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勉強と今後の展開の話


「……と、いう訳で。今の貴方は、ケイト様がされていた教育全て、頭に入っていたようですね。これで確認作業は終わりになります、お疲れ様でした」


つ、疲れた…。本当に疲れた。仕事をしていた時以上に頭を使った気がする…。

残っていた僅かな体力で時計を見れば、夜10時を過ぎていた。徹夜とかにならなくて良かったと安心した途端体から力が抜けてだらりと椅子に凭れる。


まずクロンから言い渡された課題はこの世界の字が読めるかという初歩から始まった。

正直気になっていたところだから助かった…けれども、字が読めると分かるとなれば否や、今まで勉強した箇所の復習。

魔法のことや歴史以外にも学んでいた事が多過ぎて、逐一頭に入っているかの確認が長かった…。

私の学生時代だってこんなに勉強した事ないくらいには多かった。

これが十歳の子供の頭に入っていたの?有り得ない。

一番気になっていた王太子教育。

それも体に叩き込まれたせいか難なくこなしていけた…が。


本当にこんな事を子供がしていたのかと、頭が痛くなった。


どう考えても知識が膨大過ぎだ。

遅かれ早かれ学ばなければいけない事だと分かっている。分かっているが…、今でなくてもいいのではと考えずにはいられなかった。

袖に隠れた手首の内側を見る。赤く腫れたそこは毎日、毎日間違える度に受けてきた傷。この小さな体でよく耐えたものだ。


“国を統べる王になるのなら当たり前の事“、か。


頭に浮かんだのは私の言葉じゃなくて、きっとケイトの言葉。

この年頃の子供なんて、外で遊び回っているのが普通なのに、王家に生まれたという事だけでそれは許されず、一日中机に向かっていなければならない。余りにも過酷過ぎる。


「ねえ、クロン」

「はい?」

「…ケイトの家庭教師って、クロンだったりする?」

「そこは覚えていないんですね。…違いますよ、代々この王家に仕える家庭教師です。現陛下もその方から教わったと聞きますから、長年お仕えしてくださっている方なんです」

「へー…」


つまり体罰はその家庭教師の教育と…。

はぁーと長い溜息を吐いて、机に突っ伏した。

二代に渡ってその教えなら、きっと今更変える事は無いだろうな。つまり今度は私が、痛い目に合い続けなきゃいけないのか。ぶっちゃけ嫌だ。死ぬほど嫌だ。

勉強に、鍛錬、教育…指折り数えてまた更に溜息を生む。


「これさ…子供がする量じゃないと思うんだけど」

「私もそう思いますが、王家に生まれてしまった以上、避けられない事でもあります。貴方は今後の殿下をご存知なのでしょう?でしたら…」

「だからよ。私に務まると思えないの」


頭も良くて、国民に愛されている…人柄の良さ、勉強体術剣術何でもこなせる。そんな王子様。


「私、自信ない…」


目を伏せた時、はたと思い出した。


そうだ、ヒロイン。ヒロインはどうなるんだ?

確か政略結婚に飽き飽きしていた王子がヒロインを見初めて、そこからリリーナを他所にヒロインと恋を育んでいく。そしてリリーナは…言わずもがなである。

でもそれはゲームの中での話。

確か学園に入学するのは12歳から。18歳で卒業となり、全寮制。外出するには寮長の許可が必要だったり、結構面倒くさいなと思った。せめて門限だけにして…じゃなくて。

ヒロインは確か爵位が低い。なんだっけ…、男爵…?令嬢だった気がする。12歳でヒロインの存在を知る訳じゃなくて、思い出したんだけど、確か一つ下…リリーナと同年だったと思う。

だからヒロインと出逢うとしたら、入学式。13歳の時か。


……ん?


ヒロインと王子が出逢ったイベントって、王子が15歳の時じゃなかったっけ?王子の入学式から四年後…。

そっか。確かヒロインは家の都合で遅くに入学したんだ。…でも、家の都合って何だろう。

平民でも入学出来る学園で、爵位関係の都合は有り得ない。


「訳アリってことか……」


いつの間にかクロンが淹れてくれた紅茶を口に含みながら、このゲームのOPを思い出す。

各声優陣が歌うOPでは、キャラのアップから立ち絵と変わり名前及び爵位の紹介が始まる。結構攻略対象が多くて、流石アプリゲームと思った。私的にフルボイスじゃないとこだけがネックだったわ、うん。

そしてキャラの紹介が終わると数枚のスチルが流れ、最後に『貴方は誰とワルツを踊る?』と、攻略対象達が手を差し出してくるスチル。そして最後の一枚。最後の一枚だけが、誰か分からないようにしてあった。


誰を選ぶかによって諸々変わる。その演出だと思っていたけど、…もしあの手が王太子の手だったら…?

王太子ケイトは最終攻略対象。一度では辿り着けないルート。

SNSの宣伝で流れていたのは、王太子が主で、その他攻略対象みたいな描かれ方だったから、実際ゲームをプレイした人からは『王子狙いだったのに!』って不満コメントが書かれていた事もあったなぁと余計な事まで思い出してしまった。

でもそりゃそうよね、OPでも最初に登場していたし。勿論肯定的な人の方が多かったけど。


『他の攻略対象を落とさないとたどり着けない!正に王子!』

って。


そうなるとヒロインは、他の攻略対象を落としてからでないと王太子ルートに入れない。

全員を攻略した時、いつも何気なく通っていた廊下で突然、今までになかった選択肢が出てくる。それがルートへの分岐点。


……待て。私女なんだけど、ヒロインかリリーナを選べって言われてる?

いや王子だし当たり前の事なんだけど。


どっちにしろ、今の私はケイトだから“王”にならなきゃいけなくて、それにはヒロインかリリーナを選ばなきゃで…、推しのリリーナしか今の私には選択肢ないけど…って、違う!



「一筋縄ではいかなさすぎる……」


リリーナを救ったと思ったのに、今度はヒロインに悩まされるなんて…。しかも今後私はどちらかを選んで結婚しなければいけない。

この世界はそう簡単に私を安寧へ導いてはくれなさそうだ。


前途多難もいいところだと、項垂れた頭を上げる気力もなくなった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] どちらを選んでも百合(?)ですね~
[一言] 最高
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