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美しくも高慢な依頼者

 グリフェが昨日の今日でか? と、目をむく。労働基準法に明らかに反している、ストライキを決行だ! と、わめきたてた。


「まあまあ、話だけでも聞いてくれ……〈EGG〉のスポンサーでもあるミアーチェのベドナーシュ商会からの依頼なんだ……」

「ベドナーシュ商会って、ミアーチェで五本指に入る大金持ちの!?」

 グリフェと通信ホログラムのダンプティの間に、タートルが入り込む。


「そうだ、さすがタートル・ピッグは情報通だな……」

「そりゃ、オレっちはグリフェのマネージャー兼交渉役ですからねえ……ひひひひひ……こりゃ、前金だけでも莫大な金が入るぜ、グリフェ♪」

「うるせいっ! 体調管理も立派な仕事の内だっ! 俺はたとえ、戦争が始まろうと、大災害が起きようと、隕石群が落下しようとも、休むっ!」

 迫力の剣幕に、おしゃべりなタートル・ピッグも二の句が出ない。彼はホログラムの支部長に日を改めようと提案。


「いやあ……それがねえ……すでに依頼者が……」

 その言葉を言い終えない内に、食堂の扉が開く音がした。そして、閑散とした室内を真紅の高価なドレスを着た若い女性が騎兵隊のように勇ましく歩いてきた。

 髪は蒼みがかったアッシュブロンドで、意思の強さを示す眉のライン、宝石のようなグレイブルーの瞳、真紅の唇はふっくらと柔らかそうだ。


「ミスター・グリフェ! 仕事を依頼します!」

「……なんだぁ? 支部長、もしかしてコイツが……」

「……ああ……紹介しよう。依頼者のアンドレア・ベドナーシュ嬢だ」

「うむ、わらわはその方に、ロドニーンまでの護衛役を頼みたい」

「……わらわ?」

 眉根を寄せ、口のへの字がさらにひん曲がるグリフェ。美人ではあるが、高慢を絵に描いたような女だった。


「おおっ……ミズ・アンドレア。なんと、お美しい……ロドニーンまでは商用ですか?」

 タートルが恭しくお辞儀をする。


「う、うむ……そのようなものじゃ……とにかく、急を要するのじゃ。これ、ミラン、契約書を」

「はい、アンドレア様……」


 どこからともなく若い男の声がした。グリフェとタートルはギョッとして、声の方角を見る。アンドレア嬢の左斜め後ろに、いつの間にかモスグリーンの燕尾服を着た青年がいた。茶髪茶瞳の平凡な顔つきで、これといった特徴のない中肉中背の体型。執事のようだった。


「おったまげたなあ、ミラン君だっけ? ……いったい、どこから出現したんだい? もしかして、ステルス能力者なのかい?」

「いえ……そんな大層な者ではありません。ただ単に、影が薄いだけでして……」

「影が薄いって……そんなレベルじゃなかったような……」


 タートル・ピッグが納得しかねる表情で見つめる。グリフェも同意見だった。確かに主人のアンドレアは派手で目立つ存在であり、そのため、もともとの影の薄さが、余計に影が薄く感じるのだろうか?


「とにかく、サインをお願いいたします。タートル氏、グリフェ氏」

 タートルは相棒の方をうかがう。さっきより機嫌が悪そうだ。


「断るっ!」


「なっ……なんじゃと……依頼料が不服なのか……ならば、もっと……」

 さしものアンドレア嬢も気勢がそがれて、交渉を始めた。

「金額の問題じゃねえ。アンドレアとかいう、ベドナーシュ商会の娘とか言ったな……そりゃ、真っ赤なウソだろ?」


 アンドレアとミランがギクッと身を強張らせた。まるで、棒を飲み込んだ表情だ。

「なぜ……それを……」


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