私がチート主人公が嫌いな理由
私はチート物というジャンルがあまり好きではない。
理由は主人公に全く共感することができないからだ。
自称普通の主人公が自分は恵まれていない云々と愚痴をこぼし、異世界に行ったらもっと凄い活躍ができると幻想を抱き、自分の願望が全て叶えられる力を他人から受け取って無双する。正直、何が面白いのか全く理解できない。
はっきりいうとこの世でダメな奴は別世界に行ってもダメだ。
神がどんなに便利な力を与えたところで力に振り回されて終わるのが関の山だ。
劣等感を多く抱えた人間が巨大な力を手に入れると大抵の場合、欲望が肥大化する。これまで虐げられてきた感情が爆発し、優越感に浸りたいと思うようになる。自分は強い自分は優れているという承認欲求を満たす為に自分より劣る他者に無敵の力を使うようになる。
だが、それの何が楽しい?
弱い者いじめと変わらないではないか。
例えるなら幼稚園の遊び場に高校生が割り込んできて、威張っているようなもの。
私は問いたい。
空しくはないか? と。
最初から勝てる勝負ほどつまらないものはないではないか、と。
どうせ戦うのなら自分より強い者か相手が格下であったとしてもその力を最大限引き出してあげるべきではないかと私は思う。
相手の攻撃は躱すことなく全て受け切る。
これがチートを与えられた主人公の責務ではないかと私は思う。
自分の強さを誇示するためだけに弱者を一方的に潰すなど愚の骨頂。
大体、読者や観客が楽しくない。
追い詰められズタボロになり、負けるかもしれないというハラハラドキドキ感を提供し、対戦相手を輝かせてこそ無敵の力というのは効果を発揮するのではないか?
中には異世界にいってハーレムを作りたいとか魔王になりたいとか言ってくる奴もいるが、気持ちはわからなくもないが、正直大変だぞ。
ハーレムを作って大勢から好かれても本当の意味で愛されているかどうかはわからない。
彼女達はチートという力に惹かれているだけで、その上位交換が現れたら簡単に鞍替えする可能性だってあり得る。
人格が良いから好きだ?
違うな。私から言わせれば登場するヒロイン達は男を知らないだけだ。
力を振るい相手を従わせ威張っているような奴は暴君と変わらない。
そんな奴のどこに魅力があるというのだろうか。
世の中には誠実で真面目で自分のことよりも人を優先させる男もいる。
常に正直で困っている人を放っておけない男こそ、魅力的と言えるのではないだろうか。
同じ支配者でも、武力でワンマンな男と常に民に寄り添い、民の目線に立ち、時には民と一緒に働き、叱咤激励し、民を決して見捨てない男。どちらが魅力的に思えるか。
色々な意見があるだろうが、私なら後者を選ぶ。
おそらく最大の問題点はメタ的な視点になるが、異世界転生をさせる側の神に問題があるような気がして仕方がない。
何故、劣等感に苛まれるような奴を選ぶ?
心が歪んでいる奴よりも元から立派だった奴を選んだ方が得だろう?
それをしないのは欲望にまみれた人間の堕落する様を見て楽しみたいからだろうか。
だとしたらかなり悪趣味だと思うし、何も考えず適当に転生させたのだとしたら神として人を見る目が足りないのではないだろうか。
長々と語ってきたが、これから先、チートというジャンルに共感できる、もしくは読者が(能力ではなく人格に)憧れを抱くようになる主人公が現れることを願っている。
おわり。