第12話 転生者、パーティーに加入する。
タカシ「気を付けろよ!動きは直線的で読み易いが、奴の動体視力はいい。直前で身体強化で真横に回避しろ!」
フライングベアーは、勝に向かって真っ直ぐに突進して来た。
勝「うぉっ!?・・・だが、身体強化は俺の大得意だ!」
勝は、お得意の身体強化で回避した。
ハヤテ「たが油断するなよ?奴は、突進の勢いを維持したままのしかかり攻撃をしてくる。あの巨体に押し潰されたら、まず助からないだろう。」
勝「ははっ、そいつは恐ろしい。」
タカシ「ハヤテは全員に速度強化の魔法弾と、奴が方向転換をする時に速度低下弾を出来るだけ撃ち込んでくれ!勝は指示があるまでイッチーの後ろで待機を!私が奴を引きつける!」
ハヤテ「オーケー!」
一ノ助右衛門「ウム!」
勝「分かった!」
タカシは、フライングベアーに突っ込んでいった。
ハヤテは、アイテムボックスから一回り大きいハンドガンのようなものを2丁取り出して、全員に速度強化弾を撃った。
一ノ助右衛門は、アイテムボックスから刀を2振取り出した。その後ろで、勝は鑑定魔法を発動させた。
フライングベアーが方向転換をして、タカシに突進した。それをギリギリのところでかわして、フライングベアーが再び方向転換をしようとしたその時、ハヤテの速度低下弾20発が全弾命中した。
勝(は、速い・・・!なんて早撃ちだ!...だが、鑑定魔法によると、奴は速度低下抵抗"特大"を持っている。これは、フライングベアーの特性か?それとも個体差か?いや、今はそんなことはどうでもいい!それより、奴の弱点は火と・・・睡眠!?)
タカシ「くっ、何故だ!?元々こいつは速度低下は効きにくいが、ここまで効果が現れないなんて!」
ハヤテ「タカシ!麻痺弾を撃つか!?」
タカシ「駄目だ!動きが不規則になって、かえって危険だ!移動速度低下が効かない以上
、麻痺弾は使えない!」
勝(いや、恐らく睡眠弾と麻痺弾、そして俺のファイア・ボールを組み合わせれば、倒せる!・・・たが、さっきのペンダントの点滅。あれは恐らく鑑定魔法を隠せというエリスからの警告だろう・・・ だが!)
タカシ「・・・仕方ない、今回も守りに徹して撃退の方向で行こう。イッチー、頼めるか?」
一ノ助右衛門「ウム、勿論だ。」
勝「ちょっと待ってくれ!ハヤテ、睡眠弾は使えるか?」
ハヤテ「!?...ああ!勿論使えるぜ!」
勝「奴の弱点は火と睡眠だ!睡眠弾と麻痺弾で動きを鈍らせれば倒せる!」
タカシ「待て!麻痺弾では奴の動きが読めなくなり、近接攻撃が出来なく・・・そうか!勝なら遠距離で攻撃が出来る!」
タカシは、フライングベアーの攻撃を連続で避けながら、何度もナイフのような物で攻撃をしていた。頭が何度も上下逆さまになっているが、息が全く乱れていなかった。
勝(スゲー器用だな・・・ あんなアクロバティックな動きをしながら指揮官と陽動、近接攻撃までするなんて・・・よし!俺も負けてられないな!)
ハヤテは、タカシと交戦しているフライングベアーに、睡眠弾を2発打った。
勝(当てた・・・!両者激しい動きをしているのに、フライングベアーだけに正確に当てる技術、相当なものだな!)
すると、フライングベアーはその場に急に倒れ込み、眠ってしまった。
一ノ助右衛門「!?」
ハヤテ「は、速い!たった2発だぞ!?しかもこんな短時間で!」
タカシ「話は後だ!いいか?眠ってはいるが、刺激を加えたらすぐに起きてしまうだろう。ハヤテは、睡眠弾と麻痺弾をひたすら撃ち込んでくれ。勝は火属性魔法をありったけ頼む。イッチーと私で2人をサポートする。とにかく攻撃に集中してくれ!」
勝・ハヤテ・一ノ助右衛門「任された!」
勝は、一ノ助右衛門の前に出た。
ハヤテ「デスティニー!いくぞ!せーの!」
2人は合図と同時に攻撃を始めた。ハヤテが20発程打つ間に勝は、サッカーボールくらいの火の玉を1つだけ打った。
白の覇者達(マ、マジか・・・)
フライングベアーは激しく悶えたが、睡眠弾と麻痺弾が効いているのか、その場からほとんど動けずにいた。
タカシ「デスティニー!ファイア・ボールは一か所に集中させろ!同じ場所に打って毛皮に燃え移りさえすればこちらの勝ちだ!!」
勝「分かった!」
そうして、勝がファイア・ボールを3発当てた瞬間、フライングベアーの毛皮に火が燃え移った。だが、それと同時にフライングベアーが体を起こし始めた。
ハヤテ「マズイ!このままだと倒し切る前に!」
タカシ「2人はまだ攻撃を続けてくれ!私達が時間を稼ぐ!」
ハヤテ「うおぉぉぉぉ!!!」
勝「うおぉぉぉぉ!!!...ん?」
勝(あれ?そういえばさっき拾ったビックリ茸って確か・・・やっぱりそうだ!食材でもあるが、爆薬にもなるキノコだ!これで勝つる!)
勝は、フライングベアーに向かってビックリ茸を投げた。
タカシ「ば、馬鹿野郎!!!!」
次の瞬間、フライングベアーはものすごい勢いで、ビックリ茸を投げた勝に向かって突進してきた。
勝「うわあぁ!!」
次の瞬間、ビックリ茸が爆発し、辺り一面煙で視界が白くぼやけた。視界が晴れると、勝の前には一ノ助右衛門が立っていた。
一ノ助右衛門「まったく、無茶をするでござる。」
勝「た、助かったよイッチー。」
一ノ助右衛門は僅かに微笑みながら、ピースをした。
タカシ「なんて無茶をしやがる・・・イッチーがいなかったら今頃死んでいたぞ。」
勝「す、すまん。まさかこっちに突っ込んで来るなんて・・・」
タカシ「デスティニー、鑑定魔法の内容をちゃんと最後まで読んでいないな?あれは肉食モンスターがホイホイ集まって来る危険なキノコだぞ?」
ハヤテ・一ノ助右衛門「ッ!?」
勝「な、何故それを!?」
タカシ「水晶玉があそこまで白く輝いたんだ。もしかしたら、伝説の鑑定魔法が使えるんじゃないかと思っていたんだ。それに、さっき何かを言いかけたり、フライングベアーの弱点を的確に言い当てた。証拠としては十分過ぎる。」
勝「ハハッ、流石だな。」
タカシ「たが、感謝している。おかげで俺達はフライングベアーを倒せた。」
勝は、タカシの後ろを見た。そこには、真っ黒に焦げたフライングベアーが仰向けに倒れていた。
タカシ「それと同時に、リーダーでありながら大した活躍も出来ずに申し訳ないと思っている。」
ハヤテ「なーにいってんだよ!あんな人間離れした動きをして息が全く乱れない奴、他に見たことねぇよ!wそれに、普段から色んな役割任せちまっているし・・・」
タカシ「いや、それは器用貧乏というやつで・・・」
ハヤテ「まーた始まったよ!普段、さも自信ありげな喋り方のくせに、こういう時に限ってネガティブモードになるの、もういい加減飽き飽きしたよwイッチーを見てみろよ。敵の攻撃を防ぐだけなのに、仁王立ちしてほとんど動かないんだぜ?」
一ノ助右衛門「・・・」
一ノ助右衛門は、無表情でハヤテを追いかけた。
ハヤテ(やべっ!)
ハヤテ「悪かった!悪かったって!だからこっちに来ないでくれ!・・・うわぁ!全弾はじくなぁ!」
勝「はっ...ハハハハ!」
白の覇者達は立ち止まり、勝を一斉に見つめた。
勝「決めたよ・・・!俺はもっとこのメンバーで冒険がしたい!俺、もっともっと強くなるから、白の覇者の一員にしてくれないか!?」
少しの間があり、最初に口を開いたのは一ノ助右衛門だった。
一ノ助右衛門「拙者は最初から"勝"は白の覇者の一員だとおもっているでござるよ。」
勝「イ、イッチー・・・!」
タカシ「こちらこそだ。改めてよろしく頼む、勝。」
勝「ああ、よろしくな・・・!」
勝とタカシは、握手をした。
ハヤテ「うっし!これで白の覇者に念願の遠距離アタッカーの加入だ!・・・ってまだ追いかけてくるのかよ!もう終わりにする流れだったじゃん!!」
一ノ助右衛門「デスティニー、しばしそこで待たれよ。この愚か者を成敗いたす。」
勝「イ、イッチー!?さっき勝って呼んでくれたじゃん!何で戻したの!?」
一ノ助右衛門は、捕らえたハヤテを羽交い締めにしながら、嬉しそうにピースをした。
タカシ「ハハハハ!w 今日は良い日だ!帰ってデスティニーの歓迎会をしよう!」
勝「おまえら絶対わざとだろ!!」
タカシは、高らかに笑い続けた。
〜謁見の間〜
エリス「フフフ、勝くんのパーティーにふさわしい、濃いメンツね♪」
サン「エリス!!終わった!終わったぞ・・・!」
エリス(えっ、ちょっ!?思ったより早く終わっちゃったわね・・・こうなったら・・・!)
続く