魔界の神棚③
映画の後、みどりと岩田君はゲームセンターへ
入って行った。
UFOキャッチャーで欲しかったマスコットを
岩田君が取ってくれて、上機嫌になったり、
ツーショットのプリクラ撮ったり、と
楽しく夕方まで遊び、
気がつくと外はすっかり暗くなっていた。
「ごめん、、、私、そろそろ帰らないと‥‥」
「おう、今日は楽しかったよ、ありがとうな」
「私の方こそ、ありがとう」
ここで次のデートを約束できれば良かったが
みどりは緊張でそんな余裕はなかった。
「また、お願いすればいいか~」
そう・・・あの神棚にお願いすれば、
何でも叶う気がしてた───
「ただいま~」
家に帰ると、弟の悟が血相変えて飛んできた!
「姉ちゃん!大変だーーー!」
「モカがいなくなっちゃったーーー!」
「えーーー!」
「何で?、どうして?」
「俺が3時頃帰ってきたら、
凄い勢いで飛び出て行ったっきり、帰って来ないんだ」
「今、お父さんとお母さんが探しに行ってる‥‥」
「どうして、こんなことになったの?」
「今までこんなことなんかなかったのに」
「私も探して来る!」
みどりは、いてもたってもいられず、
懐中電灯片手に探しに出た。
「モカがいなくなったら、私は‥‥私は‥‥」
小学生の頃から、共働きだった両親に代わり、
唯一の心の拠り所だったモカは、
みどりにとって、兄弟のような存在だった。
「モカーーー?」「モカーーー?」
家の周りで呼んでも返事はない。
「そうだ!神棚だ!」
みどりは、あの神棚にお願いしてみようと、
自分の部屋へ駆け込んだ。
「神様お願いします!モカを探して下さい!」
そうお願いして、また探しに出掛けた。
1時間ほど経った頃か、家から電話が入った‥‥
弟の悟からだった。
「姉ちゃん、、、モカ、、、見つかった、、、」
妙に暗い声だったが、
「うん!わかった!、すぐ帰る」
と返事だけして、急いで家に帰ると、
みどりの両親が、
庭にモカを埋めてるところだったーーー
「お母さん、、、モカは、、、?」
息が詰まる思いで聞いてみると、
「どうやら、車に跳ねられたらしい、、、」
と、代わりに父が答えてくれた。
「モカが、、、死んじゃった、、、?」
いきなりの、家族に直面した死に対して、
信じられない、って感じのみどりは
出来上がったばかりのモカの墓前で
両膝を付いて呆然としていた。
「あれ?、悟は?」
ふっと、弟の姿が見えないことに気付き、
父に聞いた。
「今、お線香を取りに行ってもらってる」
と、その時だった!
ドドドーーーー!
っと、何か大きな物が落ちる音がして、
皆で走って家に入ってみると、
階段の下で悟が口から泡を吹いて倒れている!
どうやら階段から落ちたようだ!
「さとる────!」
母が呼ぶが意識が無い!
「救急車だーーー!」
「いったい今日はなんなの!」
「モカといい、、、悟といい、、、」
みどりはパニックになっていた。
救急車が到着し、
ストレッチャーに乗せられた悟と一緒に
母が同乗し、
みどりは、父の運転で病院へ向かう。
「悟、死なないで!」
みどりは病院に着くまで必死に祈った。
救急車が病院に到着した後、しばらくして
みどりと父が到着‥‥‥
病院に駆け込む二人、、、
処置室の前には青ざめた顔で座ってる母がいる。
「お母さん!悟は?‥‥‥」
みどりの問いかけに、母は首を横に振るだけだ───
どのくらい待ったのだろうか?
30分?‥‥いや、1時間くらいだろうか?
処置室から看護師が出て来て、入室の許可が出た。
悟は呼吸器に繋がれて、未だ意識不明のままだ。
「外傷は軽いのですが、頭をよほど強く打ったのか、
意識が戻りません」
「とりあえず今夜はICUで様子を診ます」
「大きな怪我は無かったし、病院にいれば大丈夫だろ‥‥」
父は楽観していたが、みどりには見えてしまった、、、
ICUに入れられる悟の後をついて行く、
赤く、爛々と光る目をした黒い影を・・・