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038-地上と天界で

 翌日、俺達はもう一人の力強い味方と合流していた。


『遠くからわざわざすまぬな』


 頭を下げるセラを見てアワアワしている女性の姿を見て、俺の頭に乗っかっていたホロウは嬉しそうにそちらに向かって飛んでいった。

 飛んできた小鳥さんを腕に立たせ、嬉しそうに笑っているのはホロウの真の主である、アルカその人である。


『セラ様にご用命頂けた事だけでも至極光栄です! そしてリク殿、しばらくホロウの面倒を見て頂き感謝する』


「こちらこそ。命狙われてるのは俺なのに、助けに来てくれてありがとう」


 俺の言葉にアルカはクスッと笑うと、微笑みながら首を横に振った。


『セラ様を護る上で、君を護るのは同じくらい大切だからな。それにグレイズのヤツが言っていたぞ?』


「???」


 不思議そうに首を傾げる俺を見て、アルカさんは鼻でフッと笑った。


『いやはや、まさかセラ様を射止めるとは感心したぞ』


「なっ!? ……ちくしょうグレイズの奴、なんて口の軽い野郎だ!!」


 そもそも俺とセラのアレコレはグレイズの勘違いみたいなものなのだが、恐らくヤツは『僕がフラれたんじゃないよ。相思相愛の二人の仲を引き裂きたくなかっただけさっ!』みたいな言い訳をしやがったのだろう。

 アルカもそれを理解した上で言っているのか、その表情には若造をからかってやろうという茶目っ気がにじみ出ていて、まったく困ったものだ。

 それを察して、キサキも『ヌフフフ~』とか変な笑みを浮かべながら冷凍室からニョキッと顔を覗かせてきた。


『パターン的に、後になって"私のセラ様を貴様なんぞにやるものか~!"とか言って、アルカさんがリク君を追いかけ回す展開になるんスかね?』


「お前、また神崎から借りたマンガ読んだだろ」


 ジト目を向ける俺とこんな顔(・ω<)でおどけるキサキを見て、アルカは少しだけ真面目な顔で少し誇らしそうに笑う。


『例えセラ様とリク君が真にそうなったとしても、そんな野暮な事を言うものか。セラ様の幸せは私の幸せ……。セラ様がそう望むのであれば、その選択が最良であると信じる事こそが家臣の務めさ』


 真っ直ぐにセラを見つめる目が、その言葉に一切の嘘偽りが無い事を物語っている。

 そんなアルカを見て嬉しそうにしているセラの笑顔からも、二人の信頼関係がよく分かる。

 そして、そんな二人の様子にキサキは……


『うおお、私は今モーレツに感動してるっス! これが騎士道ってヤツっスね!!』


 目を輝かせたキサキに手をガシッと握られ、アルカは何だか照れくさそうに頭を掻いている。

 俺は困惑しているアルカを見て少し笑ってから、セラに目線を向けた。


「……絶対ユキコちゃんを助けなきゃな」


『うむ!』



~~



『カナちゃん、そっちはどう?』


第二世界セカンドからも増援が多数得られているので、戦力的には大丈夫そうですね』


 私の問いかけに淡々と答える真面目カナちゃんだが、その表情には若干焦りの色がある。

 先程の答えにもその本音が少し浮き彫りになっていた。


『戦力的には、ね。じゃあキミの思う足りないモノは何かな?』


 私が問いかけるよりも先に、私の隣で眠そうな目をしていた友人が訊ねると、カナは困り顔で俯いた。


『今回の相手は人間離れした魔力を持つ魔女と聞いていますが、所詮は人の身。私達が全力で応戦すれば負ける要素はゼロです。しかし、それは文字通り"全力で応戦"できればの話……』


 カナは唇を噛みながら目を背ける。


『リクさんを助ける為に自ら犠牲になる事をいとわないセラさんが、自身の御学友と対峙たいじして戦えるとは到底思えません! 戦えば友を失い、戦わねばリクさんを失う……。よわい二十程度の若き王女が背負うにはあまりにも酷過ぎます……』


 カナの目には薄らと涙が浮かび、セラの身を案ずる言葉に嘘偽りが一切無いのは明らかである。

 それからいくつかの報告をしてから、カナは部屋を出て行った。


『……いやはや、あの堅物も成長したね~』


 かんらかんらと笑う友の姿に、思わず私も釣られて笑ってしまう。


『やっぱ若い子を修行させるには異文化交流が手っ取り早いねぇ。今度お偉いさん達に提言してみようかな』


『キミの場合、提言よりも"ソレ"をどうにかしないとダメかもよ?』


 そう言って指を差した先のスクリーンには、カナちゃんの一件以上に頭痛の種となる緊急通知アラートが表示されていた。

 差出元は、私が数年前まで旅を~というか、一方的にトラブルに巻き込まれたというか、ムリヤリ連れて行かれた第六世界ソードアンドソーサリーの新しい神様。

 そしてその内容は……



【不正アクセス被疑者捜索の要請】



 どうやら私をその世界にムリヤリ連れ込んだ輩がまた何かやらかしたらしく、現地からヘルプの要請が届いていた。


『あのバカを捕まえるのは後回しでいいよ。今はカナちゃんのヘルプを優先で行くよっ』


 私が少しヤケクソ気味にシステムコンソールを閉じる姿を見て、友は苦笑しながら立ち上がって口を開いた。


『さて、せっかくお呼ばれしたのだからボクも頑張らなきゃね』

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