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3、神の眷属

 平和の女神様の眷属となった俺は、女神様に手を引かれてふかふかのソファーに腰掛けている。

 この場所がどこなのかはまだ分からないけど、とりあえずどこまでも続く広い草原にある東屋のような場所で、その東屋には触り心地のいいソファーと豪奢なテーブルがある。


「さて、まずは色々と説明をしようと思っていたんだけれど……その前に一つ話があるわ。リュカ、貴方は呪いを身に宿していたけれど、自分で気づいていたの?」


 平和の女神様は真剣な表情で俺の顔を覗き込む。呪いを身に宿していたって……俺は、ずっと呪われてたってことか?


「……初めて知りました」

「そう。でもこの呪いは結構強いものよ。何かしら自覚があったはずなんだけれど……例えば魔力が封じられているとか、力が弱くなったとか、体が成長しないとか」


 俺は女神様のその言葉を聞いて、体に雷が落ちたような衝撃を受けた。もしかして俺が何をしてもダメだったのって……呪いのせいだったのか!?


「あ、あの、俺は魔法が全く使えませんし、いくら鍛錬しても人並みにもなれませんし、剣だって重すぎてろくに振れませんし……それってもしかして」

「呪いのせいね」


 ――やっぱり、そうなのか。


 原因が分かって喜べばいいのか、呪われていたことを悲しめばいいのか分からない。多分その呪いって村が壊滅した時の呪いだよな。

 なんとか生き残ったとは言っても、やっぱり影響はあったのか。


「……呪われてる人間は、眷属になれないでしょうか」


 せっかく手にしたと思った幸運を逃すのかと落ち込みながらそう聞くと、女神様は軽い口調で否定した。


「そんなことはないわ。そもそも眷属となった時点で呪いは消えているもの。神力の方が呪いを上回るのは当然でしょう?」

「え……ということは、もしかして、俺って強くなったんでしょうか?」

「ええ、以前よりは確実に」

「試してみてもいいですか!?」


 ソファーから勢いよく立ち上がると、女神様は優しく微笑んで頷いてくれた。俺はそれを確認して、さっそく腰に差してある剣を抜く。


 俺がこの剣を使いこなせることはなかったけど、必ず持ち歩いて毎日鍛錬をしていた。呪いが解けて鍛錬の成果が少しでも現れているのなら……


 緊張しながら剣を一振りすると、俺が思っていた何倍もの速度で、鋭さで、ブレなさで、剣は綺麗に振り下ろされた。


「今までいくら鍛錬しても、剣をまともに振り下ろすこともできなかったのに……!」

「あら、良い剣筋ね。毎日しっかりと鍛錬をしていたのが伝わるわ」


 俺は女神様のその言葉を聞いて、瞳から一気に涙を溢れさせてしまった。今までの努力が無駄じゃなかったと分かって、本当に、本当に嬉しい。


「あ、ありがとう、ございます……っ」

「私は貴方を眷属にして呪いを解いただけ。貴方の剣の実力は今までの努力の賜物よ」


 それから俺は思った通りに動く体が、自分の思い通りに扱える剣が嬉しすぎて、数十分に渡って剣を振り続けた。


 やっと感情が落ち着いたところでソファーに戻り、女神様にしっかりと頭を下げて謝る。


「本当にすみませんでした。一人ではしゃいでしまって」

「大丈夫よ。嬉しそうな貴方を見ているのは楽しかったわ」

「……それならば、良かったです」


 女神様の俺を見守るような温かい目が恥ずかしくて照れ臭くて、俺は視線を下げた。しかし次に聞こえてきた女神様の言葉にまた顔をあげる。


「そろそろ色々と説明をしましょうか。まずはこの場所だけれど、ここは神域と呼ばれる場所よ。神がそれぞれ持っている空間で、私が許可を出した者しか入れないの」


 この不思議な空間は神域っていうのか。神の領域だなんて、改めて凄いところにいるな。


「リュカは眷属になったことによって、この空間には自由に出入りできることになったわ。それが神域干渉という眷属になって得られる能力の一つね」


 そういえば、眷属になると強い能力がもらえるんだったな。呪いが解けたことに感動しすぎて忘れてた。今の状態でもかなり強くなったのに、これ以上強くなれるとか想像できない。


「神域干渉の発動方法は何といえば良いのかしら、言葉で説明するのは難しいのよね。とりあえず後で試してもらうから、今は後回しにするわね」

「分かりました」


 それから眷属の能力について色々と説明してもらったことをまとめると、眷属の能力は大きく三つに分かれるらしい。

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