死出の道連れ
グリフェがヨロヨロと近づいてきた。ロングコートが擦り切れて痛ましい姿だ。
「そんな……私は魔力値がきわめて低い、普通の地味な男だったのですが……」
〈魔力者〉とは、生まれつき魔力値が高い人間のことだ。この大陸では全人口の3割に満たない割合で存在する。だいたい、生後3歳から15歳くらいの間に魔力値が高まって、〈魔力者〉として覚醒する。
17歳のミランが目覚めたのは極めて異例なケースであった。彼が幼少時から極端なほど影が薄い存在であったのは、微力ながら覚醒する予兆だったのかもしれない……
「魔力値についてはまだまだよく分からない点がある……ミランは女主人を助けたい一心で、急に目覚めたのかもしれんなあ……」
「いやはや……ミラン君、やったね……アンドレアちゃんを思う心が奇跡を起こしたんだよ!」
照れるミランをアンドレアが抱きしめる。
その時、オートジャイロの回転翼が勢いよく動く音がして、風圧が土埃をあげた。まだ誰か兵士がいたのだ――グリフェたちが見れば操縦席に、血だらけのシュブラック曹長がいた。
「野郎、まだ生きていたか……」
「私はもう……長くない……死出の道連れに……グリフェよ……来い……」
「ごめんこうむるね!」
10メートル以上上昇したオートジャイロは下部の機銃が回転し、グリフェめがけて銃弾を連続発射した。グリフェ達は前方に走って逃れる。その先にはアンドレアを誘拐した装甲トラックがあった。貨物コンテナの鉄扉を開けて入り込む。銃弾が装甲にめり込み、貫通するものもあった。
「わわわわ……グリフェ殿、銃弾が貫通して、座席に当たりあました!」
「頭を下げて、アンドレアと座席に隠れていろ、ミラン!」
「はいっ!」
二人の避難を確認したグリフェとタートルは装甲車の窓からプロペラ航空機を覗く。
「徹甲弾だ……莫迦野郎……アンドレアとミランにも当たっちまうじゃねえか……」
「あのシュブラックって野郎、もう正常な判断が出来ないようだぜ……どうする、グリフェ?」
「そうだな……タートル……あとは頼む……」
グリフェは梯子に視線を向けて、倒れ伏した。ミランが駈け寄る。
「グリフェ殿……まさか……息をしていないのでは……」
「なんじゃと……」」
アンドレアが脈を取ろうと、手首を持ち上げる。そこへタートルが声をかけた。
「安心しな、グリフェは仮死状態になったんだ。冬眠状態の熊みたいに代謝機能が下がっただけさ……浅いけれど、息はしてるぜ……」
大型オートジャイロは装甲トラックに向けて狂ったように機関銃を連射する。アンドレアの悲鳴が車内に響く。
「ふははははははははは……死ねい、グリフェ!」
装甲トラック上部にある砲座がギリギリと音を立てて回転する。火砲の銃口が回転翼機に照準された。轟音を上げて砲弾が発射され、オートジャイロの正面に命中。プロペラ航空機は炎をあげて爆発四散。残骸が地上に落下していく。
「ふう……今度こそ、お仕舞いだ……ゆっくり休みな、グリフェ……」
砲座に座ったタートルが右手の袖で、額の汗をぬぐう。ミランはグリフェの言ったことを思い出した。「……まあ、これでも頼りになる男だ」と……
一行は装甲車でダシュコフの町に戻り、ふたたび幌馬車の旅を再開した。明日までグリフェは馬車内で眠り続けている。
目指すロドニーン要塞はあと少しだ――
ここでいったん休止。
最終章はもう少し手直ししてから、投稿します。




