15 よかった……
ゆりゆりしい。
りりぃ……。
( ˘꒳˘)
「……んっ、ここは……?」
急激な光に包まれたと思ったら気がついたら平和な森の入口にいた。
もちろんラビを抱いたまま。
「あっ!!ナナちゃんはどこ!?」
聖域に入った際にナナと離れてしまったことで居場所が分からなくなってしまった。
慌ててナナを探すため一旦辺りを見渡すと、近くの木にナナちゃんが寄りかかって気絶していた。
急いでナナの元に走り、様子を伺う。
「ナナちゃん!!ナナちゃん!!大丈夫!?」
必死になってナナちゃんに呼びかける。
先程聖域で「彼女のことは気絶させただけ」と言っていたがナナのこのような様子を見たのは初めてだったのでテンパってしまい頭からすっぽりと抜ける。
余りのリアルさに、まるでナナが現実で倒れているかのように見えたのだ。
このままナナちゃんが目を覚まさなかったらどうしよう……、と心配するヒナ。
自分に出来ることは何か……。
「とりあえず……」
・ーーーーー・
暗い世界に明かりが段々と灯る。
光が強くなった、と思ったら。
花の甘い香りとともにふにっと柔らかな感触が頭を包んだ。
こっ、この感触は……!?
ナナの意識が覚醒する……!!
かっ!!という擬音が合う程、目をかっぴらいたナナ。
目の前には安堵した様子のヒナがいた。
……いや、目の前と言うより上だろう。
……ということはだ。
このふにっもちっぷるんっ、とした感触は。
「膝まくr……「良かったぁ!!ナナちゃぁん!!このまま起きないのかと思ったのー!!」……おっ、おうぅ……」
叫んだ瞬間ヒナに抱きしめられた。
……ただ気絶してただけなのに得したなぁ、と思うナナであった。
起きたら頭が気持ちいい感触で包まれてて目の前には超絶美少女って。
私はいつからラブコメ主人公になったんだ?
と、しょうもない考えを端っこに追いやって。
「ごめんねヒナ。心配かけてごめん」
と、抱き締め返して頭を撫でた。
これも……親友兼夫(自称)の特権だぜ。
・ーーーーー・
ナナちゃんがようやく目を覚ましてくれた。
冷静になって考えたら、聖域で気絶させておいたと言っていたことに気がついた。
少し恥ずかしかった。
……でも本当に安心した。
「ぐすっ……なっ、ナナちゃん……帰ろぉ?」
「おっ……、うん帰ろう!!」
少しナナちゃんの様子が変だったけど、気絶していたからだろう。
今の時刻はゲーム内だと11時。
現実だと1時間経過して6時である。
そろそろいい時間だからログアウトしよう。
……でも。
「ナナちゃん、今日は一緒に夜ご飯食べよ?」
「えっ、きゅ、急にどうしたの?」
「……いいじゃん」
ナナちゃんともう少しだけ長くいたかった。
「……えっ、可愛いじゃん(ぼそっ)」
こんな気持ちはもう味わいたくない。
ナナちゃんが遠くに行っちゃうのが怖い。
だから少しでも長く一緒にいたかった。
「あっえっ、いっ、いいよぉ?」
「……うん、ありがとう」
今日は一緒に夜ごはん。
共に暖かい食卓を囲み美味しいご飯を食べて。
失う恐怖で凝り固まった何かを溶かしたい。
月明かりと星のきらめきが彼女達の道に光をさして。
目指す場所へ。
・ーーーーー・
<ナナの心情>
うへっ、うへへっ。
……うへへへへへへへへへへへへへへぇ!!!!
やったぜぇやったやったやったぜ!!
陽菜とご飯食べれる!!
陽菜が作るご飯は美味すぎるんよぉ!!
可愛い嫁さん(仮)が作ってくれる飯!!……陽菜には悪いけど気絶してよかった!!
フハハハハッ、見たか、学校の陽菜にこいする男子女子諸君!!
こ れ が 一 般 人 と 親 友 の 違 い じ ゃ あ ! ! ! !
ははははは!!ざまぁwwww
いつも陽菜にアプローチして「ご飯食べよ?」とか「一緒に遊ぼう」とか誘っている欲望丸出しの雄共!!
女の身でありながら陽菜を狙う雌共め!!
私がいる限り、嫁(仮)は渡さんッ!!!!
今日はなにかなぁ~♪
まぁ陽菜が作るやつならなんでもいいけどね!!
たのしみだぁ!!
……と、自分が女であることを棚に上げて。
陽菜大好きウーマンは気分を高揚させてログアウトした。
なんか、シリアス?みたいに書こうとしても。
自分が耐えきれなくなって最後にギャグのようなものを入れてしまう。
……だってシリアスとか苦手ですもん。
後悔はしていない。
( ˘꒳˘)




