官の火球をかわして、中西が豚教官の陰になった瞬間、無詠唱でうっぷん晴らしもかねて火球の精霊術を豚教官に向けて放つ。正直、三〇メートルほどの先の実質固定目標なんて、狙うのは造作もない。


「ふんっ、お前ごときの精霊術がこの鎧に効くとでも・・熱っつ!、熱いっ!熱いっ!」


 たしかに俺ごときの精霊術の火球なんて握りこぶしより大きい程度だ。普通の精霊術だと大きさと威力が比例するので握りこぶし程度の火球だと熱量も知れている。ところが俺の場合は大きさは小さくても普通の火球なみの熱量は持っているから、当たった部位の金属鎧をやけどする程度には熱することはできる。

 狙い通りフルフェイスヘルムの真正面にあたった火球は頬当てを破壊することもなく飛び散ったが、当たった部分は鉄が赤く焼けている。そして目と口元の部分にはそれぞれ視界と呼吸のためのスリットが開いているので、隙間から熱風が顔を直撃したはずだ。

 俺が普段火球を使うことはほとんどないから使えないとでも思ってたんだろうか。それとも当たってもなんともないほどの火球だと思われていたのか。

 豚教官は熱いと騒いで兜を外そうとしてバランスを崩してそのまま後ろにひっくり返り、亀のようにジタバタしはじめた。


「うわっ!」


 ざまぁと思ってたら、その直後に豚教官がいた場所を通って大火球が飛んでくるのを慌てて身体を投げ出すようにしてかわした。油断大敵。

 嘘だろ。

 教官もろとも撃つつもりだったのか。たまたま発動を貯めてたのかしらないが、冗談じゃない。

 マリノの大火球よりは小さいが、それでもかなりのものだ。

 危ないところだった。


「あっ熱い、熱ぃーー!!」


 火の玉が金属鎧を舐めるように通過した豚教官の悲鳴が聞こえる。さっきは兜だけだったが、今度は仰向けに倒れていたから身体の正面に当たる鎧が真っ赤に熱せられ、鎧のいたるところから煙が出て、肉の焼けるイヤなにおいが漂ってくる。

 あのサイズの火球だ。相当な熱量だろうから、さすがにヤバいんじゃないか?

 止めを刺し損ねたが、中西め俺よりひどいことをしやがる。


「きょ、教官!」


 中西が慌てて駆け寄っているところを見ると、貯めていた火球をただ単に射線が通ったから条件反射で撃ったみたいだな。何を考えてるんだ。豚教官に仕返しができないじゃないか。

 とりあえずムカつくので、まっすぐ教官に向かう中西の顔に向けて岩弾を放つ。


「がっ・・・!」


 駆け寄る中西自身の勢いも上乗せされて岩弾が顔面を直撃して、中西の身体は泥酔した酔っ払いのようにフラフラと倒れた。

 これで高かった鼻が低くなったかもしれない。わりと女子にモテてたはずだけど、そこまで面倒見切れない。横山の時に使おうかと思っていた手だが、当たり所が悪くて死なれたら困るから断念したのだ。今回は何かあっても免責だし、手段を選ぶ余裕はない。さすがに積極的に殺そうとまでは思っていないが。

 豚教官はひっくり返ったまま、大声でわめきながらもがいている。加熱された鉄板が全身を覆ってるんだから、苦痛は相当なものだろう。

 ここから起き上がれるとも思えないが、止めを刺した方がいいんだろうか。そんなことを思っていたら審判役の憲兵が割って入ってきた。


「勝者!内藤候補生!」


 豚教官が悶絶して戦闘不能になっているのを確認した憲兵が宣言する。

 宣言とともに訓練場全体が割れるような歓声に包まれる。

 盛り上がりにかける結末だった気がするが観客は喜んでいるようだ。

 始まる前はどうなることかと思ったが、とりあえず何とかなった。


「ミズホぉー」


 感傷に浸っていたら、振り向く間もなく抱き着かれた。


「よかったぁ。生きてる・・・」


 ハルカさんだ。

 ハルカさんは俺に抱きついたままわんわん泣いている。


「ハルカさん、ほら泣かないで。なんとかなったでしょ」


 ハルカさんの髪をなでながら、自分のために泣いてくれる女性がいるのも悪くないもんだなと思ってしまう。

 ほんとに何とかなってよかった。

 一時はどうなることかと思った。


「ちょっと、ハルカさん。痛い、痛いって。そこ、火傷してるから!」


 火球がかすめた左腕が次第にじんじんしてきた。


「す、すまん。」


「・・・さて、ご両名。二人の世界作るのもそのあたりで止めて欲しいんだけど」


 腕を組んで、あきれ返った様子のマリノが立っていた。

 あ、やべ。

 気づけば、周りからはやっかみやひやかし、祝福の歓声が上がっていた。


「憲兵さんも困ってるよ」


 マリノの視線の先には目のやり場に困っている憲兵と衛生兵の腕章を付けた精霊術士が立っていた。


「内藤候補生。左腕の治療を・・・」


「あ。お願いします」


 焼け焦げた防具をハルカさんが外し、服の袖を切り落とすと、その下の左腕は水ぶくれだらけになっていた。

 思ったよりひどい。

 直接見ると、余計に痛く感じてしまう。

 待機していた衛生担当の精霊術士が素早く治療を始めてくれる。

 豚教官たちの方も何人もの衛生兵たちが治療に取り掛かっていた。向こうに比べたら俺のケガなんて軽いほうだ。


「憲兵さん、先ほどはありがとうございました」


「何、ただの昔話だ」


 頭を下げると憲兵は何でもないという風に手を上げて、豚教官たちの様子を見に行った。


「さすがにボクだって心配したんだからね」


 よく見るとマリノの目も赤く充血していた。


「悪かったよ。ありがとう」


「内藤候補生。今日できる治療はここまでだ。あとは士官学校の医務室に2、3日通えば大丈夫だ。風呂は構わんが、火傷したところにお湯をかけないようにな」


「助かりました。ありがとうございます」


「これが仕事だからな。いい勝負だった。お疲れ様」


 豚教官たちの方は担架で細野と中西が載せられて運ばれるところだった。豚教官の分も担架は来ていたのだが、鎧と本人の体重で運ぶのを断念したのだろう。その場で鎧をはずし始めている。

 気づけば観客たちも三々五々散っていってまばらになっている。


「内藤君、お疲れ様・・・」


「すごかったな。内藤・・・」


「お疲れ様・・・」


 まばらな人影の中から、三澤さん、岸本、古賀さんがやってきたと思ったら、俺の方を見て茫然としていた。


「どうかした?」


「いや、どうかしたって言われてもね」


「ああ」


「うん」


 口ごもる三人。


「浅野教官のその様子見たら、誰だって驚くわよ」


「熱々でうらやま、痛っ」


 岸本が古賀さんに肘鉄を食らっている。

 左腕のケガに気を取られていたが、右腕にはさっきからハルカさんがしがみついたままだった。


「とりあえず、士官学校に戻って落ち着いて話そうよ」


 疲れていたし喉も乾いたので、マリノの提案で士官学校に戻ることにする。

 幸い談話室の一つが空いていたので、そこで三人にこれまでの経緯を説明した。


「なるほどねぇ。それで三人ユニットになって、浅野教官と婚約することになったわけね」


「私自身も驚いているがな」


 ハルカさんは気恥ずかしそうにしながらお茶を飲んでいる。


「教官って情熱の人だったんですねぇ。さっきの抱擁、アタシ感動しました」


「あれは忘れてくれ。今から思えば、死にたくなるほど恥ずかしい」


 顔を赤くしてうつむくが、この駐屯地の連中のほとんどに見られたはずだ。しかもドラフトがらみで師団本部や他の駐屯地から来ていた人も多かった。俺とハルカさんの関係は周知されてしまったというわけだ。


「でも素敵でしたよ。私も教官が駆け寄るシーン見てドキドキしました」


 三澤さんまで目をキラキラさせてうっとりとしている。


「愛する女性のために命を懸けて戦う男!私もそんな男性に出会いたいです」


「三澤さん、頼むからやめてくれ・・・」


 俺まで頭を抱えたくなる。

 師団長に認めてもらうための決闘ではあったはずが、そんなカッコイイものだったろうか。

 三澤さんって清楚な和風系美人の印象だったけど、思ったよりミーハーな一面もあるのかもしれない。


「それよりも、三澤さんはこんなとこいていいの?俺たちはいいけど、三澤さんお見合い会頑張らないと」


 まだ日が暮れる前だし、ホールでは決闘という余興も終わってお見合い会がまだ続いているはずだ。


「いっけない、そうだった」


 飲みかけのお茶もそのままに、慌てて三澤さんは飛び出して行った。


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