貫通
こんにちは。
本来なら4話纏めて投稿したかったのですが、この章を執筆している時に布団という深海に沈みました(´・д・`)
次はいよいよ士道が異世界に向かいます。
「士道!全速前進!敵に読まれないような動きで走り回れ!」
「あいよ!」
駿の指示の元、俺は戦車のスロットルを全開まで開け、加速した。主力戦車の加速は予想以上に素早く、あっという間に最高速度に到達し、敵戦車部隊の砲撃によって出来た砂浜の段差や窪地を突き進み飛び魚の様に跳ねながら進む。
俺はただ真っ直ぐ走るだけではなく、スラロームや急停車を繰り返し、敵戦車の偏在射撃の精度を下げさせようと戦車を走らせる。その中、砲手は次々に敵戦車に向かいサボット弾という鋼の矢を突き刺し、確実に敵戦車の装甲を射抜いてゆく。
「っ!士道!!停まれ!!!」
敵の攻撃を察知した駿はすかさず俺に指示を送る。俺も素早く指示に従い10式戦車のブレーキを限界まで使う。すると、砂浜の上にいる戦車のキャタピラが車のタイヤの様にロックし、
ギギギギィ!ズザザザザ!と金属音と砂をえぐる音をたてながら千里浜の砂浜をえぐって止まる。この急ブレーキの衝撃は今でもあまり慣れない……。
次の瞬間、目の前を敵の弾が通り過ぎ、後ろにある防波堤のコンクリートブロックを粉砕した。駿に命を救われた事を実感し、俺は再び戦車を走り出させる。すると、中隊の5号車から悪い知らせの無線が入る。
「クソっ!機関部に被弾!行動不能!」
「っ!」
すかさず中隊長の乗った27式戦車のCITVが5号車に向けられ、被害状況を確認する。被弾した5号車は既に機関部から出火しており、このままだと、砲塔内部に火が回るのは時間の問題だ。中隊長はすぐさま5号車のクルーに脱出するように命令する。だが、ここで問題なのは、既に幾つかの敵戦車が既に上陸しており、味方のカバーが無ければ、上陸した敵部隊の攻撃を食らう可能性が非常に高い。
駿は直ぐに
「俺がカバーする!それまで持ちこたえろ!」
咄嗟に短く5号車に無線を飛ばし、「了解!」と返答が帰ってくる。すると俺達の戦車が被弾した5号車を庇う様な感じでスラローム射撃を繰り出し敵戦車を牽制する。5号車もまだ生きている砲塔で支援するが、そろそろクルーを脱出させないとマズイ。
そして敵の数をある程度減らしたタイミングで5号車の車長がクルーへの脱出を命じる。「私以下3名無事に脱出することが出来た。貴君の援護感謝する!」と礼の無線をいれる。それを聞いた駿は俺に後退の指示を出す。俺は停止したのち直ぐにギアをバックに入れ、後退する。
10式戦車は後退でも前進と同じ速度が出せるため、キャタピラから派手に砂浜の砂を前に吐き出しながら後退する。そしてクルーが脱出し、炎上している5号車を盾にしながらスラローム射撃を行う為に再びスラローム走行を行う。
しかし
ガキン!ギギギギィィィ!と何か外れて金属同士が削れる様ないやな音がする。その直後戦車は急停車し、俺が幾らアクセルを踏んでも進まない。駿が
「士道!何があった!?」
俺はこの音の正体と今自分の乗っている戦車の状況が解った。最初に足元に着弾した砲弾の衝撃や激しい動作が原因で履帯が外れたのだ。
「履帯が外れた!移動できねぇ!」
「っ!こちら7号車!履帯破損により行動不能!繰り返す!行動不能!」
駿が他の車両に状況を知らせ、援護を要請する。それを受託した 味方の戦車がすぐさま此方に向かって走り出す。
だが
遠くから敵戦車から主砲が放たれた。狙いは勿論動かなくなった俺達の乗る戦車だ。初速が毎秒約2km/hで飛んで来る鋼の矢は一瞬にして俺達の乗る戦車に到達する。
「っ!士道ぉぉぉぉぉぉぉ!」
駿の叫び声が聞こえたが、それ以降の記憶がない。後はゆっくりと暗い空間に吸い込まれてゆく感覚が体に伝わる。そして視界に入っている戦車のモニターやハンドル、覗き窓が徐々に消えていった。
これが「死」というものなのか? 駿、すまねぇ、俺のせいでお前に一番背負わせたくない物背負わせてしまったな...
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どれ程の時間が経っただろうか?俺は寝て朝に目を覚ますような感覚で目が覚めた。意識がハッキリとして天井を見上げると、今まで見たことのないような豪華な装飾が施された屋根の付いているベッドの上に寝ていた。
横幅や長さを確める為に頭を左右に動かしたり、足を伸ばしたりしたが、それらの行為を取った後、このベッドがまるで漫画やアニメに出てくるような大金持ちのお嬢様の家のベッドや王様のベッドを彷彿させるような大きさだった。自分が今どんな状況に置かれているのか、頭の中で理解出来ない。
取り合えずここが何処なのかを知りたい俺は布団を剥ぎ、体を起こす。すると、
「おや?お目が覚めましたか?」
俺が起き上がると、目の前の神秘的な装飾の施された椅子に、俺に声を掛けてきた主の姿があった。彼女は背中までキッチリと揃えられた純白の髪の毛と主張し過ぎず、しなさ過ぎずのバランスの良い体型、ほんの少しつり目の入った紺色の瞳をしており、誰にも分け隔てなく接するような穏やかな顔をしていた。
まるで芸術品のような美しさだった。そしてそんな彼女の姿に絶句し、見とれている俺を見て、少しの間を取った後、自己紹介を始めた。
「はじめまして。私はこの世界で死者の霊魂を管理する女神、アリアスと申します」
読んで下さりありがとうございました。
本当は3話位で済ませたかったのですが、長引いて五話くらいまで引っ張ってもうたorz
プロローグだけでサクッと飛ばした方がよかったのか...?
次は士道が異世界に持っていく初期装備を決めたり、転生する異世界についての説明を受けたりします。
意見や誤字などの指摘があれば、どんどんお願いします。