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第六章

書き溜めていた最後の章となります。

 俺は何故かデパートというものが性に合わない。


 こういった場所が苦手とでもいうのだろうか・・・


 自分自身の食生活の為、生鮮食品売り場には顔を出すのだが・・・


 ・・・それでもあまり気持ちのいいものではなかった。



 何と言うのだろうか・・・


 こういった「庶民的」な所が苦手なのだ。



 その為俺はまず、足早に瑠那に必要な衣類を買いに向かった。



 このデパートは比較的大きい方だ。


 上は8階まで、地下も2階まで用意されている。


 さらに屋上には小さな子供たちが遊べるように遊具まで設置されている。


 この街の駅と一体化しているというのも大きなアドバンテージだろう。



 このデパートに来れば大抵の物が揃う他、ゲームセンターまである為、いつも多くの人でにぎわっている。



 とりあえず俺はエレベータへと向かう。



 「衣類関係は・・・5階か・・・」



 エレベータの前に設置された案内板を見て、エレベータが下りてくるまで待つ。



 珍しくエレベータには俺ひとりしか乗る者はいなかった。



 5階に到着するまでの間、瑠那にどんな服を買って行くかを考えをまとめていた。



 程よく5階に到着し、子供服売り場へと足早に向かう。



 子供服売り場と言えど、このデパートではかなりの大きさだった。



 俺は時間もない為、早速服を探し始める。



 ・・・無論、今までの瑠那との生活で得た知識も踏まえてある。



 瑠那の成長の早さ・・・


 それは俺の理解の範疇を遥かに超えている。


 普通の子とは明らかに何かが違っている。



 ・・・しかし、そんなことはどうでもよかった。


 今は・・・瑠那と生活する事にささやかながら喜びを感じていた。



 そんな事を考えながらも、瑠那に似合いそうな服を選んでいく。


 一通り揃い、その洋服をレジへと持っていった時だった。



 「あれっ・・・月野くんじゃない?」


 「おまえ・・・こんな所でバイトしてたのか?」


 「うん、そうだけと・・・って、あれっ? 言ってなかったっけ?」


 「ああ、聞いてないぞ」



 ・・・彼女は、杉山すぎやま 美晴みはる


 普段から誰も寄り付こうとしない俺に、何故かしつこく付き回るよく分からない女だ。


 会話するのにも疲れる為・・・いつも相手にしない様にはしているのだが・・・



 「・・・何でもいいが、俺、今急いでるんだ・・・」


 「もう・・・こんなとこで会えたんだから、もうちょっとゆっくりして行けばいいのに・・・」


 「・・・仕事中だろうが」


 「わかってますよ~っだ」



 そう言いながらも、やっと商品に着手してくれたようだ。


 ・・・しかし、やはり予想通り・・・



 「・・・あれっ、これって・・・女の子の服だよ?」


 「・・・見れば誰だって分かることだと思うが・・・」


 「そ、それはそうだけど・・・月野くん・・・妹とかいたっけ?」



 ・・・やはりこうきたか・・・


 まあ、予想はしていたのだが。



 「すまないが、時間ないんだ・・・」


 「えっ、あ、う、うん・・・それじゃあちょっと急ぐね」



 どうやら美晴も俺の緊迫した面持ちを察した様で、作業を早め出した。



 「えっと、ぜんぶで・・・」


 「これでやってくれ」



 そう言って、俺は値段も聞かずにクレジットカードを出した。



 「あ、は~い」


 「悪いな、本当に時間がないんだ」


 「あ、ううん、平気平気、気にしないで♪ はいっ、レシート♪ またね♪」


 「ああ、すまない」



 思わぬ所で足止めをくいそうになったが、なんとか回避することができた・・・


 普段の美晴ならば、絶対に食い下がる様な場面だったが・・・


 ・・・さすがに仕事中に雑談をする訳にもいかないのだろう。



 それから俺は、今度の瑠那に必要と思われる雑貨用品を買いに向かった。


 エレベータ前の案内板で確認した限りでは、雑貨用品は2階だ。



 受け取った瑠那の洋服を抱えながら足早にエレベータへと向かう。



 この時点で時計を見ると、既にデパート内で10分が経過している。


 このデパート自体、ゆっくり来れば20分はかかるのだが、急げば10分とかからない。


 その為、今現在は20分弱が経過している訳である。


 瑠那との約束は1時間。


 あと30分以内にこのデパートを出れば間に合う計算だ。



 さすがに服を選ぶには時間を要したが、雑貨ならば問題ないだろう。



 そう考えている間にも、俺は雑貨用品売り場へと到着し、必要と思われる雑貨一式を全て買い求めた。



 「そうだな・・・瑠那用の食器も買って行くか・・・」



 そう考えた俺は、2階に食器類を扱っている店があることも思いだし、食器も買って行くことにした。



 まあ食器と言っても、以前、家族が使っていたの物を使用すればいいのだが・・・


 ・・・やはり、瑠那は新しい家族の一員だ。


 形だけでも揃えておこうというのが俺の考えだった。



 結局、2階で買い物をしている間に、また10分弱程経ってしまった。


 デパートで許される滞在時間は残りあと25分程。


 ここで帰れば余裕で間に合うだろう。



 しかし瑠那との約束もある。


 そう、おいしいもの・・・いわば土産だ。


 さらにこれまでは自分一人分だけの食材で済んでいたが、

 瑠那が増えて二人分とまではいかなくとも、確実に消費は増えている。


 残り時間は厳しいが食材も買い足さねばならないだろう。



 そして、最後に今後の食材と土産を買い求めに1階にある生鮮食品売り場へと向かった。



 今の瑠那の現状を見る限り俺は、消化もよく、柔らかい物なら食べられると判断した。


 それに育ち盛りでもある為、牛乳も買って行く事にする。



 ・・・しかし、こうやって買い物をしている姿が無性に恥ずかしく思えるのは気のせいだろうか・・・



 まぁ・・・とりあえず今は気にしないでおこう・・・


 瑠那も家で待っている事だし・・・



 そう言って時計に目をやると、残り15分と言ったところか。


 さすがに瑠那のことも考えながら急いで買い物をするというのは疲れる。



 「まぁ、急げばなんとか1時間以内には戻れるな・・・」


 そう確信しながら、店のレジへと並ぶ。



 ・・・しかしながら、この並ぶという行為自体・・・恥ずかしいと思うのは気のせいだろうか・・・



 レジに並びながら、ふと瑠那の事を思い出す。



 大人しく待っていてくれてるだろうか・・・


 泣いていないだろうか・・・



 「瑠那に何か買っていってやらないとな・・・」



 結局、レジの脇に陳列してある飴をひとつ選び、一緒にレジに出す。



 さっさと会計を済ませ、商品を袋に詰め込み帰る支度をする。



 さすがにひとりでこれだけの荷物は多い気もするが・・・



 大量の荷物を抱えながら、急いで帰路につこうとしたその時・・・



 「お、月野じゃねえか」


 「なんだ、聡もいたのか」


 「あはは、ぶらっと・・・な」


 「悪いな、今急いでるんだ・・・また今度な」



 そう言ってさっさと別れようとする。


 しかし・・・



 「なんだ・・・そうなのか・・・ゲームもやってく時間もないか?」


 「ああ」


 「そうか・・・よし、じゃあ荷物半分よこせよ、持つぜ」


 「ああ、悪いな」


 「何言ってんだよ・・・ダチだろ?」


 「ダチ・・・か・・・おまえの一方的な感じもするがな」



 こいつとは高校入学時に一悶着あった。


 一言で言ってしまえば喧嘩だろう。



 こいつが一方的に周囲の者を従え、式が始まるまでの間にざっと20名はつれて歩いていただろうか。



 そして、こいつの牙が俺に向かった・・・という訳である。



 俺は「入学式くらいはしっかりと出席させてくれよ」という気持ちも込めながら・・・


 ・・・軽くあしらった。



 ・・・それからこいつにも妙に懐かれてしまい・・・今の状況に至る訳だ。



 「まあ、そう言うなって」



 そういって聡は豪快に笑う・・・


 ・・・恥ずかしいからやめてほしいものだ。



 「ああ、それじゃあ、頼む」


 「おまえの家まででいいんだよな?」


 「ああ、時間ないから走るぞ」


 「お、おいっ、待てよっ」



 とりあえず俺は、用も済んだ事だし、早く瑠那の顔が見たかった。


 心配・・・ということもあるが・・・


 言葉では表せない何かが、俺の心の中で芽生えているのを感じた・・・

いかがでしたでしょうか。

書き溜めていた分は以上となります。


第六章までという短くも未完結の作品に

目を通して頂きありがとうございます。


今後更新する可能性は0ではありませんが、

必ず更新するという訳でもありませんので

ご了承頂けましたなら幸いです。

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