第2話 転生者、追い返される。
勝「おおー!、これが冒険者ギルドかぁー!」
勝は町で一際目立つ建物を前にして、テンションが上がっていた。町並みはまるで中世のようだったが、冒険者ギルドは明らかに鉄筋コンクリートか、それに近い材質で建造されており、まるで神殿のようだった。
勝「こんにちはー!」
勝は冒険者ギルドに入ると、意気揚々と挨拶をした。勝の珍しい別世界の服装もあってか、冒険者達は勝を見つめていた。 だがしかし、勝は周りの目線など全く気にせず、受付の前へと進んだ。
受付嬢「こんにちは、本日はどのようなご要件ですか?」
勝「あの、冒険者登録ってのをしたいんですけれど。」
受付嬢「かしこまりました、それでは登録料として銀貨3枚いただきます。」
勝「(えっ、登録にお金かかるの!?まいったなぁ、お金全くないんだよなぁ。あっ、そういえばトムさんからもらった白金貨があった。これってお金だよな?)」
勝「じゃあ、この白金貨でお願いします。」
そういって、勝は化粧箱に入った白金貨を差し出そうとした。
受付嬢「白金貨!?こんなもので支払える訳ないじゃないですか!あなたこれがいくらかわかっているんですか!?」
勝「いやー、実は田舎から出てきたばっかで、お金の価値が全然わからないんですよね。これってそんなに価値が低いんですか?」
受付嬢「逆ですよ!いいですか?リンゴ1個の値段が大体銅貨1枚、銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、そして金貨1000 枚で白金貨1枚分です!それと、白金貨をあまり人前で出さないほうがいいですよ!」
勝「(じゃ、じゃあ俺は今リンゴ10万個買えるほどのお金持ちってことか!トムさんって実はとんでもない人だったのでは!?・・・ あれ、でもそれじゃあ・・・)」
勝「でも、それなら十分支払えますよね?」
受付嬢「いいですか?防犯上の理由で冒険者ギルドや町のお店には現金を大量に置いておくことはほとんどないんですよ。それにギルドでは、報酬の支払いや素材の買い取り額が金貨10枚以上の場合、口座に振り込むことになっていますから。」
勝「じゃ、じゃあ俺はどうすれば・・・?」
受付嬢「両替していただくしかありませんね。」
勝は嫌な予感がしていた。そんな訳ないと頭で言い聞かせてはいたが、心臓の鼓動が速くなっているのを感じていた。
勝「い、一体どこへ行けば両替してもらえるんでふか!?」
勝は、今にも泣きそうな顔で受付嬢に訴えかけた。
受付嬢「さ、さぁ・・・?普通は上級貴族か王族しかお目にかかれない代物ですし、私も実物を見たのはこれが初めてです。」
そう言いながら、受付嬢は申し訳なさそうに目線をそらした。
勝「そ、そんな!今手持ちがこれしかないんです!このままじゃ俺、野宿確定ですよ!!」
受付嬢は数秒間目を高速で泳がせた後、満面の笑顔で言った。
受付嬢「またのご利用をお待ちしておりまーす♡」
勝「う、うぐっ!」
勝は我慢した。勝は涙がこぼれるのを我慢ながら、その場を立ち去ろうとした。その時、ガタイのいい男に肩を組まれた。
男「よぉ、あんちゃん!白金貨を両替できる所なら俺知ってるぜ?特別に教えてやるよ!」
勝はポジティブだが、勘は悪くない。この男は白金貨を騙し取ろうとしているのだと、一瞬で理解した。
勝「失礼しまーーす!」
勝は目にも留まらぬ速さで男の肩を振り切り、その場から走り去った。このとき、身体強化が発動していたことに勝だけが気づいていなかった。
男「は、はえー。」
〜数分後〜
勝「はぁ、はぁ、危ないところだったぜ。だがしかし、白金貨を狙う男から逃げ切れたのは運が回ってきた証拠だな!よし、とりあえず白金貨のことはしばらく忘れよう!まずは冒険者ギルドの登録と今日の宿代をどうにかしなければ!」
勝は独り言を口に出していたため、周りからの視線を集めていた。そのことに気が付き、少し恥ずかしくなった。
勝「(いや、待てよ。よく考えたら、俺の服装周りと大分違うな。もしかしたら、古着屋が高く買い取ってくれるのでは?)」
勝は薄汚れた服を着たまま、街にある古着屋へと向かった。
古着屋の男性「いらっしゃいませ。」
勝「突然なんですけど、今俺が着ている服ってどう思います?」
勝は渾身のドヤ顔で仁王立ちをした。
古着屋の男性「はぁ・・・おや、よく見たらとても上質な生地、そして独創的なデザイン。これは見事な服だ。」
勝「(思った通りだ・・・!これで新しい服とお金が手に入る!)」
勝「そうしたら、この場でこの服を売って新しい服を買って帰りたいんですけど。」
古着屋の男性「バカ野郎!!!服を洗濯して持ってこい!!!」
あまりの声量と迫力に勝は飛び上がってしまった。
勝「し、失礼しましたーー!!」
〜数分後〜
勝は街の隅っこで体育座りをして動かなくなっていた。流石の勝も落ち込んでしまったのだ。
優しい男性「そんな所で座り込んでどうしたんだい?さっきも町中で独り言を言っていたようだけど。」
勝は通りすがりの男性の優しさが身にしみて、涙がこぼれた。勝は街に着いてからのことを全て打ち明けた。
優しい男性「そうか、それならウチの宿に泊まるといい。1泊だけならお代もいらないよ。」
勝「ヴン、ありがとう、おじざん!」
〜宿屋〜
優しい男性「まずは、明日街の中にある水場で服を洗濯するといい。うちにはそういうサービスはないけど、石鹸を1つあげよう。そうすれば服を売って冒険者ギルドに登録できる。そうすれば生活には困らないだろう。ほら、ご飯できたよ。お食べ。」
勝「ありがとう・・・ グスン、ご飯おいしい・・・ 。」
優しい男性「はは、それはよかった。」
〜謁見の間〜
エリス「ハアァァ!可愛い!落ち込んでいる勝くんの顔、とってもかわちぃでちゅねぇ!wたくさん食べていっぱいおねんね出来るかにゃあ?w」
エリスは恍惚な表情を浮かべながら、勝を見つめていた。だがしかし、その目線は人ではなく、おもちゃを見つめる視線だった。
エリス「ふふっ、今夜が楽しみね。」
〜勝のいる世界〜
勝「(お腹も満たされたし、今夜は早めに寝よう)」
勝は柔らかいベッドの感触を噛みしめているうちに、深い眠りについた。
気が付くと、勝は何もない空間いて、目の前にはエリスがいた。
エリス「よくおねんね出来ました、勝くん♡」
勝「エリス様・・・?」
続く