11 海で出会った魚と妖精
うーみーはーひろいーなーおおきーなー。
この話書いている時、海ってこと忘れてて湖だと思い込んでました。
( ˘꒳˘)
ちゃぷちゃぷと。
オールで漕ぎ、波を掻き分ける音が響く。
あの後結局ナガレ→ナナ→ヒナの順番でオールを漕ぐことに決めた。
ただしオールを漕ぐというのはかなりコツのいる作業である。
この中でアウトドアの経験があるのはナガレだけらしく、ヒナとナナはオールを漕ぐ際のコツなどが全くわからず、とにかくATK(筋力)任せに漕いでいるため進むにも進まず、ただただ時間が過ぎていくだけだった。
「……な、なぁ……もう俺がやるから……さ?」
「黙ってて!!」
「えっ、あっ、はい」
必死の形相でオールを漕ぐナナの迫力に気圧されて弱々しい返事を返すナガレ。
「……あっ、そういえばみんな水着なんだからさ、最初っから泳いでくれば良かったんじゃない?」
「「あっ……」」
最初は次の狩場となる謎の島に対する興奮により、そして舟に乗っている最中は喧嘩(主にナナとナガレ)と疎外感(主にヒナ)などにより視野があまりにも狭まりすぎていた3人は、今になって冷静さを取り戻して1番簡単なことにヒナは気がついた。
「……でっでも、舟のレンタル量とか勿体ないし?しょうがないし?」
「そ、そうだよ、たまにはこういうのも趣があるっていうし?」
「舟借りる意味なかったし、泳いでいても水中の景色で風情は感じられ……」
「それ以上はやめよう」
「俺もそうするべきだと思う」
「……そうだね」
テンションはだだ下がりだ。
「わぁーさかながとんでるー」
「ついにヒナちゃんがおかしくなった!?」
時間のかけすぎで頭がおかしくなったヒナ。
しまいには魚が飛んでいると言い出し……いや。
「おい……本当に飛んでないか?」
「えっ……」
パタパタっ、と言う擬音が似合うほど。
必死に小さな羽を動かして水上を浮遊する。
トビウオのような魔物が、こちらに向かってきていた。
しかも数十匹ほど。
「「「えええぇぇぇ!?」」」
びっくり!
しすぎて3人共舟から落ちた!!
「と、とりあえず逃げよう!!」
「やべぇ!!地形的に不利すぎるわ!?」
「まずいよまずいよまずいよまずーい!!!!」
『『『ギョギョギョギョギョギョ!!!!』』』
ここに魔物とプレイヤーの鬼ごっこ、スタート!!
『ギョーッ!!』
「ひょわぁー!!!!」
鬼のトビウオ魔物Aがヒナに向かって突進!
ヒナは変な叫び声を上げてギリギリ回避する!
『『ギョギョォッ!!』』
「喰らえぇ……って、水が纏わりついてきて思った通りに動か……痛たぁ!!」
2人の鬼のトビウオ魔物BCが連携してナナに襲いかかる!!
ナナは剣を取り出し、振るうも水に身体が浸っているため水が腕に絡みついてきて思う通りに戦うことが出来ずに攻撃をくらってしまう!
必死すぎてスキルを使うことすら忘れている!!
『……』
「……っておい!!なんで俺にだけ襲いかかってこないんだよ!?泣くぞ!?」
トビウオ魔物D~、はナガレの方を見ると、ふいっと視線を逸らした!
筋肉が美味しそうに見えなかったんだろう!
『『『ギョォギョギョォー!!!!』』』
「「な、なんか増えたぁーーー!!」」
本来ナガレに向かってくるはずだったトビウオ魔物達が一斉にヒナとナナに襲いかかりにきた。
「……俺は?」
2人が襲われている中、ナガレは1人、哀愁を漂わせていた。
「こーなーいーでー!!……『日光』『星纏』!!!!」
『呼びましたかご主じッ……て、えぇぇぇええぇぇ……』
ヒナは日光で陽光の魔狼を呼び出す。
呼び出された陽光の魔狼は呼び出されたことに喜びの声を上げるも、速攻で星纏によりヒナの元へと再び戻らされたので余韻に浸れず不満タラタラだ。
「うぅぅぅ!!『太陽光』!!!!」
スキル太陽光により、ヒナの手元に太陽のエネルギーが収縮される。
そして次の瞬間、トビウオ魔物の元へと一斉に凝縮された太陽の光が放たれる。
それもオーバー気味に。
『『『ギョッ……』』』
彼らはそう言い残して、消えていった。
塵も残さずに。
「……ヒナちゃん、それ強すぎない?」
「……俺もそう思うんだが……?」
「そうなんだ……ってあれ?力が抜けていくぅ~……」
太陽光を打った後、急激に訪れたこの倦怠感。
そう、MP枯渇だ。
このゲームではMPは、残りのMP量によってプレイヤーの体調の良し悪しが変わる。
MPが低いままだと、風邪をひいたような怠さが身体を襲い、MPがマックスだと元気が身体から溢れ出すのだ。
浜辺でスキルチェックした時のMPがきちんと回復しきっていない内に最大MP消費スキルである太陽光を打ったため、急激に体調が悪くなったのだ。
「ヒナちゃん!?」
「やべぇ、沈んでいくぞ!?」
トビウオ魔物に襲われた際に3人はだいぶ離れてしまったため、助けに行こうにも間に合わない。
やばい、と思った、次の瞬間。
「あら♡かわい子ちゃんが溺れているわね♡助けてあげるわん♡」
と。
『ドスの効いた』声で、『まるで女』のような口調をした。
ファンシーな衣装に身を包んだ。
ガチムチのマッチョおじさんが、ヒナを抱えていた。
「……っぷはぁっ……?……妖精……さん?」
「……!?……そうよ♡私は妖精さんよ♡」
「「!?」」
視界がぼやけていたのか、そのマッチョおじさんの顔に施された白いメイクとキラキラした装飾だけを見たヒナは、何故か妖精だと思いこみ。
「キュゥ……」
「ヒナちゃん!?ヒナちゃーん!?」
気絶した。
よくある。
( ˘꒳˘)




