文具召喚
こんにちは。各話の誤字や表現を直している時に自分の表現力の無さに改めて気付くうp主です。今回は初転移後の士道が初の召喚スキルを使います。
俺はしばらく戦車を真っ直ぐ走らせると、真っ暗な道の先に小さな光が見える事を確認する。
「あれが出口か?」
俺は一人、誰も乗っていない戦車のなかで呟く。そのまま前進を続けてゆくと、その光が徐々に大きくなり、最後には自分の戦車を霧が丸ごと包み込む様な形になり、今度は今までとは対照的に真っ暗な景色が一変、スクリーン全体が真っ白に染まる。
そして直ぐに、ガクン!ガタガタっ!と戦車のキャタピラが何かの段差を拾い、車内が揺れる。きっと不整地に入ったのだろう。すると、霧が晴れ、視界が確保され、外の様子がハッキリと解るようになってくる。
どうやら俺は門の先に抜けたようだ。不整地の段差を戦車拾い、トンネルを抜けた事が体感出来る。
スクリーンに映る景色は、まるで樹海の様な森だった。俺は門を出て、直ぐに戦車のブレーキを掛け、その場に停止した。すると、頭の中に何かが入って来る様な頭痛が俺を襲う。そして、何処からともなく、聞き覚えのある声が聴こえてきた。
「士道様、今私が貴方の脳内に話し掛けれると言う事は、無事に転移が終了したと言う事ですね。」
その声の主はアリアスであった。彼女と別れてそんなに時間が経ってないのに、彼女の声がとてつもなく懐かしい。
「?そうなのか?確かにトンネルを抜けて直ぐに樹海みたいな森に出てきたのだが、これが異世界の入り口なのか?」
「はい。その森は迷宮の森とも呼ばれる、そちらの世界で言う所の富士の樹海の様な場所ですです。」
おいおい、転生早々遭難フラグが建ったぞ...
「不安になる気持ちは分かります。ですが、その門を背中にひたすら真っ直ぐ進むと、今度は樹海とは逆に、ラティーナ平原と言うこの世界の草原へ出られます。そうすると、その先にそこそこ大きな街が見てる筈です。そこが「ウィスカ」と呼ばれる街があります。まずはそこを目指して下さい。」
「わかった。しかし、随分とこの世界の地理に詳しいな。」
「はい。貴方を転移させた後にあちらの世界の女神との連絡が取れました。そこで彼女は先の助言を伝えるようにと、私に頼んだのです。」
成る程な。それでこの近辺の地理を知っているのか。そんな中、俺はある疑問が浮かび上がる。それは町に入った後やその道中で会うであろう、現地民との会話を始めとする言語である。
「成る程。あと、現地の人間と意思疎通出来るか不安なのだが、何か現地語を話せるような手段はないか?」
「言語については、貴方がこの世界に向かう際に通ったトンネルを潜り抜けることにより、現地の言葉が日本語に変換され、聞こえ、話せるように加護が掛かるため、今までのように話して頂ければ結構です。」
うーむ、何とも便利なご都合主義なのだろうか。しかし、これで現地民との対話と言う不安が除けた。あとはこの世界で俺の持ち込んだ能力が通用するのか、ただそれだけだ。
「わかった。ならアリアスの教えてくれた、ウィスカとやらに向かってみるよ。」
「はい。後は貴方のスキルである、召喚能力について説明させて頂きます。左手の指を鳴らして頂けますか?恐らく立体映像の様な画面が現れる筈です。」
そうアリアスが指示の指示通り指を鳴らす。すると、目の前に立体映像のような画面が現れる。
「その画面がこの世界であなたが召喚可能な物のリストになります。ただし、数が余りにも膨大な為、フリーワードでの検索や、武器や日用品などのタブによって分類もされており、そのリストの中から選択して頂ければ、召喚が完了します。ただし、人などの生物の召喚は不可能です。試しに何か欲しいものを選んで頂けますか?」
「わかった。」
そう言われて俺は適当に何か欲しい物を連想させる。そして、この世界の地域の事情や文化をメモしたいと思い、試しに手帳とシャープペンと消ゴムを召喚してみる事にする。
そして、左手の上に現れたタブレットの様な画面をタッチする。この場合、タブから探す時は日用品をタッチするのか?そうすると、日用品➡「家具」「工具」「掃除道具」「調理器具」「アメニティ用品」「文房具」「小物入れ」など、更に細かくソートされたタブが出てくる。おいおい、細かいな...
この場合、シャーペンな消ゴムは文房具の部類になるので、「文房具」のタブを押す。すると、「鉛筆」「消ゴム」「ノート」「クリアファイル」などの、種類別に部類された文房具の一覧表が現れ、俺は取り合えず消ゴムを選択する。すると、俺はその先の光景に息を飲んだ。
「おいおい、なんじゃこれは...」
そこには召喚可能な消ゴムの種類が表示されているのだが、MOMOとか認可良品とかイチョウクレパスの消ゴムとか、数が多すぎて頭がおかしくなりそうだ。
「消ゴム一つでこんなに種類があるのかよ。」
よく考えたらアリアスは俺が死ぬまでに人類が作った物を召喚出来ると言ったが、人類が今まで作った物が全部出せるとなると、その数は天文学的な数値となる。だが、消ゴムだけでここまで召喚出来るとなると、あながち先の仮説が嘘だと言い切れない。
俺は生前から使いなれたMOMO消ゴムを選び、次はシャーペンと手帳を選ぶが、シャーペン、手帳、お前らもか...案の定目が眩むような種類である。四苦八苦しながら召喚する一連の文房具を決めて「召喚候補物資」と書かれた文字をタップする。すると、先程纏めた文房具リストが現れ、その下に「召喚」と書かれたボタンがある。
そのボタンを押すと目の前の空間が歪み、まるで空間転移するような形で、先程選んだ文房具が粒子を結合させるような感じで形成される。
「おお。」
目の前の光景が信じられない俺はただただ、そうして呟く。
「上手く召喚できた様ですね。今後からこの様にして地球の物資をこの世界へ召喚する事ができます。ただし、転送に言った通り攻撃能力のある武器はレベル制限があり、最初から全ての物を召喚することは出来ません。なお、レベルはこの世界のモンスターを狩ったり、ギルドのクエストを依頼をこなすことで上げれます。」
「わかった。戦車もあるし、レベル制限があってもしばらくは苦労しないと思う。この戦車の火力がこの世界でどれ程通用するのか不安なのだが、やってみよう。まずはラティーナ平原に抜けて、ウィスカの町を探す。これが最初の目標で問題ないか?」
「はい。」
俺とアリアスが当面の目標を確認するやりとりを行っていると、俺が異世界転移する際に通った門の入り口の石で出来た扉がズズズと、地面と閉まり出した。
「お、おい!門が閉まり出したぞ!」
「!この世界と貴方のいた世界との道が閉ざされています!扉が閉まってしまうと、もう私の声は届きません。どうか、どうかご無事で、この世界の人々の力になってあげてく----」
「!?、アリアス!?」
状況把握が出来てない俺を嘲笑うかのように、扉が閉じた途端、アリアスの声が途絶えた。まだ俺が異世界に転生した事に実感が湧かない。そんな中、この事実を実感出来ると安心出来る女神、アリアスが居なくなった。これも神のいたずらか?
辺りを見渡すと日が沈み、周囲が暗くなってきた事が分かった。この世界には魔物が居るとの事なので、何も知らない世界での夜間の移動は危険すぎる。そう俺の本能が囁いた。今日は此所で夜を明かそうと判断し、極力安全な戦車の中で睡眠を取る事にする。
召喚能力でテントや寝具を召喚し、その中で寝ようとも思ったが、何時何処から魔物に襲われるか分からない。なのでキツい体勢になろうとも戦車の中で夜を明かそうと思ったのだ。
俺は改造Sタンクに乗り込み、車内のスクリーンが張り巡らされたカプセルの様なコックピットにハッチから滑り込む。そして低い背もたれの付いた椅子に座り、そして腕を組み、猫背のように体重を前に掛け、眠りにつく。その日も元居た世界の平穏が奪われた日の様にアッサリと眠れた。
次の日はいよいよ、アリアスが連絡を取ったと言うこの世界の女神様からの助言を信じ、「ラティーナ平原」とやらを目指す。初の移動日となるのだ。
この前の話でようやく序章が終わり、全然話が揃ってないのにアクセス分析で毎日の平均台アクセス数が300越えてたり、ブックマークが既に4件あったりと、3桁台の数字を見てリアルで現実を受けいれられない主人公、士道状態になってます。((( ;゜Д゜)))
こんな素人小説をここまで読んで下さる読者の方々に感謝感激です。こらからもこのノリと勢いで書いた「おれぶつ」を生暖かく見守って下さいませ。