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プロロジスパーク

「……だから俺はお前の事が好きだ!」


 主人公が不器用にも遂にヒロインに告白をした、ヒロインは頬を真っ赤にさせながら眩しいくらいの笑顔で、


「はい!」


 と答え、そしてエンディングロールが流れ出す。


「あぁ、凄いよかった……」


「うん、凄いよかった……」


 毎週追っていたアニメを見終えて兄妹揃ってほぼ同じ言葉で感動を表してしまう。


「兄さんはこんな感じで好きな人とか居るのですか?」


 最後まで見終えて青汁のCMが始まり感動の余韻から抜け出したくらいに、隣で見ていた妹から僕の恋愛事情について聞かれたので、僕はそうですね…と少し悩みながらも答えた。


「居ると言えば……まぁ居ますね。でも10年ぐらいの片想いだからか分かりませんけど、最近は特に情熱的も気持ちというのも無く惰性で片想いをやってるって感じですかね」


「珍しいタイプですね」


「意外と僕みたいなタイプも多いんじゃないでしょうかね」


「燃える女である私には分からない感情ですね」


「燃えてなんぼの高校生ですからね」


「ですね」


 そこで、会話は途切れてしまった。


 僕の家庭は家族間で敬語を使っている。親が違うとか育ちが違うとかそういう事も無く僕も妹の理沙も同じ家庭で育った、それなのに何故敬語を使うのかと周りからは不思議がられるが、僕の家庭は昔からそうだっからとしか言いようがない。


 既にショップチャンネルが始まっているTVを僕は消した、その時思い出したように理沙が言った。


「そういえば、兄さんの好きな人って誰なんですか?10年来の片想いっていったら兄さんが小中高で同じ学校の人ですかね、それって言ったらやっぱり佐藤さんとかですか?」


「………そうですね」


 僕と理沙は同じ学校だ。徒歩5分くらいの場所にそこそこ頭の良い学校があったので、二人共何となくそこを受けて通ったって感じで、年齢は一つしか変わらないので僕の学年の人の事とかもコイツは結構知っている、10年来の片想いなんて言うのは迂闊だったなぁ……。


「念の為聞きますけど佐藤っていうのは瑠夏さんの事で合ってますよね」


「合ってますよ」


 理沙が敢えて確認をとるのは僕の小学校からの同級生にも佐藤は男女で瑠夏を含めて二人ずつ居るからだ。


 しかし他の佐藤達と僕は、とても仲が悪く僕の好きな人物に佐藤瑠夏以外の佐藤が居るようであれば僕は会いに行けるツンデレというとても不名誉な称号を受け取る事になってしまう訳であり妹から見れば他人なら良いけど兄がツンデレというのはちょっとアレだからなぁ……という願望を込めての瑠夏チョイスという事である。


「しかし兄さんが佐藤さんの事を好きとは驚きですね、175センチ超の9頭身美女でオマケに滅茶苦茶足が速くて頭が良いなんて逆張り人間の兄さんにとっては一番嫌いなタイプの人間じゃないですか」


「仕方ないですよ、初恋なんですから」


 少し恥ずかしがりながらも僕はいつものトーンで返した。 


「アイツは僕の一番嫌いなやつ〜、とか昔は言ってましたし週2ぐらいでちょっかいかけて泣かしてたんでてっきり嫌いなやつぐらいだと思ってました」


「好きだけど嫌いだったんですよ。まぁその頃の僕は多分誰からも良い印象は持たれてなかったでしょうけどね、多分その頃からの同級生からは今も壁を作られてる気がしますね、黒歴史で済まない過去にはちょっと後悔してます」


「意外と過去を気にして兄さんから壁を作ってるせいだったりするかも知れませんよ」


「それであっても手遅れかも知れませんね」


 はァ…と僕は溜息をついてすこし猫背になった。


「そういう理沙は僕みたいにコンプレックスとかないんですか?」


 理沙だって僕と一つしか変わらない、確実に今の自分の足を引っ張る黒歴史の一つや2つくらいあるだろう。


「私は兄さんと違って今を生きてるので、過ちに一々囚われる事はありませんね」


「まぁ理沙に悩みがあったならば僕に対して父さんにするのと同じようにとても厳しく接していたでしょうしね」


「いまそうなっていない私に感謝して下さいね」


「ありがたや〜」


 最後は適当に軽口に付き合った所でタイムオーバー、電気がバチンと消え家中が真っ暗になってしまった。就寝時間を過ぎたら家中の電気が消えるのも僕の家の変なところなのかもしれない。僕達はスマホで暗き道を照らしながらそれぞれ自分の部屋に帰っていった。

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