友人から乙女ゲームを借りたが内容がおかしすぎて対応に困る
今、私の目の前には乙女ゲーム狂いの友人から布教用として渡された、
とある会社がエイプリルフールのために4日で作ったと言われている伝説のゲーム
ドキッ!君の味覚に恋する飯学園
~愛が一番のスパイス☆~
という表紙は無駄に豪華だが圧倒的にセンスのない題名のゲームの箱があり、
それを眺めながら先程まで握っていた旧式の携帯ゲームをベットに放り投げた。
(どうしてこうなった…)
数時間前に帰宅した私は友人に渡されたゲームを早速起動し、
言われるがままに料理カテゴリをランダム選択し名前をデフォルトの 南国 南 で決定すると、
「貴女の料理はカレー」という表記と共に物語が始まった。
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「遅刻遅刻~っ!」
あたし、南国 南、16歳!今日から転入する華麗学園に登校してたんだけど、初日から寝坊しちゃって遅刻しそう!
「きゃっ、ごめんなさい!」
急いで走ってたら、曲がり角で知らない男の人にぶつかっちゃった!
あわてて視線をあげると、制服のシャツに朝食に加えていたカレーパンがべったりとこびりついていた。
「あっ…」
血の気の引いた私の目の前で彼はこびりついたカレーをさっと親指ですくい口にいれると、
「これは…脳死堂のカレーパンか。お前、なかなか見る目あるな。」
そう言って走り去っていった。
「少し怖いけど、きれいな銀髪の人だったなぁ…あっ!遅刻しちゃう!」
結局学園には遅刻しちゃったけど、先生も初日だからって許してくれてよかった~!
「おーい南国、自己紹介を頼む」
朝のホームルームが終わり、先生に呼ばれて教壇に上がる。
「南国 南です!よろしくお願いします!」
挨拶をしながらクラスを見渡すと、今朝ぶつかった彼がいた。
「あっ!?」
思わず声をあげると先生が
「なんだ、B田の知りたいか。ちょうどB田の隣の席が南国の席だから何かあったらB田に頼るんだぞ」
そう言ってホームルームを終了してしまった。
「よ、よろしく、B田くん…あの、今朝はごめんね?」
今朝のこと、怒ってないかなぁ…
おずおずとB田くんを見ると、
「なんだB田、転入生と知り合だったのか?」
そう言って緑髪のやんちゃそうな人に覗きこまれた。
「えっ?」
「A田、南国ちゃんがビックリしてるから離れて。僕はC田。よろしくね、南国ちゃん」
茶髪の優しそうな人…C田くん?がB田くんを回収してくれて、
「あっ、」
「A田、落ち着け見苦しい。俺はD田だ、よろしく」
黒髪の厳しそうな人が挨拶をしてくれた。
「う、うん。皆、よろしくね!」
初めてできた友達になんとか挨拶を返してると、
「今朝のことは気にすんな。それよりお前、転入生だったんだな。今日の授業はカレースパイスの独自の調合と調理実習だが、ついてこれそうか?」
「ううん、それが…前の学科がシチュー科だったから、カレーはまだ勉強中で…」
しまった!昨日は教科書を見てる間に寝落ちしちゃったから、全然覚えてないよ~!
授業のことで慌てていると、B田くんが呆れながら
「お前、シチュー科だったのか…じゃあ、俺が簡単なスパイス教えてやるよ」
なんて誘ってくれた。
「いいの!?ありがとう、B田くん!」
「おう。今日中に基礎を仕上げるぞ」
B田くん、見た目は怖いけど優しいな、
なんて考えていると、他の皆まで勉強を手伝うって言ってくれたから嬉しい!
これからの学校生活、楽しみだな!
~昼休み~
「よし、スパイスの基礎はこれで良いだろう」
「やったぁ!ありがとう、B田くん、皆!」
「おう!B田から誉められるなんて南、お前スゴいな!」
「おめでとう南国ちゃん、僕も嬉しいよ」
「落ち着け、見苦しい」
皆のお陰でやっとB田くんのお墨付きがもらえた!
スパイスって種類も多いし覚えるの大変だ~
「スパイスはなんとかなったから、あとは午後からの実習だな。頑張れよ、南国」
「うん!初めてのカレー作り、頑張るね!」
不安だけど、皆が教えてくれたから頑張れる!
~実習後~
やっと実習が終わった~!
スパイスは大丈夫だと思うんだけど、少し水っぽくなっちゃった…でも、味は美味しくできたから、B田くん、喜んでくれるかな…?
作ったカレーは一人分で、余った分は持って帰って良いと先生に言われたので初めてのカレーはお世話になったB田くんに渡したい。
「あっ!B田くん!」
「あぁ、南国。カレーはどうだっ、た…」
タッパーに入れたカレーをB田くんに差し出すと、カレーを見たそのままB田くんは動かなくなってしまった。
「B田くん…?」
なんだか、B田くんの顔が凄く怖くて、悲しそうで。一歩、彼に近付く。
「南国、俺はお前のことを勘違いしていたみたいだ。もう俺に関わるな。」
えっ、なんで!?
「B田く…」
とっさにB田くんの袖をつかもうとし、
「触るな!」
振り払われてしまった。
―バシャッ―
「あっ!」
振り払われた衝撃でタッパーを地面に落としてしまい、カレーが地面に流れてしまった。
「B田くん…」
振り返らずに去っていくB田くんをあたしはただ見つめることしかできなかった…
~放課後の教室~
「おい、南に謝れ!あいつ泣いてたぞ!」
A田が、顔を会わせるなりいきなり胸ぐらを掴んできた。
今日会ったばかりの奴のせいで、どうして俺がここまで言われなくちゃいけないんだ?
「しかたないだろ!だって…あんなしゃばついたカレーなんて食えるわけないだろ!?認められるか!」
思わずA田の胸ぐらを掴み返す。
くそっ、何故だかムシャクシャする…
「B田てめぇ!」
そんな二人にD田がいつものように声をかけた。
「よせ、二人とも見苦しい」
「なんだと!」
「D田の言う通りだ。二人とも手を離しなよ。
でも、B田もデリカシーがなかったよね、せめてスープカレーとして受けとれば…」
「なんだよ…俺は…俺は悪くねぇ!ここは私立華麗学園だぞ!俺はここでカレーを学び、カレーを極めるために血反吐をはいて入学したんだ!お前らだってそうだろ!なのになんであんなぽっと出の女のためにカレーを妥協できるんだ!」
「落ち着け、B田。それにお前らも勘違いすんな。南国はそんなに弱い女じゃねぇ。あいつと、あいつのカレーを信じろ。
俺はあいつがここまで這い上がってくると確信している。」
『D田…』
「B田、お前の気持ちもわかる。だが、少しだけ南国を待ってやれ。」
『D田…』
「俺、間違ってたんだな…待つよ。南国を待ってみる」
『B田…!』
~Bat end~
(スープカレーの水分は八割くらい涙)
深夜のテンションで書きました。
考えるな感じろ