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序章 


 赤い屋根の建物に、鋭角的な尖塔が立ちそびえる街並み。

 中世から時が止まったのではないかと思えるゴシック建築のアパートメントや市役所、図書館、寺院がひしめく。その間を縫って、ダモリア川の水面が垣間見られる。


 別名を〈百塔の街〉というプラグセン王国の首都ミアーチェ。


 昼間であれば、カラフルな色彩の壁が特徴的な商業地区の買い物通りも、旧市街地広場にあふれる人々や露天商、大道芸人も見物できるが、あいにく今は夜霧のただよう時間――旧市庁舎の天文時計が夜10時を告げる鐘を鳴らす。


 綺麗に敷かれた石畳の通りには、外灯しか灯りは見えなく、侘しくも寂しい。

 ダモリア川をまたぐプラグセン橋は政庁のある新市街地と観光地である旧市街地をつなぐ、もっとも古くからある大きな石橋だ。長さは1キロ、幅は20メートル。かつてはこの巨大橋の両端に、粗末な露天商の仮家屋が並び、川面も見えなかった。


 しかし、近代になって大火事の惨劇があり、火除け地として、仮商店はすべて撤去された。そしてミアーチェの町民や観光客たちは、実に数百年ぶりに、プラグセン橋から水晶のように綺麗な美しい川面の景観を再認識させた。それ以来、この橋は市民の憩いの場、観光客の目玉スポットとして有名になった。


「見なよ、ニーナ……昼間のダモリア川も光が反射して綺麗だけど、夜霧につつまれた川もおつなものだろ?」

「ホントだ……フランツはなんでも知っているのね……」

「そりゃあ、吟遊詩人の卵だもの。美しいものはなんでも知っているさ……でも、きみの美しくしさには敵わないかもね……」

「まあ…………」


 高価な赤と黒の市松チェック模様のスーツとシルクハットを着こなした伊達男が、野暮ったいチュニック(上衣)とスカートを着て頭巾をかぶった田舎出の女に甘く囁いている。

 田舎女は頭巾で隠しているが、ハッとするほどの美貌の女性だ。名前はニーナ。夕方になると薔薇、カーネーション、アイビーなどの花を売りにくる娘だ。

 男の名はフランツ・グレン。吟遊詩人を自称している美青年ハンサムだ。しかし、その正体は詐欺師である。愛の言葉をささやきながら、田舎出の可憐な娘を毒牙にかけ、全財産をむさぼり喰ってやろうと画策している悪党なのだ。


「そういえば、知っているかいニーナ……こんな夜には〈ブルーカ〉が現れるっていう話を……」

「まあ、なあに? ブルーカって……」

「僕の田舎で伝承されている昔話さ。ブルーカっていうのは、昼間は人の姿をしているんだけど、夜中になると寝室を抜け出して、蝙蝠こうもりのような大きな怪鳥の姿になって夜空を飛び、夜道を歩く旅人や夜警の血を吸った怪物モンスターなんだ……」

「まあ、怖い……」


 眉をひそめ、怖がる花売り娘をからかうように自称吟遊詩人は見つめ、嗜虐心を押さえながらも言葉を続ける。


「女のブルーカは子供の血を好んで吸い、飢えに苦しむと、自分の子供の血さえ吸ったそうだよ……」

「やだぁ……おぞましい……」


(もっとも、キミの美しい肉体もおサイフもボクがすべて吸い尽くしてあげるんだけどね……ふふふふふふ……)


 好青年美男子の仮面の裏では悪鬼のごとき奸計をめぐらせるフランツ・グレン。

 夜霧に包まれたプラグセン橋の旧市街地側の方角から足音が聞こえてきた。二人ははっと、振り返る。黒褐色のロングコートを着込み、同色の鍔広帽子を被っている。長い髪は、白髪に見えた。老人なのであろうか?


「やあ、お二人さん。こんな夜は早く帰ったほうがいいぜ……」


 思ったより若い声が聞こえた。よく見れば、白髪ではなく、プラチナのような銀髪であった。上背があり、引き締まった肉体。瞳はダークグリーンなのでアルビノでは無いようだ。たくましく、不敵な面構えをした若者であった。年齢は二十代半ばといったところか。案外、柔和な表情をしている。


「なんだい、君は……失敬だな……」

「おやおや、おめでたい兄さんだな。知らないのかい? 最近、ダモリア川下流に水死体が三人も流れついたのを……」

「えっ!? いや、知らなかった……何か事故があったのかい?」

「いやいや、連続殺人魔の仕業だよ……お兄さん」

「こわいわ、フランツ……殺人魔……だなんて……」


 田舎美女のニーナが伊達男の腕にひっしとしがみつく。

 銀髪の男がズンズン彼らに近づいて行く。ロングコートの袖をひるがえし、男は腰のガンベルトから回転式拳銃リボルバーを引き抜いて正面に向けた。

 フランツ・グレンがぎょっとして目を見開く。まさか、コイツがその凶悪連続殺人魔なのか?


「ま、待てっ!」


 昔見た「ヴァン・ヘルシング」という映画に触発されて書いた小説が元です。


 設定と登場人物を考え、冒頭だけ書いた作品なのですが、リファインして書いていこうと思います。


 ここまで読んでくれてありがとうございます!


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