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第10話 無明の闇より

『君はどうしたいの?』


 無明の闇の中から、何者かがカリニャンに問いかける。


 幻聴か何かだろうか。

 それでも構わない。カリニャンは、その問いに答えた。



 ――この衰弱を打ち破りたいんです。




『どうして?』



 ――お姉さまを、守りたいんです。



『それで?』



 何だっていい。私がお姉さまを守れるように、もっともっと強くなりたいんです。



『そう。君は敵を憎むでもなく、愛する人を救いたいのね』



 それは衰弱で朦朧としていたカリニャンの脳が見せた、幻だったのかもしれない。



『守りたいなら願いなさい。己の心の奥底に。望む力はそこにある』



 現実と幻覚の狭間で、カリニャンは願う。理不尽に立ち向かう力を。

 己の魂の奥底に眠る叛逆の意思を、その手で掴み取った。



『あと2回だからね』



 そうして無明の闇の中から語りかけてくる何者かは、カリニャンの意識の中から去っていった。






 世界の色彩が戻り、朦朧としていた意識がハッキリする。


 体が軽い。


 衰弱であれほど力が入らなかったのが、まるで嘘のようだった。


 もう動ける。何の制約もなしに。

 どういう訳か、カリニャンは【衰弱の呪い】から抜け出せたのだ。


「そうだ、お姉さまっ!!」


 カリニャンはすぐにコハクへと意識を向ける。


 コハクとセーロンマスクチャンネルの二人との戦闘はまだ続いている。

 だが、コハクが食らっているダメージは既にかなりのものだった。


 意図的に防御を解き、自己再生のような自動回復スキルを切っているのだ。


 ここまでしなければ、二人がコハクにまともにダメージを与える事は不可能だったであろう。


 カリニャンは全力で駆け出した。


「お姉さまっ!!!!」


 カリニャンが衰弱を無効化した――

 即座に察したのは、コハクだけではなかった。


「チッ」


【盗賊】のサブジョブ持ちであるセイジが、その敏捷さを活かして一気にカリニャンに刺突をくりだす。


 さすがのカリニャンも回避は困難。だがしかし――






「――幻影召喚(アブセントサモン)っ!」





 コハクは、カリニャンと迫るレイピアの間に〝それ〟を投げた。



「何っ!?」



 それは『盾』であった。


 煌めく金色の星の意匠が刻まれた、幻影の盾。




 ――〝薄明の星盾〟






 盾はカリニャンの前で静止すると、そのままレイピアの刺突を受け止めた。


 そして盾は攻撃を受け止めるだけに留まらない。



 セイジのレイピアに乗せられた攻撃の衝撃(ダメージ)倍にして(・・・・)――




 ――その腕に、跳ね返した








「ぐぅおおおっ!?」


 セイジの右腕がレイピアごとえぐれ、消し飛んだ。


 一瞬で大ダメージである。



「せ、セイジ――」


 気を取られたコルバルトがコハクから一瞬目を離す。


 その瞬間、コハクのデコピンがコルバルトの眉間に炸裂した。


「は――?」


 そしてコルバルトの身体は勢いよく旋回しながら吹き飛ばされた。


 コハクがしたのは本当にただのデコピンである。

 ただし、レベル280超の膂力と【一撃必殺】が乗せられたデコピンだが。



 吹き飛ばされ文字通り即死したコルバルトの死体は、光の粒子となって消えていった。プレイヤーの死体は残らないのである。



「よくもお姉さまに……お姉さまが私を傷つける訳ありません! 私を【衰弱の呪い】とやらで喋れなくなるまで弱らせて人質にして、お姉さまを殺そうとした!! なんでそんな事をしようとしたんですか!!」


「ふふ……何でってそりゃ、〝面白そう〟だからに決まってるでしょうが……」


「面白そうだから? どうしてあなたのようなプレイヤーはいっつも私たちを……」


「知らないようだから教えてやるよ。この世界は、げ――」


「もういいカリニャン。それ以上の会話は無駄だよ」


 片腕が千切れ、満身創痍のセイジにコハクは近寄っていく。


「君、人気の配信者らしいね。色々ネタバラシしちゃったからたぶんもう炎上してると思うけど」


「くっくっく……わたくしがあのまま配信を続けていたとでも? そこのNPCが衰弱を無効化した時点で配信は終わらせてますよ」


 セイジはやれやれと気障に首を振って、さっさととどめを刺せとジェスチャーする。ゲームオーバーによるレベル半減は痛いが、多少時間をかければすぐに元通りだ。


 セイジたちが失うものはさほどない……はずだった。


「勘違いしてるみたいだけど、〝打ち合わせ〟の時から僕もずっと配信してるんだよね。初めての配信だけど、人気者になれそうで良かったよ」


 コハクのドレスのブローチから、宝石に似た黒い小さな球体(カメラ)が浮かび上がる。


「は、え……嘘だろ? そんなバカな、り、リプライ……うあ、違う! そんなはずではっ!!! わたくしはそんな事をしていないっ……」


「してないって、全部全世界に公開されてるけど。カリニャンを人質に僕を悪者に仕立てあげようとした、セーロンマスクチャンネルのセイジさん?」


「く、くそおぉぉぉ!!! ……せめて、せめてお前は殺す!!」


 懐から回復薬(ポーション)を取り出し飲み干すと、欠損した右腕が元通りに再生した。そしてセイジは予備のレイピアをアイテムボックスから取り出し、カリニャンに襲いかかる。




 だが、しかし。






 ―――――――――――――――――



 称号:邪神の狂信者


 名前:カリニャン


 Lv153


 性別:♀


 種族:白猫族



 技能(スキル)


【縮地Lv4】

【空中跳躍Lv5】

【暗視Lv3】

【猛毒耐性Lv2】

【自己再生Lv3】

【衰弱無効Lv-】New


 固有技能(コモンスキル)


【白雷魔術Lv5】

【白氷魔術Lv5】

叛逆の意思(プレイヤーキラー)Lv1】New



 異質技能(ユニークスキル)



【蕃神之寵愛】Lv繧ォ繝翫Φ



 ―――――――――――――――――






 カリニャンは、セイジよりも格上である。

 セイジの高速の刺突をカリニャンは、もう見切っていた。

 レイピアの刀身を斜めに前進して回避する。


「よくも自分勝手に! お姉さまを傷つけて!! 絶対に許しません!!!」


 そして、そのままセイジの腹にカウンターの一撃を炸裂させた。


「うご、ぐぼああああああっ!!?」


 白き雷を纏ったカリニャンの一撃が、セイジの全身を打ち砕く。


 そして光の粒子となるまでもなく、悪質プレイヤーセイジの肉体は完全に消滅したのであった。







次回、セイジくんにさらなるざまあ展開が……。


(あとちょっとでジャンル別週間ランキングです!!

面白い、続きが気になると思っていただけたら、ページ下部の☆☆☆☆☆をタップしてもらえると嬉しいです!)

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― 新着の感想 ―
[良い点] コハク姉様の無敵感ハンパない!!(挨拶)  いやぁ衰弱を打ち破り、無効スキルまで手に入れたカリニャンちゃんカッコイイですねぇ  あとサラッと二人をボコし、なおかつ配信してた抜け目のないおね…
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