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第4話 未成年の自衛官視点

 東京のとある地区において、多数の戦車と普通科(歩兵部隊)が密集している。

 近くの駐屯地から出撃した自衛隊の1部隊である。


 彼らの目的はただ1つ、市民を脅かす怪獣の掃討。


 出現した怪獣は真っすぐ人口密集地へと進行しており、かつその人口密集地の避難が未だ終わっていない。

 そこで部隊が進行ルートに待機し、怪獣を横から攻撃。怪獣を誘導しつつ掃討する事になっている。


 つまり怪獣の進行阻止は、人口密集地に多大な被害が生まれる事を意味している。

 失敗は許されない状況だ。


「いよいよ初実戦だね……」


「うん、何か実感湧かないね……模擬演習もなしに実戦なんてさ……」


 戦車部隊に紛れて立っているのは、数人の少女の自衛官だ。

 つまり未成年である。


 彼女達は中学を卒業してからすぐに入隊した身であり、演習もままならず怪獣掃討の任に付いたのだ。

 

 その理由は人手不足。


 10年間に渡る怪獣襲撃によってある者は殉職し、またある者は逆に死にたくないと退職。

 故に自衛隊内で慢性的な人手ないし戦力不足が続いており、こうして本来なら起用しないはずの中学卒業の未成年を自衛官として起用している。


 普通ならありえない事。

 だが世界中で発生した未曾有の大怪獣災害を前に、自衛隊の上層部はそうせざるを得なかったのだ。


「大丈夫かな……怪獣って数時間以上掛けないと倒せないんでしょう? 1日以上掛かったなんて話もあったし……」


 そんな彼女達であるが、その顔に不安の表情が浮かび上がっていた。

 次々と消極的な台詞を口にする。


「大体、数時間以上も死なないっておかしいでしょう……やっぱ怪獣って異常だよ……」


「だよね……これでもし全滅ってなったら……」


 彼女達は両親や親族の反対を押し切り、市民や日本を守りたいという一心で入隊した身である。

 

 それでも不安は拭えなかった。

 

 生物らしかぬ異常な生命力を持った怪獣は、自衛隊の強力な火器を喰らってもすぐには死なない。

 概ね、数時間以上は掛けないと倒せないというのが(軍関連の人間にとっては嬉しくない)常識だ。


 そんな異常極まりない怪獣達を相手をしなければならない。

 うら若き彼女達から、「勝利のビジョン」を消え失せさせるのには十分過ぎるほどだった。


「……ま、まぁ、何とかなるよ!! 何も死ぬと決まった訳じゃないんだし!! これが終わったら美味しいご飯でも……」




 ――オ゛オ゛オオオオオオオオオオオオオオオンンンン!!!!


 一番背の高い少女自衛官が、場を和ませようとした時だった。


 突如として響き渡る獣の咆哮。


 その場にいる全員が驚いた直後、前方のビルの上から大きな物が降ってくる。

 それが近くの別のビルに激突し、爆発音にも似た轟音を上げながら突き刺さった。


「キャアア!!? ……車!?」


 吹っ飛んできた大きな物は自動車。

 壁に突き刺さった衝撃で酷くひしゃげ、セキュリティアラームがけたましく鳴り響いている。


 もっともそのアラームは、前方のビルが倒壊した事でかき消されたのだが。


「ひっ……」


 まるで積み木のように崩れ去るビルの中、それがゆっくりと姿を現す。


 ビルの瓦礫を零していく無数の背ビレ。

 両肩の鋭い棘に50メートルもある巨体、そして粉塵から現れる獰猛な獣の顔。


「ソドム出現!! ソドム出現!!」


「標準合わせ!! 目標、ソドムの顔面!! ソドムの顔面!!」


 ソドム。

 昨日、とある山から出現した怪獣へと付けられた名称だ。


 山から出現したソドムはすぐ東京の人口密集地に向かい、目に付く建物を手当たり次第に破壊。

 その後は地面に潜っては別の街に出現、そこを破壊した後に再び地面に潜って……と言った感じの行動を繰り返している。


 これには「縄張りを拡大する為」という専門家の見解がある。

 怪獣は巨体故に広い縄張りを求める傾向にあり、建物を破壊するのも縄張り誇示の意味合いがあるのだ。

 

「お前ら、早く銃を構えろ!! 一斉射撃を行うぞ!!」


「……りょ、了解!!」


 部隊の隊長に急かされ、臆しながらも自動小銃を構える少女自衛官達。

 

 彼女達……いやこの部隊は、市民の盾として命をかけて立ち向かわなければならない。

 例えそれが、災害の権化たる怪獣が相手だとしても。


「撃ち方ぁ!!」

 

 射撃号令と共に、火を噴く戦車の砲塔。

 普通科から乱れ放つ自動小銃の雨。


 無数の弾がソドムの顔面や胸部に直撃し、連続的な爆発が起こる。

 そんな中でソドムは決して怯みも弱りもせず、獰猛な顔を部隊へと向けていった。


 ――グルウウウウウ……!


「後退!! 後退!!」


 誘導が成功している。

 故に砲撃を続けながら、戦車や自衛官が後退をし始める。


 対し、怒りの咆哮を上げながら部隊を追いかけるソドム。

 普通の生物なら即死どころではない砲撃の雨を、怯みもせず進撃しながら。


 ――オ゛オ゛オオオオオオオオオオォォォ!!!


 狙う先は、ワンテンポ後退し遅れた1台の戦車。


 操縦者の自衛官達が慌てながら外に出た瞬間、ソドムがその戦車へとがぶりつく。

 それによって火器をも防ぐ装甲がひしゃげていき、挙句の果てには破片を撒き散らしながら爆発。


「うわぁ……!!」


 爆発の余波や破片が降りかかり、身を屈める少女自衛官達。

 

 一方でソドムが強靭な腕を振り払い、数台の戦車を次々と吹っ飛ばしていく。

 戦車らが一斉に周りの建物に突っ込む中、ソドムの怒りに満ちた目が普通科へと向けていき……。


「おい、おい!! これヤベェぞ!!」


「ヒィ、ヒィアアアアア!!!」


「おい逃げるな!! 敵前逃亡は懲罰だぞ!!」


「ウワア!!! ウワアアア!! ウワアアアアアアアアアア!!!!」


 恐怖で腰を抜かす者、敵前逃亡する者、半狂乱で自動小銃を乱射する者。

 まさに阿鼻叫喚。

 

 少女自衛官達も発砲がままならず、ガタガタ震える始末。


「どうしようどうしようどうしよう……!! 震えが……震えがぁ……!!」


「だ、大丈夫だから!! 皆撃って!! 早く!! 早くぅ!!」


 背の高い少女自衛官ですら、震えで発砲が出来ない。


 その間にもソドムが口を大きく開け、喉元を赤く光らせる。

 何が来るのか、少女達はもう分かってしまった。


 絶体絶命だと悟って、少女自衛官達が身構えてしまった……その時だった。


「ほいっと」


 横から現れた「何か」が、手にも持っている得物らしきものでソドムの頬を殴った。


 ――グァアアオオ!!?


 それによって吹っ飛ばされ、ビルの壁に叩き付けられるソドム。

 

 何かが起こったのか、少女自衛官達は理解できなかった。

 ただソドムがビルに寄りかかるように倒れていて、その肩に攻撃した何かが乗り移っていたのだ。


「よっと。へぇ、まるで鋼のような皮膚ね。魔獣よりも硬いかしら?」


「……女の人?」


「ていうか……魔女……?」


 その何かは、紛れもなく人間の女性だった。

 少女自衛官達よりも若干年上か。


 三角帽子に巨大な杖と魔女を思わせる容姿をして、なおかつ豊満な胸元が開いた大胆な服装をしている。

 ついでにハイヒールを履いた色白の生足は、思わず少女自衛官達もチラ見してしまうほど。


「撃ち方やめ!! 撃ち方やめ!! 民間人がいる!! 撃つのをやめろ!!」


 横倒しになった戦車から出ながら叫ぶ隊長。

 それでも乱射する発狂中の男性自衛官がいたので、仲間が「やめろったら!!」と強引に押し倒した。


 ――グオオオオオアアア!!!


 ソドムはというと、肩に乗り移った魔女へと鋭い鉤爪を差し向けだす。


 が、魔女はひらりと後ろ宙返りジャンプで回避。

 瓦礫の上に降り立ちつつ、場にそぐわない勝ち気な表情を浮かばせていた。


「ますます気に入った。今すぐ、あなたを下僕にしてやるわ!!」


「……げ、下僕?」


 その発言の真意を、少女自衛官達の誰1人も理解する事は出来なかった。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


 今回の怪獣ソドムのイラストがカクヨムの近況報告にございますので、下のURLからご覧ください!

 https://kakuyomu.jp/users/yaranaikasan/news/16818622175907785323

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