9 うさぎと焼き鳥
お腹すきました
( ˘꒳˘)
「なるほど、これで捕まえた動物を連れて歩けるのか……」
未だに角うさぎのことを動物だと思い込んでいるヒナは、テイマーがテイムした動物を連れて歩く方法を学んでいた。
テイマーのスキル、テイムは魔物を捕まえるだけでなく、持ち運びをする時にも使えるという便利なものでもあるのだ。
(ただし魔物に限る)
ヒナは先程までのうさぎとの触れ合いの際のもふもふの感触が忘れられないのか、しきりに手をわきわきさせていた。
「……よし、1匹だけ抱えていこう!!」
先程テイムした角うさぎを手元に召喚してもふる。
もふもふもふもふっ。
……嗚呼、ここが天国か。
にやけそうな顔を抑えつつ、町への帰路を辿る。
道中、様々なプレイヤーが平原で戦っている様子が確認できた。
何やら水色のぷるぷるした丸いやつと戦っていた。
可愛くないなぁ。
このゲーム内は現実での1時間がゲーム内の3時間となっている。
現実で8時間経てばゲーム内では1日経っているという事だ。
この平原がミカヅキ平原と言われている理由が、日が傾き始めてから分かった。
辺りが暗くなると、空に三日月が浮かんでいるのだ。
そしてその三日月は現実の月よりも眩い輝きを放っていて、激しくその存在を主張している。
暗い空と眩く光る月の組み合わせはとても幻想的だった。
うさぎと一緒に帰路に着く。
もふもふ。
・ーーーーー・
門兵に冒険者カードを掲示して、街に入る。
「んー!着いたぁ!!大した距離は歩いてないけど何だか凄く冒険した気分!!」
歩いては無いが、その分大量にはしゃいだから疲れは沢山溜まっているはずだ。
とりあえずうさぎをもふりながら道に従い進んでいく。
するとログイン初日に漂ってきた美味しそうな料理の匂いが向こうの通りから漂ってきた。
「んー、いい匂い!……えーと向こうは、『食べ歩きロード』?分かりやすい名前だね!!」
すると手元からグゥゥ……、と音がした。
うさぎがお腹を空かした音だった。
た べ た そ う に こ ち ら を み て い る !
「……よし、食べよっか!」
「ンキュウ!!」
喜びを表すように耳と小さな丸いしっぽを忙しなく動かす。
食べ歩きロードに入ると先程までとはレベルが違うぐらい、美味しそうな匂いが充満していた。
何を食べようか……。
「美味いよ!!コケッコーの源泉肉で作った焼き鳥だよー!!」
やっぱり食べ歩きと言ったら無難に焼き鳥だね!
「おじさーん!焼き鳥2本くださーい!」
「あいよっ!……って、お嬢ちゃん、テイマーかい?」
「あっ、もしかしてプレイヤーの方ですか?」
「おう!俺は料理人やってんだ!!…それで話を戻すけどよ、よくお嬢ちゃん魔物捕まえられたなぁ」
「そ、そんなに凄いんですか?」
ちなみに前記述した通りナナに言われたテイムできる確率は限りなく低い、という事はすっかり忘れている。
「あったりめぇよ!俺の仲間にもテイマー1人居たけどよぉ、全然テイムできないって言って直ぐにデータを作り直してたぜ!」
「そ、そんなに難しいんですか……」
もう一度言うが、ヒナはテイムが難しい事をすっかり忘れている。
「装備を見るに嬢ちゃんベータテスターじゃないだろ?だからこんな始まって直ぐにテイム出来ているなんてすげぇなぁって思ってよぉ」
「そうなんですね!!」
「俺ァツイてるかもしんねぇなぁ!……よし嬢ちゃん、サービスだ、もう1本持ってきな!!」
「えぇ!?そんな、悪いですよ!!」
そんなことでサービスしてたらキリがないよ!?
「いいからいいから!その代わりと言っちゃァなんだが、今後とも俺の店を贔屓にしてくれよな!!」
「……はい!!ありがとうございます!!」
「いい返事だ!!気に入った!!俺は『ケンゾー』っちゅう料理人だ!フレンドになろうぜ!!」
「あ、はい!!私はヒナと申します!!」
「キュイッ!!」
「ヒナか!!そっちのうさぎも宜しくなぁ!!」
気のいいケンゾーさんという人と知り合った。
とりあえず近くのベンチで座って貰った焼き鳥をうさぎと一緒に食べる。
「はむっ……」
「キュッ……」
ジューシーな肉汁が口いっぱいに広がり、ちょうどいい焼き加減の焼き鳥の香ばしい醤油の香りが口内を駆け回る。
「おいしぃ……!!」
「キュゥ……!!」
今日は満足。
じゃあログアウトしようかな。
……ちなみにゲーム内でご飯を食べても、現実ではお腹は膨れない。
次回あたりに掲示板って言うやつに挑戦したいと思います。
( ˘꒳˘)




