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冒険者の旅  作者: カルタへーナ
国紹介
9/10

『深き極寒の壁』(=ヴァリ・ルーカ・リッヒエテヨ)

『深き極寒の壁』(=ヴァリ・ルーカ・リッヒエテヨ)

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・・・北海アリーべ大陸同盟・・・正式名称【シュテバディッヒ条約同盟】旧竜神国→旧北洋帝国→大陸同盟(作成中)


《大陸同盟圏:条約影響域…盟都経済が強い》

(空域条約都市:盟都・軍都…加盟国の橋渡し役の筈が支配者を気取る) マキス(島)市議会、リェルン(島)北海防衛代表団、ハッグ(島)条約裁定代表団

(同盟国:加盟国…共食いと共存共栄を選び分ける)アモロンティア竜王国、ロンズェ王国、シュヘェーデン王国、フシュキ首長国

(同盟地域:自治的生活圏…国の纏りがあやふやな現地民の連合体)シロキオ山脈生活圏、グルブティカ部族議会、コイ人居住圏、北極部族逗留地区

(同盟経済推進機構:盟都が独自に運営する組織…忠誠心に乏しい傀儡) 極光域開拓有志団:マカット大陸各入殖拠点及び基地と北極圏に進出する探索組織 テルシ同盟:盟都を中心とする商業圏を利用する自律都市向けの協商組織 イバコ灯台組合:本来は内海(同盟圏内の海)に暮らす民への干渉組織だが、利害調整を兼ねた連絡兼交流組織として重宝される

(条約支援国:緩衝地域…北海世界を外部の騒乱から守り抜く壁) エフィツバッキ救王国、ミケル公国、パルゴラニア共同統治区、トーン諸島交易圏

〔盟都なくして同盟なし、しかして同盟なくして盟都なし。北海に君臨する大陸同盟は長きの間、北海世界を培大陸の魔手から守り抜いてきた。だがそれも遠い過去の話になってしまうだろう。既に大陸情勢は見境なく北方を巻き込むまでに巨大化している。今こそが同盟の真価を問われるに相応しい〕



 条約同盟は大陸オスルより北方に位置する大海に面した複数の国家が手を結んで出来た同盟圏である。

 その版図にはオスル北岸の半島と、それを北上した先にある「灰色ダルキュル大地」の一角のグルブティカ半島やその北西の洋上のユーナミス大陸、そしてこれらの中間に位置した海洋の島嶼が含まれる。

 大陸同盟内の国交関係は決して良好というわけではなく、基本的にそれぞれの国の思惑で勝手に動いている。しかし同盟はオスル北方に強大な勢力が健在であることを誇示し、今日に至るまで大陸国家からの介入を防いできた。また、近年では灰色大地より東に位置するトロン人のモルバ帝国への盾として機能している。

 同盟が形作られる過程は民族大移動から始まった。この歴史的大事は自然の摂理である弱肉強食を改めて人間が問われた出来事だった。民族、種族が己の存亡を懸けて生存競争に身を費やしたのだ。

 竜人アーズ達はロメルニス王国以前の世界ではオスルに席巻する最強の種族の1つだった。しかし、その堅固なる肉体が実は温度変化に非常に敏感な点に弱点を見出され、王国成立後より、その数は年々減少することになる。

 古代帝国が栄えた時代には強権的な自治領域を設けられて生存を許されていた。彼等が言うところの、決して隷属ではなくヒトからの献上に甘えていた時期ということか。しかし、如何に強靱な巨体と暴力的な魔力放出を持っていたとしても民族大移動の波の中では全くもって無意味であった。

 幸運なことに逃走先として洋上を選択し、オスルから逃れることができた。その中で、這々の体で北上した勢力は北洋である火山島を発見する。季節風の影響で年中あらゆる種類の竜が滞在しているその島は、自身らが古代龍の血を引いた神話を持つ竜人にとってこれ以上にない楽園だったのだろう。

 古来から多くの種族の崇拝を集めてきた龍の末裔とされて、尚且つそれを誇りとする彼等からすれば桃源郷以外の何物でもなかった。そして命懸けで大陸を逃れ、危険な空域と海域を潜り抜けた先にあった新天地に自分たち以外の占有者が龍達と共存していたことなど認められるわけがなかった。移住開始と共に現地民を島の隅へと追払い(それ以外の島嶼部へも散った)、火山島を「再臨エノスウトリア島」と名付けた彼等は自らの王国を建国する。こうして有り余る力を使って竜人達は混乱の大陸と決別し、島での繁栄を謳歌する。

 だが、時に安定した繁栄は要らぬ欲を掻き立てるものだ。竜人達は自らを忘れたであろう大陸に再び返り咲くことを目論み始めた。帝国崩壊の200年後を皮斬りに竜人は自らの集団を『ユシテル二ア竜神国』と名乗ってオスル北部の海へと進出した。即ち、北海に点在する共同体への攻撃であった。上空を自由自在に飛行可能な彼等にあらゆる共同体が屈し、一方的に搾取された。

 しかし、竜神国は建国当初はこれら共同体を占領するまでの国力が存在していなかった。この思い出したかのように襲いかかる脅威が切っ掛けとなり北海周辺の民の拡散が始まる。複数の部族が入り乱れ、或いは種族や民族が乱立し魔境(まだ当時は未開拓)とも接する民達がどこから来るか分からない敵から生き延びるには速やかに土地を捨てて逃げる他術はなかった。

 漂流民となった彼等の移動により、現在のユーナミス大陸が発見されるなどの快挙がなされたがそれ以上の不幸が重なった。漂流民で南を目指した者達はオスル北岸の住民に皆殺しにされた。カサマント島へとたどり着いた者達も当時起こっていた暗黒時代の闇に飲まれて消えた。出来ることはユーナミス大陸やその他の無人島への移住であった。

 それは、残念なことに一時の平和に過ぎず、彼等を追跡した竜神国の事実上の版図を広げたのみだった。海を越えてもやってくる彼等に絶望した漂流民(北海周辺の民も含む)は手足もだせない彼等より、のうのうと暮らしを営んでいる大陸人へと憎悪が向いたのにも仕方なかった。それに竜人達の搾取で飢饉が発生して滅ぶか否かの瀬戸際だった。「北からの贈り物」と後に呼称される大陸への襲撃はこうして始まった。

 この副次的な民族移動は安定しかけていたオスルに大打撃を与えた。同時に大陸人が北海の世界を認めるきっかけを作った。だが今回の遠征の目的は移住であった。大陸北部を始めとし、内陸部や大陸を迂回して南方大陸圏へ進出した彼等は定住を実行する。

 「船出の宴」と希望を込めて名付けられた逃避行は僅か100年程で終了した。彼等の策源地である北海民の共同体全てが竜神国に実効支配されたからである。手始めに、竜人達は広大な版図を封鎖した。竜神国の支配を恒久的にするために必要な処置を行なったのだ。北海民達は苦渋の決断をする羽目となった。家畜化を免れる代わりに自らが竜神国版図拡大の先兵となることを誓ったのでる。

 これは竜人アーズの絶対数が少く、被支配民総数を大きく下回っている危険性を排除するのに役立った。今日の繁栄は危険な魔境である海と空を行き来する浮遊島と呼ばれる人工の島の存在無くして語れない。4機作られたそれは、竜人らには権勢の証であり誇りの象徴でもあった。だが4機では到底領域の確保には足りなかったからだ。

 逃げ延びることに成功した北海民による情報で、ある程度の実状を把握していた大陸諸国は何もしてこない内は手を出さないと決めていた。定住を巡っての問題が各地で火種を燻らせていたし、利害と追従する思惑の交錯も団結を阻んでいた。

 竜人達の先制攻撃は見事に成功した。浮遊島2隻がオスルの空を縦断して現在のモントル王国領土に当時存在していた3つの国々の政治中枢を一撃で破壊した。これにより彼の地は事実上の無秩序状態へと一瞬で変貌した。それと並行して、北海民の大船団(奪った土地の領有を認められた民達)が大陸各地に襲来した。同胞を殺した大陸オスルの大地を自らのものとするために。

 これらの蛮行は竜人達の思惑通り大陸全域に広まった。恐怖で大陸諸国に亀裂が入ると踏んでいたのだ。しかしながら、共通の敵が種族を超えての団結を促すのはオテオス・エルサゴ以来の大陸の伝統だった。そして、いくつのかの狡猾な国家はこの事実を利用して国内をまとめ上げに成功した。大陸勢力の反撃体制が着々と整っていく中、竜神国も座視していただけではない。

 だが、未だに彼等は当初の空域で足止めを余儀なくされていた。3国の生き残りの諸侯達がゲリラ戦を展開していたからである。竜人達が国の中枢を破壊したことで国家を解体したはいいが小国同士が乱立する状態にしてしまったのだ。周辺国もここぞとばかりに彼等を支援したし、何よりも大陸各地の魔導結社の後押しもあった。

 そんな彼等にとって自らの有史以来初の異種族戦争である。それもヒトなどよりも遙かに優れた性能を持つ、神話の時代の血を引く竜人アーズ達相手の戦争だ。

 こうして嘗てのロメルニス中核州たる大地はずたずたに引き裂かれていった。ただ、それでも竜人達は粘り強く耐えて、泥沼の戦況を打開することに成功したのだ。いよいよ次なる目標へ本腰で攻められると思ったが、その前に大同盟軍が立ちふさがった。

 反撃準備を滞りなく整えた各国はかつての名将率いる軍を想い起こさせるが如く竜人達と奮戦した。1年と2ヶ月に及ぶ諸侯達のゲリラ戦は無駄ではなく十分に対抗策を編み出すのに役に立った。竜人達はこの戦いに敗退する。それどころか、浮遊島一隻が撃墜され、もう一隻が中破という大損害を被る。各地に押しかけていた北海民の軍勢は撤退が許されず、降伏か死を受け入れる他かなかった。

 これで数が少ない同胞をさらに減らしてしまった。ヒト如きには我らの力の片鱗を見せつけるだけで十分屈服可能であると侮った彼等の負けであった。竜神国の本土は事実を知ると、ヒトの大同盟に対して急使を向かわせあくまでも停戦の形で軍を引かせる。猶予は5年間だが、どの国も時間を無駄にはしなかった。

 この停戦条約を「カンヌ協定」と定めたが、この裏で密かに魔導結社に対しての分裂工作の実行が交わされていた。浮遊島を撃墜した功績は彼等の尽力が大きかった上に、竜人達との戦闘や彼等が使役する龍、魔物、魔導生物、変異兵(占領地の人々の成れの果て)との戦闘に至ってはやはり彼等の魔導が有効だった。始めて各国は、本格的に彼等を取り込む手段を模索した。

 各国は(宮廷魔導師達が中心となって)魔導結社に対して墜落した浮遊島を餌に罠をしかける。各国家に対して個別に機関が接触して浮遊島の解析の独占を要求していたのだ。これに対して各国は公開合同の形で実施する決定を下した。各結社同士の軋轢を訴えて反対するも最終的に彼等はこの案を飲んでしまった。そうして、自らを滅ぼす切っ掛けを植え付けられた。この時を境に国家主導の魔導研究が活性化され、魔導結社達の影響力は著しく衰退する。

 敵の技術を着実に奪う一方で、敵地に対しての入念な偵察が行われた。浮遊島が撃墜され数が大幅に減った竜人は国内の混乱で手一杯だと踏んで元北海民を筆頭に構成された専門の偵察部隊が派遣された。彼等の任務は敵地への潜入と、調査、並びに被征服民の組織化と訓練、そして拠点の構築だ。

 対して竜人達は最早進退窮まった。敗北の予見など全くなかったので打てたはずの有効な策などを打てずにいた。そこに漬け込まれて大同盟の犬どもが版図の中で好き勝手行動しているのは承知だったが何も出来なかった。一応5年間の間に新型の浮遊島を2隻建造して他の3隻を修理、改修し、被征服民を兵士にすべく訓練した。

 これが不味かった。固有の魔導を外部に露出させたことで被征服民達も学び、内通者を通して偵察部隊から大同盟にも情報が流れた。躍起になって結社が解析に走った。そして5年後、運命の時が近づく。

 竜人は全戦力を投入した。本拠の「エノスウトリア島」に設置した転移魔導陣を応用し、補給を迅速に行う体制を整え、万が一の際は浮遊島を囮にし、大同盟軍のど真ん中で空間爆破を引き起こし、敵の戦意を挫こうと試みるつもりだった。

 決戦のために本土に一瞬の空白が生じた。その間隙を見事に突いて蜂起が起こった。時間との勝負だった。竜人は敗れた。本島での魔導陣が破壊され退路を断たれて孤立し、狂戦士と化して死力を尽くしたが主力を無力化されて無駄な抵抗として大同盟には映った。

 ヒトは浮遊島を真面目に攻略するのでなく、それ自体の存在価値をなくすことを主軸に戦略を練っていた。新型の魔導砲、超大型魔導陣、最新の航空戦力が惜しげなく投入され島の飛行機能を麻痺させたのだ。こうして為す術なく圧殺された竜人達は直々に戦場に赴いた【“竜王”ジーサンクト・シュトル・サレハンドロ2世】が魔導砲の水平射撃で爆殺されると程なくして戦意を喪失した。

 後の世で“大空戦争”と呼ばれる長い戦争は幕を閉じた。北洋に聳え立つ竜神国も無事では済まなかった。大同盟によって力をつけた元々の原住民達の末裔が竜人達を襲い始めたからだ。再臨の島はひどい内戦状態に陥った。嘗ての栄華を再起できるなど夢の又夢となった。

 竜神国から各共同体との連合的な帝政へ移行して国名が北洋帝国と変わったのもこの時だった。しかし、ユシテル二アは政治への参画を形だけ認められているに過ぎず、主導権は再建されたオスルより北方の各共同体が握っていた。彼等は竜人アーズを許せなかったが、結局自身らも追い詰められたとはいえ、オスル各地で略奪行を楽しんだ過去があり、大陸民からは悪魔呼ばわりされ続けている。

 つまり竜人アーズと北海民達は両者ともにオスル勢力から毛嫌いされていた。戦災で引き裂かれた両者は復興が進むにつれて帝政がオスルの傀儡統治であることに気づいた。竜人達は勿論、共同体の有力者達もオスルの勢力に頭が上がらなかったのだ。そして既にカサマント帝国をはじめとする野心的な国は、勢力範囲を広げる領土として目をつけていた。このままでは北海はオスルの民達の草刈り場となる。

 しかし、復興が進むにつれ逆に各共同体の主体性が肥大して(オスルで始まった結社争奪を逃れた魔導師達が移り住み始めたのも大きい)帝政下からの分離の兆しを見せ始めたのだ。最終的に帝政が行われたのは僅か20年足らずで【ビヨヘェルの誓い】の布告後、16の国と幾つかの共同体に解散した。とはいえ、個の力では今後のオスルの勢力達には太刀打ちできないため、偶に殺し合いながらも大陸同盟という形で緩やかな団結を維持して現在へと至る。

 大戦で畏怖と憎悪の的となった浮遊島は、現在3つが健在であり何れも最新の魔導技術が惜しげ無くつぎ込まれている。1つは独立した経済都市として発展しているが、残りは研究施設を兼ねた移動要塞として運用されている。これら浮遊島は定期空路に沿って生き延びた国々の間を回っており、現在においても危険な魔境である海を無事に横断できる貴重な手段でありパイプラインであるとして重宝されている。これに触発されて飛空挺に関連する産業や技術の発展が著しい時期もあったが、統一連盟がいずれは追い越すだろうと予想されている。

 独立した経済都市が存在する浮遊島は、北海大陸同盟の“盟都”として機能している。動く大商業都市圏のような扱いで、言語も生活も、容姿も種族さえも違い、尚且つ海を隔てた地域同士が同盟を結ばなくてはならなかったので、分裂の危機を防ぐために考案された。しかし近年、同盟経済の潤滑油であるはずの浮遊島は、富の蓄積庫として機能し、加盟国を見下す傾向にある。通常同盟領土の防衛以外は中立を保つはずである要塞島も盟都の利益のためにその力を利用することが増え始めている。加盟国は同盟機能の衰退に遭遇し、国ごとに対抗策を講じる構えだ。

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