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真実

お待たせしました。


本当はこの話で前の後書きで告知してた初期装備(戦車)などの描写をするつもりだったのですが、そこに至るまでの前座が長くなりすぎたため、次の話に持ち越します。勝手に路線変更して申し訳ありませんm(--)m

「えっ?」



俺はもう一度アリアスと名乗る女性が自己紹介で言ったことを頭の中で復唱する。すると、最初に聞いたアリアスという名前を聞いた段階では、日本に居た頃には聞いたことのない名前で珍しいと思い、日本語が堪能な外国人だと思っていたのだが、問題はその後である。確か彼女は「この世界の死者の霊魂を管理している女神」と言った。



ということは何だ?俺は千里浜の防衛戦で死んだって事か?なんて最悪のケースを冷静に分析出来る自分が憎い。普通なら彼女の担当直入の自己紹介を本気で信じたり、霊魂の管理をしていると言われ自分が死んでしまったなんて連想は出来ないだろう。これも実戦に出た事が原因なのか?だとしたら何とも皮肉なことであろうか。



そんな中、俺は半分笑いながら、これが何か悪い冗談であるという一途の希望を信じ、アリアスと言う女性に聞いた。



「あはは、野戦病院のスタッフの方は冗談うまいですね。俺はこの通り手足の感覚はしっかりあるし、意識もハッキリしてますよ」



そんなぎこちない笑い声と作り笑顔を混ぜながら彼女と話す。今思えば野戦病院にあんな豪華なベットはないし、扉が二つある以外に何もない真っ白な空間ではないはずだ、と思いつつ自分が嘘をつくのが下手であると思った。しかし、アリアスは顔を下に向け、しばらくの沈黙の後涙を瞳に浮かべながらこう俺に告げた。



「大変残念ですが、貴方と貴方の戦車の搭乗員の方々は、先の「千里浜防衛戦」にて敵の戦車の攻撃を受け殉職なさいました。現在貴方の身体はと同じ戦車の搭乗員であった方々と共に霊安室に安置されております……」



「嘘だろ……」



俺が戦車の足回りの負担を考えずに操縦し、無茶な操縦をしていたせいで結果、駿達を殺したってことか?そんな自己険悪がひたすら頭をよぎる。しかし、そんな最悪のシナリオを断固否定したい俺は再び彼女に聞く。



「まさか、そんなこと……。だったら証拠はあるのですか!?これが冗談なら今すぐやめて頂けますか?今の状勢でそんな冗談は不謹慎にもほどがある!」



ついつい感情的になってしまった。アリアスはビクついて頭を下げた。しかし、そんな俺の問いに彼女は更に顔を曇らせつつ、どこからともなく画面を俺の前に出した。大体40インチ程のテレビと言った大きさだろうか?そんな画面を空中に出し、俺の前に出しこう言った。



「証拠ならあります。もし貴方が同意して頂けると言うのであれば、お見せすることも出来ます……」



「っ!」



俺は見るか一瞬だけ悩んだ。だが、すぐに見ることを決意した。そして、知らないほうが幸せな事もあるという言葉の意味を改めて学んだ。



その映像は履帯が外れて行動不能となった10式戦車の姿があった。間違いない、俺たちが乗ってた戦車だ。駿が無線で援護を要請し、味方の戦車がこっちに向かっている場面だ。そして次の瞬間、飛来し着弾した敵の砲弾が俺の座っている操縦席のある正面装甲を貫通したのだ。



戦車の徹甲弾は装甲を突き破ると車内に到達する頃には粉々に砕け、砕け散った破片が車内を跳弾し、内部の乗員を殺傷したり、機器を破損させる。そんな徹甲弾の破片が生身の人間に刺さるとどうなるか?簡単に想像出来るため、これ以上考えたく無かった。



そして程なくして、主砲を発砲した直後、駿たちの乗ってる砲塔の側面にも砲弾が着弾した。着弾した箇所が弾薬室だったため、後部に設けられたブロアーパネルが派手に吹き飛んだ。



10式に限らず、20世紀末頃に実用化された西側の戦車は弾薬室の誘爆で砲塔内部の乗員が負傷しないために装填時以外は隔離壁が設けられており、先のブロアーパネルが吹き飛び爆風を上に逃がし乗員の被害を最小限に抑える機能が備わっている。



しかし、駿達の10式戦車が被弾したタイミングは丁度隔離壁が開き、装填装置が次弾を閉鎖機に押し込んでいるタイミングだった。誘爆した爆風は車内を容赦なく襲い、搭乗用のハッチから火柱が上がり、瞬く間に戦車を炎に包みこみ、同軸機銃などの機銃弾がポン菓子が出来るときに鳴るような、パンパンパン!と音をたてて燃え尽きる。脱出する時間などなかった。



そして激戦の後、何とか敵を食い止める事の出来た自衛隊の隊員達が消火が完了し、逃げることの出来なかった黒焦げになった駿たちの遺体をハッチから慎重に出し、操縦席からは、原型を留めていない程欠損した俺の体の本体が引きあげられ、その後に俺の千切れた2本の腕が取り出された。その手を見る限り、死して尚、操縦桿を握っており俺の手を持ってくれている隊員の人が泣きながら「ココを守ってくれてありがとう、そしてごめんな...」と言いながら歩いて行った。



「……これが、あの日起こった真実です」



アリアスは重い口を開いて俺にそう告げた。








「うあああああああああ!!!!」



「嘘だ! こんなの嘘に決まってる!」



俺は声を大にして泣いた。この信じられない現実を受け入れざる得ない状況で。



読んでくださりありがとうございます。この小説におけるミリタリー描写はうp主の完全な脳内知識になっております。なので、この武器、兵器でこんな描写されるのはオカシイというのが有りましたら、遠慮なく言ってくださいませ。

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