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女神の代行者となった少年、盤上の王となる  作者: 蒼井美紗
第1章 成り上がり編

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39、昇級とこれからのこと

 数年間使った愛着のあるギルドカードだったけど、昇級の際にギルドカードは回収する決まりとなっているらしく、俺は寂しい気持ちになりながらも担当者の女性に手渡した。


 ギルドカードは五級と四級が木製のカードで、三級が銅製、二級が銀製、一級が金製という決まりがある。さらに三級からは、偽造防止として冒険者ギルドの紋章も刻まれる。


 これから俺は金製で紋章付きのカードになるんだよな。その事実が嬉しくて頬を緩めていると、受け取ったギルドカードを箱にしまった女性が、今度は高級感漂う綺麗な箱を取り出した。


「お二人の新しいカードはすでに完成しておりますので、お渡しいたします」

「……え、本当ですか!」


 数日は待つと思っていたので思わぬ嬉しい誤算に身を乗り出すと、女性は綺麗な笑みを浮かべて頷いてくれた。


「昇級はかなり早い段階で決まったからな。その時から鍛冶師に依頼をしていたんだ」


 エドモンさんが横から補足をしてくれて、これほどに早い理由を知る。今ここに完成品があるってことは、スタンピードを消滅させたあの日の夕方ぐらいには作られ始めてたのかもしれないな。


 女性が箱を開けると……中に仕舞われた冒険者カードは光を反射してキラキラと輝いていて、手を伸ばすのに躊躇ってしまう。


「どうぞ、お受け取りください」


 俺とレベッカが二人で手を伸ばさずに見入っていると、女性が苦笑しつつ促してくれた。


「ありがとう、ございます」


 意を決して金製のカードを手に取ると、薄いカードだけどずっしりと重さがあった。木製のカードとは全く違うな。


「わぁ、なんだか認められた気分だね。凄く嬉しい」


 レベッカも銅製のカードを手にしたようで、両手でカードを包み込んで胸に抱いている。


「気に入ってもらえたか?」

「はい。ありがとうございます」

「じゃあもう一つだけ受け取ってくれ。こっちはパーティーカードだ」


 エドモンさんが発したその言葉の後に、女性がまたしても高級そうな箱を取り出してくれる。俺が代表して開くと……中には鉄製に見えるカードが入っていた。


 しかし注目すべき場所はその材質ではない。カードに刻まれた……パーティー名だ。

 確かにパーティー名は凄い功績をあげた時に偉い人につけられることもあるって聞いてたけど、まさかそれが自分に降りかかってくるとは思っていなかった。


「救国の勇士って、凄い名前だね」


 レベッカがカードを覗き込んでその名を口にする。荷が重いというか、あまりにも大袈裟すぎるパーティー名だ。


「国王様が名付けられた。大切にしろよ」


 国王様が!? それは微妙だなんて絶対に言えないな。いや、別に微妙でもないんだけど……逆にカッコ良すぎるって感じだ。


「ありがたいです」

「パーティー名が付くと指名依頼が増えるだろうからそのつもりでな。さらにリュカは一級になったことで、個人にも指名依頼が来るだろう」

「指名依頼が……」


 少し前までは縁もゆかりもなかった制度だ。自分に指名依頼が来るとか、まだ実感が湧かない。


「指名依頼って断れるのでしょうか?」

「それはもちろん断れる。ただ依頼してきた相手との関係性もあるから難しいこともあるな。……その辺はギルドでもサポートをしているから、何か問題が起きた時にはギルドに相談すると良い」

「分かりました。ありがとうございます」


 それから俺たちは昇級したことによる影響についてエドモンさんに色々と説明してもらい、話が終わり執務室で温かいお茶を飲んで休憩しているところに、王宮からの役人がやって来た。


「失礼いたします」


 執務室に入って来たのは、眼鏡をかけた真面目そうな男性だった。男性は俺たちとエドモンさんに綺麗な動作で礼をすると、礼儀作法の本に載っている例題のような完璧な挨拶をする。

 エドモンさんに勧められてソファーに腰掛けたら、さっそく本題だ。


「リュカさんとレベッカさんには、このまま王宮へ来ていただきたく存じます。陛下ができる限り早くに謁見をと仰っておりますので、これから王宮で準備を行い、明日には謁見としたいと考えております。お二人はそちらのスケジュールで問題はないでしょうか?」

 

 明日って……あまりにも早すぎないか。

 でも別に予定はないし、心の準備が難しいという点以外で断る理由はない。レベッカに視線を向けてみると、レベッカも特に用事はないみたいだ。


「……問題ありません」

「かしこまりました。ではそちらの予定で進めさせていただきますので、できる限り早く王宮へお越しいただきたいです。冒険者ギルドでの用事は済まれていますか?」

「はい。もう終わってます」

「では参りましょう。エドモン様、慌ただしくて申し訳ございません」


 男性の謝罪にエドモンさんは苦笑しつつ手を振り、俺たちは男性が来て五分ほどでギルドを出ることになった。

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