魔界の神棚②
「モカ‥‥見て」
「我慢できないから買ってきちゃった!」
「私のマイ神様」
みどりは、麻衣の意見を無視して買った神棚を、
愛犬のモカに見せようとするが、
なぜか後退りしながら逃げてしまった。
「モカったら‥‥‥」
「お祀りするのは‥‥‥」
「やっぱり本棚の一番上ね!」
「お姉ちゃん、何買ってきたんだよ!」
弟の悟が不思議そうな顔して聞いてきた。
「あっ!これ?」
「私のマイ神様♪」
「これで私は無敵になるの」
「また変な物買ってきて、お母さんに怒られるぞ!」
「神様に変な物って無いでしょ?」
「神頼みなんかしないで、まじめに勉強したら?」
「うるさいわね!」
「あんたの願いなんて聞いてやらないからね!」
「私だけ幸せになってやるんだから!」
みどりは本棚の上に神棚を置き、
自己流の祀りかたで、水を入れたコップをお供えした。
「これでよし!‥‥と」
「さてと、何をお願いしようかな?」
「やっぱり岩田君‥‥かな♪」
「いきなり彼女、は恥ずかしいから…
まずは、デートからね、、、」
「神様‥‥サッカー部の岩田君と、
デートできますように!」
みどりは神棚に手を合わせ、真剣にお詣りした。
───翌日、
みどりは観たい映画があったので、
午後から駅近の映画館に来ていた。
某有名歌手のヒット曲をテーマにしたラブストーリーだ。
ドリンクを買い、劇場へ入ると、
学校が冬休みということもあって、
平日にも関わらず、若い男女で混雑している。
みどりの右隣の席が空いていたが、
変な人が来なければいいな~と思っていた。
ポップコーンとかバリバリ食べる音とかすると、
感動的なシーンも台無しになるからだ。
「ここ、いいですか?」と、
上映5分前になり、一人の男の人が座ってきた。
見ると、岩田君じゃないか!
「え?岩田君!」
ビックリして声をかけると、
「市川!」
みどりの名字は市川だ‥‥‥
岩田君はドギマギした様子で
「俺がこの映画観に来たって、絶対内緒にして!」
「カッコ悪いからさ~」
「べつに、男一人でラブストーリー観たっていいじゃない」
と、みどりが言うと、
「男連中は違うんだよ、
何言われるか、わかったもんじゃない」
「岩田君にこんな趣味があったとはね‥‥意外」
「これだけは、観たかったんだ」
「彼女と来ればよかっのに」
みどりはさりげなく、彼女がいるのかどうか、
カマかけてみた。
「部活が忙しくて、彼女なんか作れねぇし‥‥」
彼女がいないと判って、みどりはホッとした。
それに、誰も知らない岩田君の一面を知ったことで
優越感にも浸っていた。
劇場内の照明が落ち、上映が始まると、
さらに隣の岩田君を意識してしまうみどり、、、
そこへ、岩田君の追い打ちをかけるような言葉…
「まるでデートしてるようだな」
この一言でみどりはテンションがMAXとなり
映画どころではなくなってしまった。
結局、上映中はずーっと隣の岩田君が気になってて
どんな映画だったのか、さっぱり記憶にない。
「市川は、これからどうするんだ?」
劇場を出て、岩田君が聞いてきた。
「私?、別に予定無いけど‥‥」
ドキドキが消えないみどり。
「今日、部活も休みだから、ちょっと遊んでこうぜ」
「うん、いいよ」
って、、、これって、デートじゃん!
どうしよーーー?願い叶っちゃった??