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女神の代行者となった少年、盤上の王となる  作者: 蒼井美紗
第2章 帝国編

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82、破壊の神の特殊能力

「眷属だということを伝えるんだね。うーん、そのエルネストは信頼できるの?」


 ミローラ様が眉間に皺を寄せながらアンに問いかけると、アンはその質問に対して首を横に振った。


「信頼できるかどうかは分かりません。しかし少なくとも生まれながらの悪人ではなく、正義感があることは確かだと思います。ただその上で、今回のことは信頼云々ではなく、どれほどの人数に私たちのことがバレてしまうのか、それをできる限り減らすために動くべきだと思うんです」

「えっと……エルネストに眷属だということを明かした方が、明かさずにセザールと戦った場合よりも、眷属だという事実が広まる可能性を下げられるということだね」


 確かにアンの言うことも一理あるな。例えばエルネストに俺らの正体を伝えずにセザールの引き離しに失敗した場合、最悪は周囲にたくさんの人たちがいる中でセザールと戦うことになる。

 そうなれば、セザールも俺たちも眷属だということが、大勢にバレてしまうだろう。さらに大勢の人を戦いに巻き込んでしまう。


 それならエルネスト一人だけに明かして、上手く誰もいない場所にセザールを誘導してもらった方が良いはずだ。


「私もアンリエットの意見に賛成だわ。エルネストは今のところ信頼できそうでしょうし……何よりも、エルネスト一人が二人のことを眷属だと周りに言いふらしたところで、信じる人は少ないもの。大勢の人に見られる可能性を減らせるならば悩むことではないわ」


 セレミース様のその意見に皆が同意して、当日にセザールを引き離す方法はエルネストに頼むことで決まった。エルネストには、今度こっそりと拠点で俺たちのことを伝える予定だ。


「じゃあこれでセザールを引き離すところまでは決まったから、後はどうやってセザールを倒すのかだね。まず、私たち三人で戦うのでいいんだよね?」


 レベッカの私を仲間外れにしないでねという視線が俺の顔に突き刺さり、俺は苦笑しつつ頷いた。


「ああ、三人でなんとかセザールを倒そう。問題は破壊の神の眷属が持つ特殊能力だな」

「ミローラ様、セレミース様、どのような能力か知っておられますか?」

「もちろんよ。破壊の神の眷属は『竜化』という能力を持っているの」


 セレミース様は拳を握りしめ、眉間に皺を寄せながら厳しい表情でそう発した。そんなセレミース様の後を継ぐように、ミローラ様が説明を続けてくれる。


「災害級の魔物と言われてるドラゴンがいるでしょ? そのドラゴンに体の一部を変化させられるんだ。だから身体能力はありえないほどに高いと思ったほうがいいよ。ただ五分ほどで竜化を解かないと変化を解除できなくなって、段々と理性を失って最後は完全なドラゴンになっちゃうんだ」

「だから五分よ。五分間耐えれば竜化は終わるから、そこからが勝負だわ」


 五分のリミットがある能力か……体の一部をドラゴンに変えられるなんて、怖いな。どれほど強力な力を得るのかいまいちイメージができないけど、とりあえず最大限の警戒はしておかないと。


「五分間、とにかく防御に徹しよう。倒すのは竜化が解けた時でいいから」

「そうだね。セレミース様、竜化はどれほど休めばまた使えるのですか?」

「確か、一時間ほどだったと思うわ」


 ということは、一度の戦いで竜化は一度だけってことだな。


「分かりました。リュカ、アン、頑張ろうね」

「ああ、絶対に勝つぞ」

「頑張りましょう」


 俺たちがクーデター当日に向けて互いを鼓舞しあっていると、セレミース様が真剣な表情でレベッカとアンの二人に視線を向けた。


「二人には言っておいた方が良いと思うから伝えるけれど……セザールは、もしかしたらリュカの故郷の村を壊滅させた張本人かもしれないの」


 セレミース様が発したその言葉に、レベッカは鎮痛な面持ちを浮かべ、アンは驚きに瞳を見開いた。アンには過去のことは話してないからな……


「リュカの故郷って……滅んで、しまったの?」

「ああ、突然呪いによって滅んだんだ。だけど呪いを持ってるはずの魔物の痕跡が村のどこにもなくて、不思議な事件だって言われてる。でも今回、セザールが呪いを自在に操れることが分かったから……もしかしたら俺の故郷の壊滅にも、セザールが関わってるんじゃないかと」


 俺がその言葉を発すると、レベッカが瞳に涙を浮かべながら拳を握りしめた。


「もしそうだったら、セザールは許せないね……」

「ああ、許せない。絶対に許せないが……できる限り、怒りに我を忘れないようには気をつける」

「私から頼みたかったのはそこなのよ。リュカが暴走しそうになったら、二人が止めてあげてほしいわ」


 セレミース様のその頼みに、レベッカとアンは真剣な表情で頷いてくれた。俺も感情的にならないよう、自分の気持ちをできる限りコントロールしよう。


 そこでセザールに関する話は全て終わりとなり、俺たちはエルネストにいつ伝えるかどうかの話し合いをしてから下界に戻った。

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