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清貧に生きる野良神官は魔物退治をしながらお金を稼ぐ夢を見る  作者: 兎野羽地郎
第一部 第ニ章

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パウルの作戦①

「準備はいいな。行くぞ!」


 洞窟の三差路に立ったパウルさんが後ろを振り返った。

 皆、一斉に頷く。


 パウルさんの後ろではウィリアムス神官がセンス・ライビングを発動している。

 そして、アンガスさん以下猟師が三名だ。その後ろにはマックバーンさんとマルセロさんが続く。そして、ベアトリクスに、なぜか私。最後尾はベイオウルフだ。


 必殺パウル・フォーメーション。らしい。

 ネーミングはともかく、そして後衛はともかく、前衛は猛者が揃っている。

 パウルさんは、うむ、と気合いをいれると右手を前に突き出した。


「クランプ・サンド!」


 壁の土が掘り出されて私達がクモと戦った右側の洞窟へ飛んで行く。

 左側では、衛兵隊三名と猟師二名が、左側の洞窟からの不意打ちに備えている。最悪センス・ライビングでは探知出来ないレヴァナントが出てくるかもしれないからだ。


 どんどん、堀り進むパウルさんの後ろでは、左右にぶれない様にウィリアムス神官がパウルさんの向きを微調整している。


 目標は敵本隊。直通路を掘って一気に攻略してしまおう、というのがパウルさんの作戦だ。

 魔法が発動している間は、魔力の力場が出来上がり落盤の可能性も少ないらしい。


 確かに、待ち伏せされたり、天井を崩されたりと消耗しながら進むよりは遥かに安全だが、いきなり敵本隊に突入するとは大胆にもほどがある。

 しかも、掘った土を通路に放り投げた後は、猟師の皆さんが、えいほ、えいほ、と土を通路の奥に運んでいる。

 右方向からの敵の進撃を阻むためとはいえ、これはもう魔物退治ではなく土木工事だ。


 色々と突っ込みたいたいが、流石は上級魔法使い。ウィリアムス神官のサポートの元、前に進みながらどんどん穴を掘っている。

 掘っている直通路は高さは大人が手を上げて天井に届く程度。幅は両手を広げて左右の壁に届く程度。つまり、正面からの攻撃さえ防いでおけば防御でき、かつ弓が主体のこちらの攻撃に丁度良い大きさだ。


「皆さん、敵本隊が近いですよ!」


 ウィリアムス神官が穴の奥から声を上げた。

 アンガスさん率いる猟師が立ち上がる。

 三人とも火矢を弓につがえている。


「行きますよ」


 マルセロさんが声を掛けてきた。

 ニコニコしているのは私達の緊張をほぐそうとしてくれているのだろうか。

 いよいよ突撃だ。自然と唾を飲む。

 ここからは時間が勝負の速攻戦になる。


「抜けたぞ!」


 パウルさんの声が聞こえる。

 

 アンガスさん達が一斉に火矢を射る。一気に三射、合計九本の火矢だ。

 先にいるパウルさんとウィリアムス神官は地面にはいつくばっているに違いない。そうでなければ同士討ちになる。


 火矢を放ち終わったところで、今度はアンガスさん達が地面にへばりついて後続の視界を開ける。穴の先では火矢の炎が揺れるのが見えている。思ったよりも遠い……。


「テレポート!」


 マルセロさんが、前にいるマックバーンさんの肩を掴んだと思ったら姿を消した。

 火矢めがけて瞬間移動した。そうしておいて、次の瞬間一人で元に戻ってきた。


 さらに、今度は詠唱を終えて両手を上に突き出した格好で待機しているベアトリクスを連れて掻き消えた。

 穴の奥では火球が生まれ、そして分裂して四方に飛んで行った。一気に穴の奥が明るくなったのが遠目にも分かる。


 マルセロさんが、ぐったりしたベアトリクスを連れて帰ってきた。

 普段は火球一個を出して飛ばすだけだ。それを分裂させて灯りになるように拡散した。かなり消耗したのだろう。メイベルさんとロウリさんが左右から支えるように穴の外に連れ出した。

 



「行くぞ!」


 左側で待機していた衛兵達が走りだした。アンガスさん達三人の猟師が弓をつがえたままで後に続く。私も走った。


 分岐点の確保は土運びをしていた猟師に任せている。穴の外ではメイベルさん達が見張っている。中ではマックバーンさんが一人で奮戦しているはずだ。ここは急がなければならない。怪我をしているなら回復させなければならない。マルセロさんはテレポートを何度も使っているし、今後も使うだろう。

 私が回復担当だ。


 暗い穴の中を炎目指して懸命に走った。

 緊張感からか息が上がる。目的の決戦場は思ったよりも遠かった。




 なんとか、穴の縁に辿りつく。どうやら今のところ怪我人はいない。

 火矢とベアトリクスの魔法の炎で照らされたゴブリンの棲み処は、随分と広くて高さも十分にある。ちょっとした教会と同じくらいだ。

 百匹からの巣がこんなにも大きいとは思わなかった。


 二階建てくらいの高い壁の途中にはいくつも穴が空いていて、顔を出したゴブリン達がなにやら叫んでいる。矢を放ったり、石やら何やらを投げつけたりしているが、ことごとく宙ではじき返されていた。

 掘った穴の出口の手前で屈んでいるウィリアムス神官の傍にいって同じように屈んだ。その前にベイオウルフが立ちはだかり私達を守ってくれる。


 随分と背の低い竜巻がゴブリンを追い回しているのは、パウルさんの魔法だろう。

 竜巻の対角線では、マックバーンさんがマルセロさんから借りた白銀のナイフと普通の短剣を両手で使い、回転するように次々とゴブリンを屠っていた。動きが早いうえに薄暗いので良く見えないがもう一つ竜巻があるようなものだ。 

 衛兵隊が、私達を護るように楯をかざしてゴブリンが飛び込んでくるのを防いでは、剣で刺し殺している。

 アンガスさん達が矢を放ってゴブリン達を射殺している。


 ウィリアムス神官は矢除けの風魔法を頭上に巡らせて、壁の上にある穴から飛んでくる矢やら投石やらを防いでいる。そうしながらも、大声で陰に隠れたゴブリンの位置を皆に教えている。

 パウルさんが頭上の矢除けの魔法を壊さない様に小さい竜巻を動かすと、隠れていたゴブリンが逃げ惑った。

 マックバーンさんは竜巻の対角線に移動し、アンガスさん達は竜巻の後方の壁の穴にいるゴブリンを狙って弓を放っている。矢除けの魔法はマックバーンさんの頭上を護るようにずらしているようだ。


 もはや圧倒的に押しまくっている。


 穴の奥では、一人の男が剣を構えて何やら大声を上げている。どうやら人間らしい。恐らくボスだろう。


 粗方のゴブリンが片付いたと見ると、マックバーンさんがその男に向かっていった。ウィリアムス神官の献言で、人は出来るだけ殺さない様に、と方針が決まっている。捕縛する気だ。




 男は正面上段に剣を構えている。

 マックバーンさんが近づくと、一歩踏み込み剣を左右交互に振り下ろした。

 マックバーンさんが後ずさると相手も一歩下がり、踏み込むと剣を振ってくる。それを繰り返している。


 包丁以外の刃物を持ったことが無い私から見ても素人の一つ覚えの剣の使い方だ。

 簡単にやっつけられそうだが、これが意外に手強いのかマックバーンさんが近づけない。そんなに長い剣ではないので息も続きそうだ。


 後でベイオウルフに聞いたのだが、剣速自体はかなりのものだったらしい。

 壁の窪みを背にしているので囲むことも出来ない。狭い洞窟の中での戦闘とあって、剣のみを持ち込んだのも響いた。


 幸いにも相手が突っ込んでこない。

 ジリジリと距離をおいて囲み始めた。これは持久戦になって相手の息が上がるのを待つしかないのか……。


 業を煮やしたように、ベイオウルフがパウルさんを呼び、何か話をしている。次いで衛兵隊の一人を呼ぶと、楯を貸してくれ、と言っている。何をするのだろうか……。


「ウィンド・バリア!」


 ケリをつけたのはパウルさんの魔法だった。

 空気の壁を開放する威力で、ベイオウルフを遠距離から一気に跳躍させた。

 両手に楯を持ったベイオウルフは、そのまま相手に体当たりよろしく突っ込んで、そのままぶち当たった。


 突貫……と言って良いのかどうか……。かなりの距離を飛んで行ったようだが……。


 弾き飛ばされた男は、激しく後ろの壁に叩きつけられ、そのまま地面に倒れ伏して動かなくなった。打ち所が悪かったかもしれない。そのままベイオウルフが抑え込む。


 ケリはついたようだが無茶苦茶だ。

 ベイオウルフが変にパウルさんに影響されていないか心配になってくる。

 しかし、それはそれでボスを倒した。ゴブリン達は逃げていくだろう。

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