魔界の神棚①
世の中には運の良い人って確かにいる。
例えば、自分が乗ろうとしていた飛行機が
何かの理由で乗れなかった時、
その飛行機が事故を起こし、乗員、乗客、全員死亡し、
九死に一生を得た人・・・
たまたま買った宝くじが1等に当選した人・・・
では、運の良い悪いはどこで違ってくるのだろうか?
九死に一生を得た。または、幸運を手にした。
と言ってる人の、実に85%が、
家や職場に神様をお祀りしてる…ということだ。
つまり、神様を崇奉り、
無心に祈っていれば、自然と守って戴ける。
と、いうことだろう。
しかし、お祀りする神様を間違えると
逆に不幸になってしまう、ということも
忘れてはならない────
「昨日の『九死に一生を得たスペシャル』
面白かったねーーー!」
「ホント、運の良い人って羨ましいな~」
「家でも神棚祀ろうかな~」
「うん。それ、私も思った!」
「マイ神様みたいでいいよねーーー」
いつもと変わらぬ女子高生の登校風景───
みどりと麻衣は昨日のテレビ番組について
喋っていた。
「ところでさ、イッチャンって、
どのくらい御利益があるのかな?」
「うーーーん、、、」
「確か、家内安全から安産まで、
何でもやるようなこと言ってたけど‥‥‥」
「那奈からのメールだと、この間、
ナンチャッテ縁結びに成功したって!」
「縁結びかぁ~‥‥‥私もお願いしようかな?」
「でも、イッチャンだよ!」
「下手したらストーカーと
くっ付けられるよーーー!」
「キャー!」
「それ!ありえるーーー!」
「あっ!でもさ、」
「金運アップ位ならできそうじゃない?」
「試してみるか‥‥‥?」
「おはよー♪」
そこへ那奈が合流した。
「ねえ、ねえ、‥‥‥何話してたの?」
「あのね、みどりが、イッチャンに
縁結び頼みたいんだって!」
「私は金運アップ!」
「それで、終業式終わったらイッチャンの所へ
行きたいんだけど、那奈も行かない?」
「あっ!ごめん、、、」
「ワタシ、今日は、祖母の付き添いで
出掛けなきゃいけないんだ」
「二人で行っておいでよ」
「そうか‥‥‥」
「じゃあ、私たちだけ良い目みちゃうかもーーー?」
「ガッカリするよ‥‥きっと」
3人はお腹抱えて笑った────
────放課後
みどりと麻衣は石神神社へ向かっていた。
「みどりは誰か好きな人、いるの?」
「うーーーん、やっぱり
サッカー部の岩田君、かな‥‥‥」
「えっ?、、、」
「あの、人気No.1の?」
「無理、ムリーーーー!」
「イッチャンなら、せいぜい上島よ!」
「あの、チビデブの?」
「ひどーーーーい!」
女子トークを楽しみながらやって来た二人は
石神神社に着くと、中に石神がいるかどうか、
那奈から聞いた方法で確かめてみることにした。
「イッチャンいるかな?」
スマホを動画撮影モードにして中を覗いてみる───
霊は赤外線に反応して見えるらしい。
「あっ!いたいた!」
麻衣が言うと、
「何してる?」
「なんか知らないけど‥‥‥」
「スクワットしてる!」
「スクワット?‥‥‥何のために?」
「さあ~???」
「あっ!こっち向いて、何か、一生懸命叫んでる!」
録画モードで姿は見えるが、声は聞こえない。
「笑える~」「ウケる~」
「可笑しくて、涙出てきたーーーー」
「イッチャン!」
「縁結びと金運アップ!お願いね!」
「そのかわり、お賽銭弾むからね!」
と言って、10円づつ賽銭箱に投げ入れた。
「あ~面白かった~」
「やっぱり、私もマイ神様欲しいなー」
みどりは、家で神様を祀ればもっと願いが叶うと
思っていた。
駅前の商店街に入った時、
小さなリサイクルショップのウインドウから
古い、神棚が置いてあるのが目に入り、
ちょっと覗いてみることにした。
「ねえ、ねえ‥‥‥」
「これ?良くない?」
みどりが言うと、
「なんか得体の知れない雰囲気ね」
「こういう感じの方がパワーが有りそうじゃない?」
みどりは気に入った感じで、
店員に聞くと
「これ、開店当時から置いてあるんだけど、
なかなか買い手がつかなくて、
今なら、1000円でいいよ」
「1000円だって!買っちゃおうかな♪」
「ちょっとみどり?」
「こういうのってさ、、、」
「私たちじゃよく判らないから、
那奈に聞いてからの方がよいと思うよ…」
「う~ん、そうかな~」
「だからさ、今度那奈と一緒に来よ!」
あまり良い気のしない麻衣は
みどりの手を引っぱり、店を後にした。
─────「ただいまーーー」
みどりが家に帰ると、愛犬のモカが
千切れんとばかりに、尻尾を振って出迎えてくれた。
「おまえだけだよね~、、、
私の気持ちを解ってくれるのは‥‥‥」
みどりは、ダッコされたモカに舐められて
顔がベチャベチャだ。
「ねえ、モカ?」
「あれ、買っちゃってもいいよね?」
みどりは、あの神棚に魅せられてしまったようだ。
いや、神棚に呼ばれてるのかもしれない、、、