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清貧に生きる野良神官は魔物退治をしながらお金を稼ぐ夢を見る  作者: 兎野羽地郎
第二部 第五章

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第十三話 砦のネズミ退治

 ロバーツ様が引き受けて来たネズミ退治の場所は、メディオランドにあるセルトリア国境近くの砦だった。

 地下に沢山湧いたらしい。


「ロバーツ様、グラディス様、わざわざセルトリアのネズミ退治屋をお連れ頂いて、なんとお礼を申して良いやら」


 砦の守備隊長さんが、平身低頭している。

 それはそうだろう、片や隣国の王族、片や自国のお姫様である。ネズミ退治の相談が出来るような相手では無い。

 国境の関所も、お二人の知り合いというだけで簡単に通過した。


「この者達は、普段中の原でネズミ退治をやっている。

 ネズミ退治屋と言っても、昨年の秋は俺も参加した作戦でフェンリルやサイクロプス率いる魔王軍を撃破した強者だぞ」

「それは、それは、遠いところを良くぞ来てくださった。誠にかたじけない」


 私達にまで頭を下げる。

 隊長さんはもちろんお貴族様だ。

 スティーブンスさんという年配の方で、砦の周辺の領地を治めているらしい。跡継ぎの息子さんたちはメディオランド王の近衛に選ばれて王都で暮らしているそうだ。

 日頃から、ロバーツ様が足しげく通って、将も兵もなく酒盛りをしているせいで、私達の様な怪しげな者達にもちゃんと応対してくれる。


「まずは報酬について話しておきましょうか」


 早速ベアトリクスが交渉を開始した。


「左様ですな。しかし、ネズミ退治の相場というものを知らんのです」

「セルトリアなら一匹銅貨十枚よ」


 セルトリアの通貨はメディオランドの通貨と同じだ。同じ素材を使い、等しい重量にしているらしい。 そうする事によって両国の貿易の安定を図っているようだ。なので、メディオランドに行っても、セルトリアで作った貨幣が普通に使える。因みに、刻印は同じだ。


「銅貨十枚ですか。ならば、百匹として金貨二枚半といったところですな。それで構いませんぞ」

「百匹!」


 思わず皆で声を上げる。今までの記録は二十五匹だ。

 それも、一回で当るのは五、六匹だったりする。


「百匹とは随分と増やしましたな」


 流石のパウルさんも渋い顔をしている。


「いや、お恥ずかしい」


 どうやら、昨秋の戦争中に砦を空にしていて地下の食料庫に侵入されたらしい。籠城用の保存食糧を軒並みやられた上に強固な巣を作られてしまい、今や昼間に地上に出てくるほど図々しくなっているようだ。


「戦で立てこもるのなら兎も角も、普段は数人の兵士が交代で留守番をしているだけでしてな。ネズミ相手に兵を招集するわけにも行かず、困り果てておりました」

「しかし、百匹ともなると最早合戦ですな」


 腕を組んで考えている。


「どうする、パウル?」


 ロバーツ様がニヤついている。既に高みの見物を決め込む事を宣言している。


「まずは、この砦の図面……簡単なものでよろしい。大まかな通路や地下道の配置を教えていただけませんか」

「砦の図面ですか…」


 軍事機密だ。他国の者には見せたくないだろう。


「スティーブンス卿、御見せ下さい。この者達の事は私が保証します」


 グラディス様の後ろにはお付きの人四人が控えている。四人共名の知れた騎士様らしい。スティーブンスさんが受ける圧は生半可では無いのだろう。結局は出て来た。




 砦はコウモリ退治をやった所と同じで、丘の上に柵を巡らしたもので、地下には色々な部屋と通路があった。水道は無く雨水を貯める貯水池と井戸だけだ。下水は排水路に縦一直線に繋がっていて、真ん中に一本ある排水路が丘を取り囲む堀に繋がっているらしい。

 堀は川に繋げてあるが、お通じ系と一緒にしてあり、流れも悪く嫌な臭いがしている。


「もう少し、衛生的になれないのかしら」


 中の原で二回分のネズミ退治に参加したメアリーが苦情を言っている。ここに比べたら中の原の下水なんか綺麗な物だ。

 既にグラディス様にはノルマの三枚に一枚加えて服のデザインを提出しているのだが、ネズミ退治も参加しないといけない。


「そう言うな。これも防衛戦術のうちだ」

「防衛戦術?」

「そうだ、敵はこの堀に浸かって渡って来ねばならん。さぞかし戦意を喪失するだろうて。病気になるかも知れんしな」

「野蛮ね」

「当り前だ。戦争はすべからく野蛮なものだぞ」


 露骨に嫌そうな顔をするメアリーに、パウルさんが解説をしている。

 そう言えば、中の原の奥の手も似たような物だったはずだ。


 まあ、文句を言っても仕方が無い。

 作戦を考えなければならない。


「いつもの手だ。餌でおびき出そう。ある程度数を減らしたら本拠地に乗り込もうか。スティーブンス殿、申し訳ないが残飯の類を集めておいてくれ。ネズミの餌にする。それから、今ある食料は一旦砦の外に運びだして貰おうか。なに、二、三日の間だ」

「分かりました。他には何か?」

「そうだな、何人か砦の補修の出来る者を貸してくれ」


 どうやら、方針が決まったようだ。食料を移すという事は兵糧攻めにでもするのだろうか?


「さて、さっそく行くぞ」


 もう歩き出した。




 パウルさんの最初の狙いは食料を保管してある場所だった。元々の食料庫はネズミに占拠されたので、新しく作ったらしい。

 入ると早速ネズミがいる。しかも図太くなっているようで、逃げもしない。キイキイと歯を剥いて威嚇して来る始末だ。


 まずは、皆で松明をかざしネズミが襲ってこないようにする。


「ここは、ホーリーだけで撃退してくれ」


 食料がまだ沢山ある。炎や氷は使えない。言われるがままに、ホーリーを連発してネズミを退治した。


「では、食料の運び出しをお願いしたい」


 運び出す間にもネズミが何匹か出て来たが、全部ホーリーで倒した。全部で八匹だ。


「思った通りだな」


 壁のあちこちに穴が空いている。どうやら、ネズミたちは砦の地下に自分達専用の通路を作り上げた様だ。


「なんと、小癪な。この穴を通って食料を食い荒らしておったのだな」

「まずはこの穴を塞ぎましょうか」


 土を運んできて、穴に放り込み、石で穴を塞いで補修用のモルタルで塗り込める。


「では、次に行こうか」


 そうやって、次々と部屋のなかのものを動かして、見つけた穴を片っ端から塞いでいった。

 食料の無い部屋なら、他の魔法も使える。松明で足止めしておいて、ベアトリクスが雷の魔法を使い、リュドミラが炎の魔法を使って退治した。


 退治したネズミが二十匹を超えて来た頃には、地下の部屋は幾つかのネズミに占拠された所を残して処理が完了した。




 夜になって、スティーブンスさんの部屋に行く。


「仕込みは終わりましたかな?」

「はい。言われたように、集めた残飯は配管の一番端から全部排水路に落としておきました。一番奥になりますから、我らが急襲すると集まったネズミは逃げ場を失うでしょう」


 餌にする残飯は、桶で何杯もの量にもなったらしい。周辺の村からも傷んだ食材を含めて、丸一日かけて集めてきたようだ。


「では、早速中に入りましょうか」

「ははっ。こちらになります」


 床石を幾つか剥がすと地下への降り口が現れた。


「すっごい。本当にこんな秘密の抜け道があるんだ」

「絶対に他所で喋っちゃ駄目よ。軍事機密なんだから」

「ええー! こんな凄い体験誰にも話せないなんて、つまらないじゃない」


 メアリーとベアトリクスの会話を聞いて、スティーブンスさんがため息をつく。


「城や砦の機密をべらべら喋る様な者は、とてもメディオランド王の城には連れて行けんな。もう一人で帰るか?」

「はい。絶対に喋りません。お墓まで持っていきます」


 流石はロバーツ様だ。メアリーの背筋がピンと伸びた。




 排水溝に入ると、人間が立って歩ける程度の高さがあった。


「上の方になります」


 スロープになっている排水溝を登って行くようだ。


 右手を高く上げ、ライトの光をかざしながらスロープを上って行く。パウルさん、ベアトリクスとリュドミラは既に詠唱を終えていて、いつでも魔法を使えるように準備している。


「そろそろですな」


 どうやら目的地に来たようだ。


「行きますよ!」


 一気に光量を上げると、とてもネズミとは思えないような大きな魔物が闇に浮かび上がった。


「なんだ、あれは?」

「グラディス!」

「はい!」


 隊長が驚くなか、ロバーツ様とグラディス様が剣を抜く。二人は白銀の剣を持っている。お付きの人達も皆を護る様に白銀の剣を抜くと前に出た。


「ジャンヌ! 最大光量じゃ。時間を稼げ!」

「はい!」


 両手を突き出して目一杯にする。

 ベアトリクスが炎を分裂させて、魔物と私達の間に縦に輪を描く様に火球を並べた。その間をリュドミラが炎を連発させる。慣れたもので近づけないように足元を狙って、徐々に壁際に追い詰めている。


 ネズミなのか? 

 ライトの光を正面から浴びた魔物は、苦しそうに顔を背けてキイキイ鳴いている。足元には普通の大きさのネズミが群れを成していた。

 残飯は通路の隅に落とされたので、ネズミも隅っこに固まっている。デカいのは兎も角も、他の奴はまとめてやっつけられるかもしれない。


「メアリー! 油を投げて!」


 ウォーターしか使えないメアリーには道具掛かりよろしく物入袋を持たせてあったのだが、立ちすくんだまま固まってしまっている。


「メアリー! しっかりしなさい! あなたが要なのですよ」


 グラディス様に叱咤されたメアリーが、ようやく気を取り直した。袋に手を突っ込んで、油の瓶をネズミに向かって投げつけた。

 しかし、上手く瓶が割れない。


「リュドミラ! お願い!」


 リュドミラが地面に転がった油の瓶にファイアー・ボールをぶつけると、油に火が……着かない?

 火が着いたのは付いたのだが、派手に油が燃えるのではなく、火花がバチバチ飛んでいる。


 いかん、あれは……


「ウィンド・バリア!」


 パウルさんの魔法が完成し、空気の壁で火花もろともネズミを壁に押し込んだと思ったら、穴の奥から轟音が鳴り響いた。


 マチルダが持たせてくれた火薬が爆発し、ネズミ達が吹っ飛ばされている。

 流石にデカいのは生きているようだが、仲間の返り血を浴びたのか、全身血塗れになっている。


「ロバーツ様、御覧じろ! これがマルセロ商会の戦い方ですぞ!」


 いや、絶対違うから!


「メアリー! もう一個! やっちゃいな!」

「わ、わかったわ」


 パウルさんがウィンド・バリアを一旦解除し、びっくりしてひっくり返っていたメアリーが、立ち上がって、もう一個と、今度は火打石で火を付けて投げつけたのが足元で爆発すると、流石のデカブツもぶっ倒れて動かなくなった。




「これは一体、どう言う事じゃ……」


 スティーブンスさんが呆然とデカブツの死骸を見ている。

 念の為、とパウルさんがナイフで首を掻き切っている。


「ちょっとした工夫ですな。詳しくは申せませんが」


 手元がブラッディになったパウルさんが苦しい言い訳をしている。


「お前達はいつもこんな風にネズミ退治をやっているのか?」


 ロバーツ様が呆れている。もちろん、火薬を使った事は知っているだろう。


「いえ、たまたまです」

「メアリーの咄嗟の機転じゃな。よくやった」

「いえ、それほどでも……」


 もじもじしている。

 どう考えても投げる物が違うだろう。


 まあ、しかし、結果オーライだ。無事にデカブツも退治できたし、普通のネズミも一網打尽だ。


 それにしても、このお化けは一体……。


「共食いかも知れんな」


 パウルさんによると、動物は数が増えすぎて餌が少なくなると共食いをするらしい。ネズミにしても同じだろう、と言っている。


「恐らく、保存食糧を食って数を増やしたはいいが、食いつくしてしまってネズミ同士食いあっとるうちに、一番強いのがここまでデカくなったんだろうな」

「こんなに大きくなるの? 猪くらいあるわよ」

「猪なら食いでがあるが、こいつは危なくて食えんな」


 絶対に病気になるな。食べようとするのはヴィルぐらいだ。


「しかし、ネズミがバラバラになって何匹倒したか分からんな」


 数が分からない場合はノーカウントになってしまう。皆で尻尾を集めたのだが、どう考えても少ない。


「まともなのは十五本かな。お化けネズミも一匹分でいいのよね。ところで、あのお化けの死体はどうしようか」


 流石のベアトリクスも困っている。


「これ、使う?」


 メアリーが物入袋から、今更のように油の瓶を出してきた。




 巣に残っていたネズミ達は普通の奴ばっかりだった。大半は地下に落とした残飯を漁りに行ったようで、そう苦労せず退治出来た。床にはでっかい穴が空いていたが、パウルさんが地下まで垂らしたロープを伝わって進んで行って安全を確認した後で、土とモルタルで埋めてしまう事になった。

 倒したネズミ……十分長い尻尾を持った死体を確認できたネズミは、化けネズミを含めて四十匹足らずだ

ったのだが、スティーブンスさんが、最初に言った百匹分で結構、と言い張って聞かない。

 結局、年配者の言う事を聞いておけ、とロバーツ様に言われて百匹分を貰う事にした。




 翌朝、お弔いをあげた後で、油を使ってネズミを燃やす。

 普段使っている瓶では到底足りないので、砦に蓄えてある油やら木材やらを使って盛大に燃やした。


「火事になりませんか?」

「石造りじゃから大丈夫だろう。なにかあったらメアリーに水の魔法で消して貰おう」


 幸いなことに配管が煙突の代わりになっているみたいで、地下水路で煙に巻かれる事はない。上は大変な事になっているかも知れないが、貯水池の周囲に延焼に備えて水を入れた桶を並べて人も配置した。多分大丈夫だろう。


「下に降りるとどうなるの?」

「堀につながっておる」


 皆で気付かないフリをしていたのだが、かなり臭う。


「あれ? だったら、そっちから入ってきたらワザワザ機密をばらさなくても良かったんじゃないの?」

「堀には随分と深い水中で繋がっておってな、あの衛生的では無い水の中を潜らなくてはここへはたどり着けんのだ」


 つまり、負け戦になると防衛戦術が我が身に降りかかってくるわけか。


「そうまでして逃げないといけないの?」

「当り前だ。死んでどうする」

「そうじゃなくて、降伏しちゃえばいいじゃない」

「降伏など簡単に出来るか」

「なんで?」

「降伏して虜囚になって見ろ。これでも貴族の端くれだ、身代金の額は結構なものになる。その分、王陛下へのご負担になるのだ」


 お貴族様というのは、負けそうになった時点であっさりと降伏しそうなイメージがあったが、スティーブンスさんは中々の硬骨漢らしい。


「スティーブンス卿、お気持ちはありがたいのですが、メディオランドとてそれなりの国なのですから、身代金位は工面できると思いますが」

「グラディス様、それではこのスティーブンスの騎士としての一分が立ち申さん。第一、グラディス様は既にセルトリア王家の方、ここは黙っておいて頂きたい」


 容赦なく言い放った。


「どうだ。面白いご仁だろう。俺はこの砦によく飲みに来るのだが、いつもこのように説教をされておるのだ」


 ロバーツ様が面白そうに笑っている。説教をされたところで、不快には思っていないのだろう。

 しかしだ、こちらもネズミ六十匹分の借りがある。


「あの、スティーブンス様、ちょっとよろしいでしょうか?」

「なんですかな? 神官」

「砦には仮想の敵というものがあると聞きました。この砦の仮想の敵はどこなのでしょうか?」

「決まりきっております。この砦はセルトリア国境を守る砦。仮想の敵は、恐れながら、セルトリア王国。なかでも最も近い砦におられるロバーツ様になります」


 本人が目の前にいるにも関わらず言い切った。

 グラディス様はため息をついているが、ロバーツ様とお付きの方はニヤニヤしている。

 なにせ国境の砦だ。そうくると思った。


「でも、そのロバーツ様にこの脱出口の事を知られてしまったのであれば、逃げられませんよね」

「なにを申しますか。敵陣を食い破ってでも脱出するのみ。まさか、神官も降伏せよと申されるか?」


 ぎろりと睨んで来る。


「そうではなくて、どうせ知られているのなら、堀の水を綺麗にしませんか? わざわざ汚い水の中を潜った後で敵陣を食い破るよりも、綺麗な格好で堂々と挑まれた方が互いに気分が良いと思うのですが」

「なんと、そうおっしゃるか」


 どうせバレているなら隠しても仕方が無い。それに正面切って戦え、と言った私の言葉は響いたようだ。

 スティーブンスさんの態度が変わった。


「いや、しかし、中々難しいのですよ。元々、人の手で掘った堀と川までの水路ですからな。流れが悪うございます。実は堀の水が汚いのは、作った時の工事にも問題がありまして。いや、お恥ずかしい」


 なるほど。戦術というのは言い訳なのだな。


「賦役でひとを集めて工事をすれば良いではないですか」


 グラディス様が事も無げに言う。


「そうは行き申さん」

「どうしてですか?」

「賦役にすると領民の負担になり申す。儂は槍を振り回すのみの男でしてな。領国経営というものが、どうにも下手に御座います。金銀の蓄えもあまりなく、食糧もネズミにやられる有様。ましてや、今は春になったばかり、領民もようやく冬を越して生活が安定してきたところです。そこに賦役となると……」


 なるほど。なかなか、良い領主様らしい。

 だが、私達には上下水道の専門家がいる。


「パウルさん。どうですか? どのくらいかかります?」

「この排水路を洗い流すのに大量の水が必要になるが、堀と川との間の流れをよくするだけであれば、三日ほどかの」

「なんと僅か三日で?」


 スティーブンスさんは驚いているが、パウルさんは一言、うむ、と頷くだけだ。


「報酬はそうですな、この娘達にとって、ここが初めての外国になり申す。儂が工事をやっとる間に、ご領地の観光案内をして頂けるかな。勿論その間はご当地の名物なりを食わしてやって頂こう」


 ネズミ六十匹分の代わりなのだろうが、私達にとってはありがたい話だ。

 ベアトリクスとメアリーがニヤニヤし始めた。リュドミラは露骨に声を上げて喜んでいる。


「なんと、それだけで? 誠でござるか?」

「ああ、忘れていた。儂の知り合いの年寄り夫婦がここの南にあるお山に登りたいらしい。儂らがメディオランドから帰って来るまでの間、ご当地に逗留させて貰えませんかな?」


 なるほど。そう言う事か。口止め料込なのだな。


「丁度良いな。その老夫婦にはパウルの工事を手伝って貰おう。スティーブンス卿、砦の留守番は俺とグラディスでやるから、卿はこの娘達を案内してやって貰えないか?」


 砦の第一の敵であるロバーツ様が笑いながら言って、私達の観光が決まった。

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