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雷雨の町

 グリフェはロングコートから三つの丸石をロープで三つ又に結んだ〈ボーラ〉を取り出した。〈ボーラ〉とは、暗黒大陸などの原住民が駝鳥などを捕えるために使う狩猟用の武器だ。〈歩く武器庫〉というだけあって、武器屋から多彩な武具を仕入れてきて、使いこなす。

 右手を頭上に持ち上げ、遠心力をつけて投擲。赤毛のサムエルの両足に絡みつき、バランスを崩した赤毛男は石畳みに転倒。頭部をしたたかに撃って、白目をむく。


「ぐふふふふ……二人ともだらしない……やっぱり、ボクチンがトリを飾るっきゃないね」


 三本傷のラデクがグリフェの頭部に星球式槌矛モーニングスターを叩き込む。まともに当たれば頭蓋骨が破壊されて血と脳漿が飛び散る。もともとは金属鎧を破砕するため開発されたものだ。

が、グリフェは背中に弓なりに反らせて回避。そのまま、ブリッジ態勢となり、バク転で立ち上がる。


「味なマネをしちゃって……これならどうよ?」


 星球式槌矛の棍棒から星型鉄球が分離して飛来する。グリフェは危うく、脾腹に鉄球を喰らうところだ。が、紙一重で躱した。石畳が破壊され瓦礫と化す。三本傷のラデクの武器は、実は改造メイスだったのだ。鉄球と棍棒は鎖でつながれていて、ラデクは鉄球を回転させて、連続して鋼鉄の星球をグリフェに攻撃する。次々と石畳が粉砕され、穴ぼこができる。銀髪のスレイヤーは防戦一方だ。


「アホっぽい喋り方のくせに、曲者だな、テメエ……」


 グリフェは鉄球が地面に潜りこみ、メイス使いが引き上げるタイミングを見計らって、鎖を踏んづけて足止め。そして、両手で掴んだ。


「およよよよ? もしかして、ボクチンと力較べをしようってのかい。言っとくけど、ボクチンは怪力だよ。なんてったって、メルドキア・ロイデット州の元力闘士チャンピオンだもんね♪」

「そりゃ昔の話だろ? すっかり腹に脂肪がついて、体が鈍っちまったんだろ?」

「ぐふふふふ……試してみるか!」


 互いに改造メイスの鎖を握って、綱引きの力較べがはじまった。三本傷のラデクは地面を踏ん張り、両手に力瘤を盛り上がらせ、鎖を引く。重戦車のようなパワーだ。が、どうしたことか、鎖は動かない。汗だくのラデクがグリフェを見れば、同様の姿で引っぱっているが、前よりシルエットがマッチョになった気がする。

 グリフェは三重化合人間としての能力・ライオンの筋肉細胞が発動し、その金剛力でラデクの怪力を封じたのだ。さらにパワーを増強し、ラデクが引っ張られた。さらに肥満体の賞金稼ぎの足が浮き、肉のボールと化して宙を飛んだ。


「ひええええええええええええええええ!」


 空を飛んだラデクは他の賞金稼ぎたちの群れに落下した。四名の無法者が押しつぶされ、怪我でうめく。ラデクは泡をふいて失神。

 一方、タートル・ピッグも残りの力を出して水牛に変身して、アウトローたちを跳ね飛ばしていた。


「残りの賞金稼ぎはっと……ざっと、十八人くらいか。まだやる気かな?」

「……ううううう…………」


 雨が激しく降り始め、近くで雷鳴が轟きはじめた。旧市街の路地には賞金稼ぎたちが怪我で苦鳴をあげて倒れているか、気絶している。建物の住人たちは怯えて窓を閉め、閉じこもっている。血の気がひいた無法者たちに、怯えの感情が走る。


「おっと、待ちな……ミアーチェの賞金稼ぎを舐めてもらっちゃ困るぜ!」


 別の一団が二十人ほどやってきた。遠隔地にいた賞金稼バウンティハンターぎたちだ。どいつも一癖ある風貌をしている。舌なめずりして、やる気満々だ。怯えていたアウトロー達の士気があがる。一方、グリフェとタートルの体力はかなり消耗している。


「おもしれえ……まとめてかかってこいや!」


 グリフェが廃材などを組んだ逆茂木をバックに、空元気を出して威嚇する。が、背後から強烈な闘気を感じた。廃材バリケードに切れ込みが幾筋もでき、バラバラになって倒壊する。そこに八名の屈強な男達が剣や槍をもって佇んでいた。その中心にいるのは大柄な五十男。口髭におおわれ、頰傷があり、戦場往来の古強者のようだ。八人のなかでもっとも、闘気が強い。バルディッシュという戦斧を持っている。刃が斧と薙刀を足して割ったような独自の形状をした長柄武器だ。『半月斧』、『三日月斧』ともいわれる。


「げっ……お前は……アレクセイ・バルターク……」


 背後が光り輝き、近くで落雷があった。遅れて轟音が響く。


「武闘士道場の師範がなんの用だ!」


 武闘士とは、剣術・槍術・弓術・斧術・馬術などの武術を極めた者のことだ。使い手ともなると、王侯貴族に騎士や軍人として雇われ、家臣となる者もいる。また、武術師範として雇われる者、民間で道場をひらく者もいる。


「さては懸賞金目当てでやってきたな……」

「悪いが、ここは俺たちが先に見つけたんだ。引っ込んでいて貰おう!」

 賞金稼ぎたちが口々に新参者たちに罵声をかける。


「……グリフェという男はどいつだ……」


 バルタークの凄味のある声と覇気に気圧され、アウトローたちは押し黙り、一斉に銀髪のロングコート男に視線をむける。


「グリフェとは俺だ……さてね、知らない顔だが?」


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