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第9話 転生者、二つ名を決める。


 マヤ「残念ながら、本当さ。普通は各属性の、赤・青・緑・紫・黄色のいずれかの色が濃く混じるはずなんだ。だがアンタの場合、ほんの僅かに火属性の赤が混じっているだけだ。正直、アタッカーとしては絶望的だろう。」


 勝(た、確かに、熊に当てたファイア・ボールの威力は低かったが・・・でも!)


 勝「でも俺は、身体強化もアイテムボックスだって使えるぞ!それも一発で使えるようになったんだ!」


 マヤ「そう、そこなんだよ!」


 勝「?」


 マヤ「ここまで水晶玉が激しく白光することなんてほとんどない。つまり、攻撃以外に特化した無属性魔法においては、アンタの右に出る者はまずいないだろう。」


 勝「そ、そうか・・・じゃあ、サポーターとして俺はやっていく訳だな。」


 マヤ「そうだねぇ。ただ、正直に言ってしまうと、冒険者以外の職業。例えば、衛兵や荷物の運び屋であれば、引く手数多で一生生活には困らないだろう。それでもこのまま冒険者になるかい?」


 勝(ふむ・・・確かに、このまま他の仕事を選べば、今までみたいにその日の宿に困るなんてことは無くなるだろう・・・)


 クルミ「勝さん!!やっとの思いで冒険者ギルドに辿り着いたのに、ここで諦めるなんて勿体ないです!私が全力でサポートしますから、一緒に頑張りましょう!」


 マヤ「どの口が言うんだい!全くこの子は・・・」


 クルミ「エヘヘ・・・♪」


 勝(...フッ、確かにその通りだ。せっかく異世界に転生したのに、このまま諦めるなんて勿体ないよな・・・!)


 勝「2人ともありがとう。俺、やっぱり冒険者になりたい!夢にまで見た冒険者への道が目の前にあるんだ。たとえ失敗したっていい。このままやらずに後悔なんて、絶対したくないんだ・・・!」


 クルミ「わぁ・・・!」


 マヤ「フッ、そうかい。冒険者になると決めたからには歓迎するよ!・・・ようこそ!冒険者ギルドへ!!」


 次の瞬間、勝の背後から拍手が聞こえてきた。そこにはたくさんの冒険者がいて、勝に拍手をしていた。


 勝「いつの間に・・・!」


 マヤ「アンタはこのギルド、いや、この街の有名人だからね。他の冒険者もみんな心配していたのさ。」


 勝(何かこういうのは照れくさいな・・・でも、悪くない気分だ。)


 マヤ「さて、次にアンタの二つ名を決めよう。これは、今後の冒険者の指標にもなる大事なものだ。ビシッとかっこいいのを頼むよ!」


 勝「うーん、急に二つ名と言われてもなぁ。」


 マヤ「そうだねぇ・・・おっ、ちょうど良いところに来た。テツ!ちょっとこっちに来な!」


 次の瞬間、勝はガタイのいい男に肩を組まれた。


 テツ「よぉ!あんちゃん!久しぶりだな!」


 勝「!?あんたは・・・」


 勝(確か前に白金貨を騙し取ろうとした奴じゃあ・・・?それに、俺の服を盗んだ犯人の特徴と一致している。これは一体?)


 テツ「お前の言おうとしていることは分かるぜ!まず、俺はお前の服を盗んだ犯人じゃない、別人だ。あと、王都の銀行なら白金貨を両替出来るって教えてやるつもりだったのに、話も聞かずに逃げちまうんだもんな、流石に傷つくぜぇ?」


 マヤ「フン、そのいかつい見た目で逃げるなってのは無理な話さ!w」


 テツ「ギルドマスターにだけには言われたくねぇ!」


 マヤ「なんだとぉ!!」


 テツ「ヒェ〜ッ!おっかねぇ!」


 勝(そうか、俺は見た目だけで人を判断してしまったのか。申し訳ない事をしたな・・・)


 勝「テツ、すまなかった。俺はてっきり白金貨を騙し取ろうとしているのかと思って、逃げてしまった。」


 テツ「...ん?ああ、気にしなくていいぜ!それより、無事冒険者になれて良かったな!」


 勝「ああ、ありがとう!」


 マヤ「...話が脇道にそれたね。実はテツってのは本名ではなく、二つ名なんだ。本名はテディ・ ベ・アーっていうんだ。だけどみんなテツって呼んでいるよ。」


 勝 (くまのぬいぐるみ・・・)


 テツ「俺は見ての通り筋肉が自慢で、鉄のように体が硬いんだ。だから、自分の特長を二つ名にすることにしたんだ。お前も、自分の強みを二つ名にしてみたらどうだ?」


 勝(そうだな、やっぱり俺は無属性魔法、それも加速する身体強化が得意だから、速そうな二つ名がいいな・・・よし、決めた!俺の二つ名は"疾風しっぷう"だ・・・!)


 勝「決めたぞ、俺の二つ名は"デスティニー"だ・・・!」


 勝(・・・は?)


 後ろで、冒険者達がざわめいた。


 マヤ「・・・ 本当にそれでいいのかい?」


 マヤの顔は、明らかに引きつっている顔だった。


 勝(そんな訳あるか・・・!そんな恥ずかしい二つ名、すぐに訂正しないと・・・!)


 勝「もちろん!それで頼む!」


 マヤ「・・・そうかい!じゃあ、アンタは今から"デスティニー・勝"だよ!!」


 後ろにいる冒険者達が爆笑して、ギルド職員達も笑いをこらえていた。


 クルミ「アッハハハハ!!!フヒヒハハハハ!!!」


 クルミは、カウンターを叩いて爆笑しだした。


 マヤ「こぉら!クルミ!そんなに大笑いしたら失礼だy... フゴッ!w」


 勝(やられた・・・!思ってもいないことを口に出すなんて、これは完全にエリスの仕業だ!やっぱりあんな呪いのペンダント、さっさと宝石店に売るべきだった・・・!)


 〜謁見の間〜


 エリス「ベロベロバァー!www油断したわね!私があの程度の脅しに屈するとでも思ったのかしら!?女神エリスを弄んだ罰よ!所詮、勝くんは私のオモチャにされるデスティニー(運命)なのよ!ハッハーー!www だめwデスティニーに笑い殺されちゃうwww 」


 エリスは宙に浮きながら、足をバタつかせて爆笑した。水晶玉に映っている勝は、ペンダントの力で無理矢理満面の笑みを作らされており、当然、ペンダントは青く光っていた。



続く



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