第8話 転生者、冒険者になる。
〜詰所〜
衛兵「いや〜、悪かったな!領主様から連絡はあったんだが、町民からの通報もあった以上、形式上逮捕せざるを得なかったんだ。それに、町中でパンツ一丁になったのは事実だからな!w」
勝「な、なるほど・・・それでわざとあんな目立つやり方で連行したんだな・・・だが!あんなに楽しそうにしなくてもいいんじゃないか!?」
衛兵「わ、悪かったって・・・あ、そういえば、先程お前の服を盗んだ犯人が捕まったぞ!古着屋のオヤジの情報提供で、すぐに犯人を割り出せた。良かったな!」
衛兵は、今思い出したかのように話を逸らした。
勝「そうか・・・セドリックさんまで。本当にありがたいな。」
衛兵「そうだな、明日冒険者になったら、しっかりこの街に貢献してくれよな!」
勝「ん?明日?俺はこの後すぐに冒険者登録をするつもりなんだが・・・」
衛兵「なーに言ってんだ!逮捕されたのに、その日の内に釈放されたら不自然だろ!このまま詰所でお泊りだ!w」
勝「そんなぁ〜!俺、いつになったら冒険者になれるんですか!?」
衛兵「安心しな!明日の朝には釈放だから、無料の宿屋だと思って、今日はのんびりするといい。飯とお風呂付きだぞ!」
勝「わ、分かったよ・・・ 」
そうして勝は、衛兵達と雑談しながら、一晩ゆっくり過ごした。そして翌朝。
衛兵「もう出発するのか?朝食も食べずに。」
勝「ああ、朝一番に冒険者登録に行こうと思ってな。もう待ちきれないぜ!」
衛兵「そうか、そうしたらこのサンドウィッチを持っていきな。」
勝「ああ、ありがとう!」
こうして、勝は小走りで冒険者ギルドに向かった。勝が冒険者ギルドに到着したのは、営業開始のほんの少し前だった。
勝(少し早く着き過ぎたな。そういえば、昨日の夜は転生してから初めて謁見の間に呼ばれなかったな。まぁ、正直毎晩会う必要もないしな・・・おっ!ついに来たか!)
次の瞬間、冒険者ギルドの扉が勢い良く開いた。
受付嬢「おっはようございまーす!!...あぁっ!」
勝「あっ!あの時の!」
勝の前に現れたのは、最初に冒険者ギルドに来た時に対応をした受付嬢だった。
受付嬢「探したんですよぉー!あなたのせいで私、ギルドマスターにめちゃ怒られたんですから...イテッ!」
受付嬢の後ろにいる背丈の高い女性が、受付嬢にゲンコツを振り下ろした。
背丈の高い女性「アンタ、自分の不手際を他人のせいにするんじゃないよ!このおバカ!!」
受付嬢「反省してますってばー!始末書だって、ちゃんと書きましたし。」
背丈の高い女性「反省している人間は開口一番に謝罪の言葉が出てくるはずだよ!まったく・・・」
勝「ハハハ・・・」
背丈の高い女性「アンタ、街で噂になっている勝だね?領主様から事情は全て聞いているよ。このおバカのせいで、とんだ災難に遭っちまったみたいだねぇ。ギルドを代表して謝罪するよ、申し訳ない。」
勝「えっと、それはどういう事だ?」
背丈の高い女性「まぁ、ここで立ち話もなんだから、とりあえず受付カウンターの前で詳細を話そう。」
そう言って、冒険者ギルドの中に案内された。以前来た時とは違い、中にはギルド職員以外は誰もいなかった。
マヤ「自己紹介がまだだったね。私の名前はマヤ。冒険者ギルドのマスターをやっている。よろしくな。」
勝「俺の名前は勝。改めてよろしく頼む。」
そう言って、マヤと握手した。勝の手より2回りくらい手が大きく、身長も190cmくらいある。金髪のショートカットも相まって、そこら辺の冒険者より威圧感があった。
クルミ「はいはーい!私の名前はクルミでーす!以後、お見知り置きを!」
クルミは茶髪のおさげで、かなり細身だが、声が良く通る活発な少女である。
マヤ「はぁ、この子は元気だけはピカイチなんだが・・・」
クルミ「てへぺろ☆」
マヤ「アンタ、少しも反省の態度が見えないね!今日の私の掃除当番、代わりにやるかい!?」
クルミ「勘弁して下さい〜!それに、ギルドマスターだって、こないだ凡ミスした時に可愛らしく、てへぺろ☆ってやってたじゃないですかー!」
マヤ「な"っ!ふざけるのも大概にしな!アンタは今日から一ヶ月、毎日掃除当番だよ!!」
マヤは、顔を真っ赤にしながら、怒鳴った。
クルミ「ご、ごめんなさーい!!大人しくしているので、それだけはー!」
勝「...フ、フフッ!w・・・ゴホン!」
マヤは笑った勝に気付くと、大きくため息をついて、落ち着いた表情に戻った。
マヤ「・・・本題に戻るが、登録料の銀貨3枚は原則前払いになっている。だが、お釣りが出せないなど、こちらに理由がある場合は、報酬からの天引きで支払うことも出来るんだ。まぁ、今までそんな例はなかったが、この子が独断で判断せずに、私に相談していれば冒険者登録出来たんだよ。」
クルミ「うぅ、本当にごめんなさい。」
クルミは、申し訳なさそうにペコリと頭を下げた。
勝「ま、まぁ、色々あったけど、色んな人の助けで無事ここまで来れたからもういいよ。それより、早速冒険者登録がしたいんだ!俺、もう待ちきれないよ!」
勝は、ワクワクを抑えきれずにいた。
マヤ「ああ、そうだね。じゃあ、まずは魔力測定だ。この水晶玉に触れてみてくれ。」
そう言って、マヤは巨大な水晶玉を取り出した。勝が水晶玉に触れると、水晶玉は直視出来ない程に激しく発光した。色は白色にほんの僅かに赤色が混じっている。
マヤ「こ、これは・・・!」
勝「おぉ!俺の魔力はそんなにすごいのか!?」
勝(なぁんだ、エリスはチート能力は無いとか言っていたけど、俺、実はすごいじゃないか!)
マヤ「い、いや、びっくりするぐらい、攻撃魔法の適正が無い・・・!」
勝「う、嘘だろ・・・?」
続く




